魔法少女、誕生 Part.38
前回投稿した『Part.37』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
「実莉、良かったね?同い年の子が家に来て、しかも一緒に住む事になって。」
「え?あ、うん・・・。」
家族から向けられる何か物言いたげな視線に気持ちが折れそうになるもめげる事無く隣に座っている妹へ話を振る実季。
それを受け姉から話を振られたもののどう返答して良いか分からずにいたものの実莉はつい数秒前に両親が行ったのと同じ様に短めの相槌を打つのだった。
「あ、そうだお母さん。代わりに私がクロード『くん』の案内するよ。」
「み、実季・・・?」
「お父さん、別に良いよね?」
「あ、ああ構わないよ。」
ダイニングテーブルの椅子から勢いよく立ち上がった事で実莉が肩を震わせ吃驚する傍ら実季は小走り気味に早苗の下へ駆け寄るとそのまま母が持っていたクロードの荷物を手にする。
そして、自分がクロードを2階の空き部屋へと案内する流れにすべく強引ながらも父へ問い掛けると千秋はそんな長女による過剰とも取れる動向に呆気に取られながらも一先ずそれを承諾するのだった。
「じゃぁ、早苗。私から言っておいてなんだが代わりに実季に頼む事にしよう。」
「ええ。千秋くんがそう言うのなら私は別に良いけど・・・。」
「よし、決まりだね。」
先程、自らが依頼した経緯も有ってか千秋は多少済まなそうにしつつもクロードの案内を実季に任せる事を提案する。
片や早苗は特に拒む様子もなくそれを了承すると実季は駄目押しと言わんばかりにクロードを2階の空き部屋へと誘導する案内役を自らが行う事で収めるのだった。
「それじゃぁ実季、お願いするわね。」
「うん。任せてよ。」
母へ調子の良い返事をした実季は2階の空き部屋へ入室したタイミングで魔法使いの少年が家に来てからの僅かな時間で芽生えた諸々の疑問をぶつけるべくキッチンを後にしようとする。
一方でクロードがパートナーである魔法少女から只ならぬ気配を感じつつも彼女と共に廊下へと出ようとしたところで母の早苗がこんな言葉を口にする。
「あ、そうだ。実莉、お姉ちゃんだけじゃ大変だろうからクロードくんの荷物を持つの手伝ってあげなさい。」
「は~い。」
母からの指示に素直に応じるべく実莉は返事をすると同時に椅子から立ち上がる。
魔法少女と2人きりになる状況を一時的ではあるが回避出来たと思ったらしいクロードが人知れずほっと胸を撫で下ろす中、思いがけない発言に実季は狼狽えながらも後ろを振り返る。
「いいよいいよ、お母さん。クロード『くん』の荷物ぐらい私、一人だけで持てるよ。」
「え?ああ、そうなの・・・?」
手にしていたクロードの荷物を一旦、床に置くと実季は慌てた様子で早苗の下へ近付き断りを入れる。
一見、遠慮している様にも受け取れる実季の振る舞いにどこか引っ掛かるところが有りつつもそれに対しての相槌を打つ早苗。
「あと、実莉も私に気を遣わなくてもいいからね?」
「いや、あたしは別にそんなつもりじゃ・・・。」
続けて実莉の下へと近付くと妹の肩に左右の手をそっと添えるかの如く乗せた実季は再び着席するよう促す。
そして、実莉もまた早苗と同じく実季にどこか引っ掛かるところを感じながらもその言葉に従う形でゆっくりと席に着いたのだった。
「じゃぁ、実季。頼んだわよ。」
「オッケー。」
改めて母の言葉に二つ返事で答えると先刻からの挙動不審な素振りを受け不思議そうにしている家族の表情を背に実季はクロードを連れ2階の空き部屋へと誘導する。
すると、階段を登り始めたところで先の母からの言葉を受け一時的に消していたのであろう何かしらの圧力を実季から再び感じ始めたクロードは彼女自身の胸の内がやはり穏やかなものではなかった事を今一度、思い知るのだった。
実季と実莉、夫々の部屋の前を通過した2階突き当りに位置する空き部屋のドアを開けると魔法少女はパートナーである魔法使いの少年と共に入室する。
(2人の娘を買い物へと行かせた間に掃除機をかけたとはいえ早苗が普段からまめに掃除をしている事も有ってか普段あまり使用していないのにも拘わらず室内は比較的綺麗な印象を受けるのだった。)
部屋から身を乗り出すかの如く廊下へ顔を覗かせた上で家族の内の誰かが来ない事を確認した実季は向かって右側に両手に持っていたクロードの荷物を置くとドアをしっかりと閉める。
念の為、隙をついて逃げられない様にドアの前に仁王立ちになると実季はクロードへ質問を投げ掛ける事にする。
「さ、どういう事なのか説明してもらおうじゃない?クロード『くん』。」
「み、実季さん。落ち着いて下さい、これにはとても深い訳が有りまして。」
「『深い訳』?一体どんな訳なのかな?ってか、『ワンルーム カプセル』で暮らすんじゃなかったの?クロード『くん』。」
「で、ですから、今からきちんと説明しますので、僕の事をそんな風に『くん』付けで呼ぶのは止めて下さい。」
実季から矢継ぎ早に質問が飛んで来る事が予想されるだろう現状に慄きながらも異常な程に強めのアクセントで発せられる名前を呼ぶ際の『くん』付けに抵抗を示すクロードであったが取り敢えずパートナーである魔法少女の疑問を冒頭、言葉を詰まらせてしまうも釈明を兼ね答え始めた。
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