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秘密が漏れる

「……それで良いのよ」

呟くユウの言葉には、力がこもっていた。


その強い眼差しに、シュリは思わず息を呑む。


「……しかし……」


「正直に伝えて、何になるの?」

ユウの声が強くなる。


その言葉に、シュリは黙る。


「処罰の対象は、私たちだけではないの。

ヨシノも、ウイも、リオウも、レイもだわ」


大事なものが守れなくなる。


「……」


シュリは言葉をなくした。


改めて自分の行ったことの大きさを実感する。


「私は、後悔なんてしていないわ」

ユウの言葉が強くなる。


「……私もです」

シュリは顔を上げる。


「それなら……」

ユウは、そっとシュリの頰に手を添えた。


「これは、私たちだけの秘密よ」


その言葉に、シュリは吸い寄せられるように頷く。


ヨシノが近づく足音が聞こえ、ユウはそっと手を離した。


ーーもし、子ができたのなら。


それは、二日前まで考えもしないことだった。


子が作れぬ男が死ぬまで、報われない子作りをする道を歩んでいた。


けれど、今は違う。


ユウは、そっと腹に手を添えた。


ーーあの男に対する最大の報復だわ。


「……どうか。授かって」

そう小さく呟いた。



翌日のお茶の時間、ユウは再び薬湯を手にした。


カップを口につける前に、目を閉じた。


ーーどうか。私に子を。


祈るような仕草に、イーライは眉を寄せた。


違和感が募る。


「今夜は……キヨ様がお呼びです」

水を差し出しながら、上目遣いでユウを見る。


ユウの顔に、影が差す。


ーーシュリに触られた後なのに。


あの男に触られたくない。


今夜は嫌だ。


せっかく忘れられたのに。


その表情を見て、イーライは少し息を吐いた。


ーー違和感は、気のせいか。


相変わらず、キヨとの交合を嫌がるそぶりは変わらなかった。


ーー考え過ぎか。



その日の夜、ユウは透ける衣を羽織り、ため息をついた。


廊下に待機していたシュリは、現れたユウの姿を見て言葉を失った。


透ける衣を羽織ったユウの体は、いつも以上に艶やかに見えた。


いつもは、

冷たい雪の中に咲く花のように、凍りついたものだった。


今は違う。


春の陽を浴びた花みたいに、微かに色づいて見えた。


その姿が、胸を締めつけるほど綺麗だった。


あの夜、腕の中で見せた顔を思い出す。


苦しそうに息を零しながら、

それでも自分へ触れてくれた。


今のユウには、

その夜の熱が、まだ残っているように見えた。


それが嬉しくて、同時に、恐ろしかった。


あの熱を知ってしまった今、

シュリには、もう以前と同じようには見えない。


あの白い肌も。


震える声も。


自分の名を呼ぶ唇も。


全部、知ってしまった。


「……行ってくるわ」

ユウは、小さく顔を上げた。


その眼差しが、夜の余韻をまだ宿していて、

シュリの胸を締めつけた。


この後、彼女はキヨの元へ向かう。


王の妾として。


他の男に抱かれるために。


その現実に、胸の奥が、焼けるように痛んだ。


けれど、止めることはできない。


止める資格など、自分にはない。


「……帰りをお待ちしております」

ようやく絞り出した声は、自分でも驚くほど掠れていた。


ユウは、ほんの一瞬だけ、泣きそうな顔をした。


けれど、すぐに背を向けた。


遠ざかっていく背中を見つめながら、

シュリは拳を強く握った。


ーーあれほど幸福だったのに。


今はもう、狂いそうなほど苦しかった。



複数の蝋燭が揺らぐ中、イーライの黒い瞳は、熱を含んだまま

ユウを見つめていた。


ユウは震える指で、衣の紐を引っ張る。


その瞬間、儚げな衣は音もなく床に滑り降りた。


露わになった白い肌に、イーライは言葉を失う。


白く滑らかな曲線は、

首筋、肩、指先に至るまで、どこか熱を帯びて見える。


これまでのユウは、

美しくても、どこか張り詰めていた。


けれど、今日は違う。


触れれば崩れそうな、柔らかな艶があった。


「それでは、確認いたします」

震えを抑えるように、イーライは声を低めた。


体に触れるたびに、ユウの体がわずかに揺れる。


「……ユウ様」

呼びかけると、ユウはびくりと肩を震わせた。


その反応さえ、いつものものとは違っていた。


苦痛に耐える女の反応ではない。


何かを隠している女の反応だった。


最後に、油を含ませた指先が、そこへ触れる。


けれど、

そこは滑りを必要としないほど、熱と湿り気を帯びていた。


イーライは、思わず顔を上げた。


けれど、疑惑を言葉にせず、イーライは、

子を授かりやすくするための薬油を指先へ取った。


「……失礼します」

静かな声と共に、指先がそっと触れる。


その瞬間、ユウの肩が小さく震えた。


脳裏に浮かんだのは、あの時のシュリの顔だった。


苦しそうに息を零しながら、

それでも優しく名前を呼んでくれた。


熱を帯びた茶色の瞳。


震える指先。


それを思い出した瞬間、体の奥が勝手に熱を持つ。


「……っ」

思わず、ユウは唇を噛んだ。


違う。


今、ここにいるのはシュリではない。


知られたくない。


悟られたくない。


けれど、体だけが、あの夜を忘れてくれなかった。


イーライは、その反応に目を見張る。


今までのユウは、

確認の度に強張り、乾ききったまま耐えていた。


けれど、今日は触れるたび、体の奥に熱が残っているようだった。


触れた指先へ、微かな甘さが絡みつく。


その変化に、

イーライはわずかに息を止め、静かに指を引き抜いた。


まるで、

閉ざされていた何かが、唐突に開いたみたいだった。


体の変化は、言葉にするには曖昧すぎる。


論も証拠もない。


確認作業は、秘密裏で行なわれている。


潤うようになった――それは薬湯の効能か。


それとも――。


そこまで考えた瞬間、胸の奥がざわりと波立った。



次回ーー明日の20時20分


誰にも知られてはいけない夜だった。

けれど、隠したはずの変化は静かに現れ始める。

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