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シュリの秘密


ユウは寝台の上で目を開けた。


防音が施されたこの部屋は、窓がない。


けれど、朝がきたことは何となくわかった。


朝方まで、隣にいたシュリは、もういない。


ユウは、愛おしげに彼が寝ていたであろう窪んだシーツを撫でる。


不意に昨夜のことが脳裏をよぎる。


彼の腕は、自分をすっぽり包み込むほど大きかった。


抱き寄せられた瞬間、世界中の危険から守られているようだった。


けれど、一番忘れられないのは――


ぎゅっと抱きしめた時に、彼は苦しげにつぶやいた。


『……余裕がなくてすみません』

シュリは苦しそうに目を閉じた。


ユウは首を傾げた。


ーー余裕って何?


そう言いたげな顔をして、シュリの顔を見つめた。


視線を感じたシュリは、ゆっくりと瞼を開いた。


ユウの顔を見た後、シュリは苦しそうに天を仰いだ。


長い睫毛が震え、唇がわずかに開く。


浅い吐息が漏れ、その顔はひどく痛々しかった。


苦しそうに目を閉じる彼を見た瞬間、

心臓が小さく跳ねた。


首筋へ落ちた熱い吐息。


髪を撫でる大きな手。


そして最後に触れた、額への口づけ。


声をかけることさえためらい、ただ下から彼の顔を見つめていた。


思い出すたびに頬が熱くなる。


ユウは一人で赤面しながら、思わず布で顔を隠す。


ーーまた、あの顔を見たい。


その願いが胸をよぎり、ユウはギュッと目を伏せた。


「おはようございます」

ヨシノが寝室の扉を開けた。


ユウは慌てて目を見開き、起き上がる。


「ヨシノ、おはよう」

その声は、いつもより優しくて甘い声だった。


ヨシノは、一瞬、目を見開き、その後、何事もないように、

その日に着るドレスの皺を伸ばした。


「お支度をしましょう」


――次は半月後。

ユウは、小さく息を漏らして頷いた。



「姉上、顔が緩んでる」

朝食の席でレイに指摘される。


ユウは慌てて、表情を取り繕う。


「そんなことないわ」


その時ーーシュリが部屋に入ってきた。


「おはようございます」


ユウが手に持っていたフォークを落としそうになり、

なんとか、それを堪えた。


「シュリ、おはよう」

昨夜の逢瀬はなかったことのように、微笑もうとした。


けれど、オムレツを切るときに、ナイフが音を立ててしまう。


「このナイフ、切れ味が悪いわ」

思わず唇を尖らす。


「まぁ、すみません」

ヨシノは謝罪をするが、レイはじっとナイフを見つめ、その後、自分のナイフを見つめた。


ーーよく手入れされている。




朝食後、シュリは窓の外を眺め、日の高さを何度か確認していた。


「ユウ様、20分ほど出てもよろしいでしょうか」

遠慮がちに口にする。


「別に大丈夫よ」


「……それでは、失礼します」

シュリは頭を下げた。


20分後ーー部屋に戻ってきたシュリは、いつもと違い、

強張った表情をしていた。


「どうしたの?」

ユウが質問をすると、シュリが慌てて目を伏せる。


「……何でもないです」


だが、しばらくすると、再びユウを見つめる。


それに気づき、視線が合う。


シュリは慌てて目を逸らした。


まるで悪戯を見つかった子供のようだった。


ーー何かがおかしい。


ユウは疑問を抱いた。  


だが、その場で問いただすことはできなかった。


それから三日。


朝食のたびに、シュリは二十分ほど部屋を離れた。


戻ってくるたびに、強張った顔をしている。


そして、ユウと目が合うと必ず逸らした。


そんな日が続くと、ユウは疑問よりも苛立ちを覚えるようになった。


ーーあの夜は、あんなにも熱を帯びた眼差しで見つめていたのに。


今は視線が合うだけで目を逸らす。


まるで、自分を避けているようだった。


胸の奥が、ちくりと痛んだ。


――どうして?


何か隠しているの?


胸の奥がざわつく。


その理由を確かめずにはいられなかった。


その日も、シュリは朝食後に部屋を出て行った。


扉が閉まる音を聞いて、ユウは素早く立ち上がる。


「どこへ行かれるのですか?」

ヨシノが声をかける。


振り向いたユウの眼差しは強いものだった。


「シュリの跡を追ってみるの」


彼が何を隠しているのか。


自分の目で確かめたかった。

次回ーー明日の20時20分


シュリを追ったユウが見つけたのは、胸をざわつかせる意外な場面だった。

信じたい気持ちと拭えない不安。

そして、真実を探るイーライもまた、新たな違和感を抱き始める。

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