嵌められた公爵家
一瞬静まり返った空間
公爵夫人のまっすぐな言葉は誰もが、共感した。
大国に取り柄もない小国が勝てる訳がない。
あるとすれば根強い女神神話と女神に愛されし御子には力が宿るという伝説のみ。
騎士たちが目を軽く伏せ始めた時、お母様と対峙している騎士が冷たく言い放った。
『アルタリスク公爵夫人及び令嬢を拘束し馬車へ。使用人たちは屋敷内で監禁するように。』
そして私とお母様は手足を拘束されると馬車に放り込まれ、目と口に布を巻かれ何もできないまま王宮の地下牢へ収監された。
固い床に転がされ、乱雑に目と口の布を取られ、全身の痛みを感じながら目を開けると、お母様の悲痛な叫びが聞こえた。
そこには顔が腫れ血を流して床に寝ているお父様がいた。
『お父様っ!』
『あぁっ…、何でっ、何で!?ルークは国のために必死で働いていたのに!!』
お父様に覆い被さり涙を流すお母様
私も大粒の涙を流しながら2人の側へと向かう。
『カ、カリナ…、フィ、オナ…まで。……す、すまない。』
『もうこんな国知りませんっ!私はルークと一緒ならどこまでも行きます!もう私を置いていかないでっ。』
『…私も。お父様、お母様と一緒が良いです。』
私がそう言えば、2人はハッとしたように振り返って、力強い目を向けられた。
それまで泣いてお父様に縋っていたお母様はいつもの笑顔を向けてくれ、お父様も痛めた体を無理に起こしながら側に来てくれた。
『フィオナ、私もルークもあなたが大好きよ。知ってる?ルークってば私がフィオナを妊娠したって分かった時、泣きすぎて熱を出したの。』
『フィオナには好きな人と結婚して幸せな家庭を持って欲しい。貴族じゃなくても良いのよ?フィオナを1番に想ってくれる優しい人なら大歓迎だわ。』
『…私、結婚しない。私が公爵家を継ぐから、お父様とお母様、3人でずっと一緒にいたい…。』
こんな状況になって、そんな未来はないのだと頭の片隅では分かっている。でも3人でこれからも暮らしたい。
ただそれだけが望みだった。
泣きじゃくる私にお父様は、
『フィオナ…、俺、の可愛いっフィオナっ。フィオナがっ、知らん男の隣に、立ってる姿などっ!想像したくもない!…でもっ、真っ白なドレスを着た、フィオナは、綺麗なんだろうな…。』
『……フィオナ、お前は生きろ。生きて、心から信頼できる男が、見つかったのなら、…結婚は許す。』
涙で前がぼやけたまま首を大きく横に振る。
そんな男性きっと見つからない。
お父様のような素敵な人どこ探してもいない。
お母様のことが大好きで、お母様もお父様のことが大好きなんだと見てて伝わる。
2人のような結婚をしたいといつしか憧れていた。
『公爵家を、継いでくれるんだろう?』
『はい。…でも、そこにはお父様とお母様にもいて欲しいんですっ。』
『聞いてくれフィオナ。今から言うことは、アルタリスク公爵家当主に受け継がれることだ。』
地下牢に収監されてどのくらい経ったのかは窓もないここでは分からず、3人で身を寄せていると、近衛兵たちが突然やって来て、私たちを乱暴に連れ出した。
立派な扉の前まで長い間引きずられ、近衛兵が仰々しく扉を開けると奥には王座に座る王が見えた。
衛兵たちに押されながら前に進むと王の両隣にいる王妃、王女からクスクスと笑い声が聞こえた。
『無様なものねぇ。あのアルタリスク公爵家がボロボロじゃない。』
『王家に逆らったんですもの!当然ですわ!』
耳障りな高笑いを響かせ、上から私たちを見下ろしては満足そうに笑う。
我が公爵家は過去に何度も王家と婚姻関係を結んできた由緒ある貴族
だが、そんな公爵家が気に食わない伯爵家出身の王妃と先代の王に気に入られて、何かと比べられてきたアルタリスク公爵が目障りな王
そして、王女である自分よりもアルタリスク公爵令嬢が貴族令息たちにちやほやされているのが気に食わない王女
その3人の身勝手な嫉妬により、公爵家は王族がでっち上げた罪に問われた。
『我らはまだ負けていないにも関わらず、あいつら勝利宣言をしよって。…まあ、辺境にある荒れ果てた土地と人質の要求など軽いものだ。次はもっと武器を増やさねば。』
『お遊びで攻め入ったとカスティーラも分かっているのでは?』
『あんな辺境地くれてやるわ。それに感謝することね。そこの女!私の侍女として一生働いてもらうから!』
『お待ちください!戦争はもう終わったのですか!?こちらの負傷者数は!?それに、フィオナが王女の侍女とは?』
声を上げたお父様はすぐに衛兵に押さえられ、口に布を巻かれてしまった。
お母様は黙ったまま前を睨みつけ、私を守るように少し前に出ている。
『安心してください。王女であるこの私のお世話が出来るんですもの。貴族令嬢として誇り高いことよ!それに超最高な夫婦を間近で見られるんですもの!』




