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自ら死を選んだ公爵令嬢と高潔な騎士のやり直し両片思い  作者: 葵和心


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抜け殻




マムラ王国がカスティーラ帝国タリス領となること数ヶ月


カスティーラ帝国の文官からは頻繁に必要事項のやり取りをしている。

アルタリスク伯爵からは現状の報告と改めての感謝が綴られた手紙が送られてくる。


旧王宮内や旧貴族たちの屋敷から徴収した金品を売ることでタリス領内の土地整備や施設整備を行い、領民たちの不安解消に取り組んでいるという。


「さすが王族だな。血には抗えないものよ。」


「大変そうにされておられるようですが、以前より顔色はむしろ良いそうですよ。」


「ははっ、すごいな。だが伯爵にはこれからも長いから程々に頑張っていただきたいが。」


「アルタリスク伯爵様には御嬢様がおられるのですよね?その御嬢様が跡を継ぐのでは?」


「ん?アルタリスクを継ぐのか?御令嬢が?」


「文官との世間話でそう言っていたと聞いた気がしますが。」


俺の側近は優秀だから間違いはない。

ということは、本当に御令嬢がアルタリスク伯爵家を継ぐことになっているということか。


「…ウィルはどうするつもりなんだ?」


「グレジア様が何か関係が?」


「ああ、いや、何でもないよ。」


さすがに親友でさえ自覚していない恋愛話を側近にするのは気が引け、はぐらかす。


ウィルは帝に今回の報告を手短に終えると自分のすべきことは終わった。とばかりに、さっさと第3騎士団のある遠方に引っ込んだ。


それ以来全く姿を見ていない。

元々、第3騎士団は戦いに特化した騎士団の為、王都にやってくることはほぼないのだ。

それでも団長であるウィルはふらっと姿を見せることがあったのだが…。


「まあ、今は休息時間と捉えるか。」






「うぉーー!」

「おりゃー!」


訓練と称した好き放題の団員たち

走ってる団員もいれば、模擬戦をしてる団員もいる。


ある程度厳しく訓練をしつつ、こういった自由な時間も血の気の多い第3騎士団には必要で。


賑やかな声が響く中、団長であるグレジア・ウィルフレッドは花に囲まれていた。



男ばかりの騎士団にはもちろん女性はいない。

寮の生活における炊事洗濯も全て自分たちで行う。


ここ第3騎士団はカスティーラ帝国の王都からずいぶん離れた辺鄙な土地にある。

そのため食料なども王都から運ぶと時間がかかるため、この土地にある小さな町で全てを調達している。


すると、小さな町だったのがいつの間にかこの辺りでは1番の街へと発展し、騎士団員との繋がりを目的とした若い女性たちが多く住み着くようになった。


そんな盛り上がりの最中に新しく団長となったグレジア・ウィルフレッドを見た女性たちは一段と色めき立っていた。


が、グレジア・ウィルフレッド団長は常に無表情で女性との噂は全くなかった。

王都の貴族たちの間では若く美しい騎士団長の誕生に令嬢たちが熱い視線を送っていたが、とにかく冷徹で、どんな麗しい令嬢でも眉を顰めるばかり。

外見は目を惹くものの、親しく話しかける令嬢はほとんどいなかった。


高位貴族の令嬢の中には、親しげに話しかけ触れようとする令嬢もいるが、固く断られて終わっていた。



そんな堅物の団長が花に囲まれながら、ぼんやりとしている。

側を通る団員たちがひそひそと団長を眺めながら不思議そうに話している。


「団長最近あそこにいるよな。」


「違和感しかない組み合わせだ。」


「この前あそこの花を取って部屋に持ち帰ってたって言ってた奴がいたぞ。」


「特別な花なんかないよな?」


よく見る花がぽつぽつ咲いているだけ。

騎士団という施設に花はそれほど重要ではない。





小さな白い花をいくつかそっと手に取り、彼女の姿を思い浮かべる。


今は何をしているのだろう。

家族とは仲良くしているか。

領地内の管理は順調にいっているのか。


彼女とアルタリスクが迎える最悪の事態を避けるためだけに彼女にとって何が最善かと考え、動いていた。


その最悪の事態を避け終えた今、俺は抜け殻のような日々を送っている。

ただ団長という立場のため、何もせずにいると書類仕事が山のように溜まっていく。

回帰前は書類仕事を終えると自主的に訓練をしていたが、それをする意味が今はなかった。


幸いにも数日ここにいなかったせいで書類が机いっぱいに溜まっていたため、団長室にこもりきりの生活だった。


こもっているのを忙しいと勘違いしたのか、副団長のモリーシャが外に出て気分転換して来いと背中を押された。

そして外に出てぼんやりと歩いていたところにこの庭園とは言いがたい場所に着いたのだ。


大きな木の根元に駆け寄るがそこには何もない。


当たり前だ。彼女は生きているから。


回帰前、命を落とした彼女の遺体はアルタリスク公爵夫妻と一緒のところに運んでやりたかったが、あの女の後始末に時間がかかりそうだったため、やむなくここで休んでもらうことになったのだ。


ほとんど関わっていなかったため知らなかったが、あの女は彼女に雑用ばかりさせていたという。

それも女の雑用だけでなく、彼女がする必要のないこの騎士団内の草抜きや掃除、挙げ句の果てには団員たちが住んでいる寮内の掃除まで


それを知った時には何故知らせなかったのかとモリーシャ始め団員たちに問い詰めると『団長が奥様関連の事は一切話すなと通告したからですよ。』と言われてしまい、何もいえなかった。




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