始まった戦い
「なんということだ!あれほど無駄な戦いはすべきではないと!王も納得したではないか!」
お父様がカスティーラ帝国から帰って来た次の日
アルタリスク公爵家には前に見た光景と同じものが繰り広げられていた。
「お母様…、何があったんです?」
「フィオナ…。王がカスティーラ帝国に攻め入ったとのことよ。お父様はこの戦争を始めさせないように数ヶ月もの間身を粉にして駆け回っていたらしいの。」
くらりと目眩がしそうになり、グッと堪える。
やっぱり始まってしまった。
でも、時期が早すぎるのは何故?
前と比べて数ヶ月も早く始まってしまった。
まだ何も対策できていないのに。
「カリナ、王に会ってくる。後は頼めるか。」
お父様が行ってしまう…っ!
「お父様っ!」
「フィオナ、心配するな。危険だから外には出ないようにな。」
行かないで、とは言えなかった。
目を潤ませる私に少し驚いた様子のお父様は小さな子どもにするように頭を優しく撫でると、「大丈夫だよ。」と言って屋敷を出てしまった。
「フィオナ、大丈夫よ。カスティーラ帝国は民の命を奪うような方たちではないはずよ。」
「…っ、」
言うべきなのだろうか。私たち、アルタリスクの命を奪うのは敵のカスティーラ帝国ではなく、味方のマムラ王国であると。
その時ふとあの男性の言葉を思い出した。
『敵だけど、敵じゃない。』
それって、…どういうことなの?
お父様が王宮へ向かい屋敷が騒然とする中、私たちに残されている時間はわずかしかない。
私とお母様が連れて行かれる前に何か、何かしないと。
頭を抱えて記憶を辿っていると、地下牢の中でお父様からアルタリスク公爵家当主に受け継がれるものを聞いたことを思い出した。
走って部屋から出るとお父様の執務室へと飛び込む。
そして本棚にある小さな黒い本を探し出し、中を開ければ古い鍵が出てきた。
それを手に執務室の床をじっくり見てみれば、ソファの下あたりに違和感のある床を見つけた。
ソファをずらしてみれば、小さな鍵穴があり、恐る恐る差し込めばカチリと回った。
ゆっくり床を持ち上げるとそこには地下へと続く階段が出てきた。
「お父様、私、アルタリスクを守りたい。…入っても良いかな、」
回帰してから今日までお父様からこのことを言われたことはないため、勝手に暴いてしまっているのだ。
お父様に後ろめたい気持ちとアルタリスクを守りたい気持ちがせめぎ合い、グッと気合いを入れる。
「お父様、後で謝ります。そして、アルタリスクは私が継ぎます!」
だから、もういなくならないで!!




