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自ら死を選んだ公爵令嬢と高潔な騎士のやり直し両片思い  作者: 葵和心


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新しい日々




結局、グレジア様に聞きたいことを聞けなかった上に、元王女との関係を知ったことで毎日胸が苦しい。

その苦しさを誤魔化すように、お父様たちの仕事を手伝っていた。


あの後、屋敷に戻り、皆でひと息ついた後にお父様から元王族たちの悪行の数々を聞かされた。

マムラ王国の身寄りのない子どもたちを他国に売る、人身売買をやっていたという。

それと、貴族を中心に若い女性たちを心身ともに傷つけるような行為も報告されているらしい。


そんな話、今まで聞いたことがなく信じられなかったのだけど、元王家と親交が強かった貴族の地下室には女性が数十人囚われていた。


アルタリスク以外の貴族は全て殿下によって地位を剥奪され、ほぼ全ての貴族に犯罪の片鱗があったらしく、財産も没収となったとのこと。


マムラ王国の貴族として生きていながら、国内の情勢や裏の部分について何も知らない自分が情けなかった。




マムラ王国は怒涛の日々を過ごしていた。


カスティーラ帝国の領土となったことについて、王国民改め、領民たちはほとんどが安堵の声をあげていた。


元々王族への不信感は年々増していたため、大国の領土となる方が良いと、母国が無くなったはずなのに喜ぶ者たちが多かった。


一方で貴族たちからの反対の声はすごいものだ。

アルタリスク公爵家改め、アルタリスク伯爵家に連日抗議の手紙が寄せられていた。


カスティーラと手を組んで王国を潰した。といった内容だったが、ほぼ全てと言っていいほど、元王族たちとともに悪事を働いていた貴族ばかりだった。

そのため、カスティーラ帝国から提供された証拠の数々により次々と資産を取り上げられ、順次帝都へと送られているという。


王太子殿下の部下の方がお父様を支えてくれているため、私はタリス領と名付けられたこの領地をあちこちお母様と見回っていた。



そして、夜にはお父様に許可を貰い、あの部屋で過ごしている。


小さな机、本棚には古い本がたくさん並んでいる。

前に入った時にはゆっくり本を読む時間がなかったため、机に置いてあった本を開くと、マムラ王国の王族は王家の血筋ではないとはっきり書かれていたのだ。


本棚の真ん中、ガラスの箱に入れられている分厚い本

丁寧に持ち上げ、そっと机に置き、ゆっくりとめくると少年の苦しい胸の内から始まる日記だった。


アルタリスク公爵家の始祖であり、マムラ王国の王族、フーリ殿下の貴重な日記


彼は屋敷を与えられたその日から日記を書き始めたようだった。



『お父様、お母様が殺された…。僕は弱いから、いつでも殺せるんだと笑いながら言われた。』


『公務は全て僕がすることになった。大変だけど、これで良いのかもしれない。あの人たちに任せていたら、この国は無くなってしまう。』


『…僕は何の為に働いているんだ?……お父様もお母様もいないのに…。』


『素敵な女性に出会えた。彼女のために働こう。』


『ああ、僕は初めてこの状況に感謝した。

…お父様、お母様。僕を守ってくださりありがとうございます。そのおかげで僕は最愛の女性と出会い、そして家族になることができました。これからは家族とアルタリスク領を第一に、そして僕の子どもたちが生きていくマムラ王国が平和であり続けるよう、公務と向き合います。

"奴らの私腹を肥やすためではない"

これだけははっきりと断言する。』



日記はこの言葉で終わる。

力強いメッセージはきっと、未来のアルタリスク公爵家当主へ向けたものだろう。

あくまでアルタリスクを危険に晒さず、確実に未来へ繋ぐために、本来王族がするべき公務を肩代わりするのであって、王族と手を組み奴らの私腹を肥やすのではない。と強い警告に感じる。


その言葉通り、アルタリスクはアルタリスク領を第一に考えている。

ただ当主だけは公務も並行していたため大変だっただろうと、国内外を忙しそうに行き来していたお父様を思い出す。


「…私にできるのかな。」


ぽつりと溢れた本音


軽々しく『私がアルタリスクを継ぐ!』とお父様に言ったつもりは全然なかったが、フーリ殿下の日記を読んで、改めてアルタリスク公爵家の重みを知ってしまい、不安になっていた。


…でも、私しか跡継ぎがいないのは事実

私が継がなければ、アルタリスクはどうなってしまうのか。


ぎゅっと目を閉じ、頭の中に出てきた映像を追い払う。


あんなことはもう起きない。

お父様とお母様は生きている。

私もここにいる。辺境地には行っていない。


大丈夫、大丈夫、と心を落ち着ける。



「私がアルタリスクを継ぐ。そして、未来にアルタリスクを繋ぐ。」



そのためには、誰かと結婚しなければならない。



「…グレジア様、」



小さな部屋だけが、フィオナの恋心を聞いていた。



最愛の女性と結ばれ、強さを手にしたフーリ殿下


「…これから先、私にも最愛の人は現れるのでしょうか。現れるとおっしゃるのなら、私はいくらでも頑張れるのですが。」






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