蒼介篇 決戦〜伍〜
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「本当はゴスロリだったんだなお前」
原宿のかき氷ショップで〝奴隷〟のオレが毒づく。
ここ数日間、奴隷は主であるマリアの東京観光に引きずり回されてる。
「……アンタもてないっぺさソースケ」
大量の買い物袋をテーブルに並べてご満悦の少女に真実を射ぬかれて、動揺するオレ。
あーもてないッスよ! だって奴隷だもん。
「マリアはゴスロリじゃないよ。黒ロリだっぺ。黒ロリはカワイイを主体に黒でまとめたファッションでゴスロリはダーク&ミステリアスを取り入れたゴシックスタイル」
説明されてもよくわからないけど。
昨日カリスマロリータが行くというヘアサロンで三時間待たされて考える事はもうやめた。
「元々ロリータファッションは中世貴族の子ども服がコンセプトなの。でもマリアが五百年以上前に着てた服より、全っ然カワイイっぺさよ」
綺麗な金髪をブルーに染めて前髪パッツンのくりんくりんヘア。
「ずっと憧れてた……だってルーマニアには専門店ないから自分で作ってたもの。帰ってから着るのが超楽しみ〜っぺ!」
可愛く五杯目のかき氷に手をつけるマリア。
バニラとあんこと抹茶のトッピングに抹茶みつをかけたW抹茶スペシャル。
至高の一品。
「美味し〜い。ルーマニアにはないよ、こんなアイス」
「かき氷だから。よく食うなぁ〜ちっこいのに」
「まだパワーが回復してないっぺさよ。アンタらの為にフルパワー使ったもん」
「……ヴラドの一族にしちゃ血を吸わないんだな」
「映画の観すぎじゃない? マリアはこう見えて今年で五百歳だよ。バンパイアは長く生きる程人間に近くなるっぺさ」
六十歳以上サバを読む大吸血鬼。
林道さんに然り、何で女の鬼はこうも年齢誤魔化そうとすんのか。
まぁ、彼女がいなかったらオレもシリト様も殺られてたかもしれないから頭上がらないけど。
三日前の戦闘を振り返ってみる。
橋での一件はハラキリ丸の死体が出なかった事と、ウチの始末屋が目撃者の記憶を改ざんした事、情報屋がSNS関係を上手く操作した事、仕上げにシリト様が政財界のアチコチに掛け合った事で事件としては扱われなかった。
ハラキリ丸の死亡で始祖会議は中止、残った蒼狼会の鬼達やSOUROUグループも散開した。
始祖を失うとはそういう事だ。
だが一番驚かされたのは。
佐部さんの右手。
前腕部から斬り落としたそれは夕方にはもう、元に戻っていた。
こんな再生能力聞いた事がない。
上位バンパイアでも欠損部位の再生は難しいとされてるのに、だ。
改めて同族殺しと呼ばれる男とその娘の凄さを痛感せざるを得ない。
そう、目の前にいるゴスロリも実は物凄い。
「明日帰んの?」
「うん」
「お父さん心配じゃないの」
抹茶かき氷を食べ終わった少女は物憂げな表情で言う。
「パパはね。ドラクレア騎士団の最後の一人を殺した時に終わっちゃった人なの。これまでの百五十年は、パパにとってはオマケみたいなもんだっぺ」
「お前どーすんの」
「私には四十人の一族がいる。始祖にはなれないけど女王にはなれるっぺさよ!」
今回、昭和生まれの鬼としてバンパイア史に残る戦いを経験した。
「お前は何の為に生きる」
佐部さんが最後にハラキリ丸へ問いかけた言葉。
頭から離れないでいる。
オレは何の為に生きるのか。
それではまた…




