魔法少女、誕生 Part.36
前回投稿した『Part.35』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
「(あれ?思っていたよりは小ぶりな平屋建てだな。しかも、心成しか病院の様にも見えなくもない・・・。)」
実季の父であり某大学の附属病院にて外科医として勤務する千秋が我が家と称して指を差した建築物の方向へ目をやるクロード。
だが、それを目にした事で魔法使いの少年は疑問を覚えるのだった。
「(ドクターを職業としている関係か?いや、馬鹿な。子供向けのアニメ作品じゃないんだからそれは考えられないな。)」
顎の辺りに手を添えたのを切っ掛けにクロードは自らが抱いた疑問を解消すべく考察を始める。
「(単身者向けなら未だしも、あの規模の建物の中でどうやって家族数名と衣食住を共にするというのだ?)」
唐突に黙り込み考えに耽る姿を目にし、何か言いたそうにする千秋を他所にクロードは相変わらず見当違いの考察を続ける。
「(まさか、室内に快適に過ごす為の何かしらの秘密が隠されているというのか?もしそうだとしたら人間界は魔法界に匹敵するぐらい発展している事になるぞ。)」
「クロードくん、もしかしたら『手前の方』の建物を見ているんじゃないのかい?だとしたらそれは私の家内が経営している小児内科だよ。」
根拠は無いが恐らく誤った解釈をしようとしているだろうクロードへ千秋は至って普通の口調を意識し、手前側に見える建築物が妻である早苗が経営する個人医院『あかまつ小児内科』である事を告げる。
「ええ?ああ、そうでしたか。申し訳有りません。」
「いやぁ、良いよ。別に気にしなくても。」
先の指摘を受け少しうろたえながらも済まなそうに詫びるクロードに千秋は『作り笑いと悟られない様な』微笑を交え気に留めていない旨を述べた。
「(しまったぁ、僕とした事がどうやら考え過ぎてしまった様だ。)」
右の手の平を額に当て自分の行き過ぎた考察についてクロードが人知れず悔いる中、千秋は改めて正面へ向け指を差す。
「君が今日から住むのは『その奥』に在る家だよ。」
その言葉に導かれる様にしてクロードは千秋が指を差した『あかまつ小児内科』の奥側に見える建物へ目を向けるのだった。
丁度その頃、赤松家のキッチンでは・・・。
用件を果たし、帰宅した実季と実莉が食卓スペースにてやや待ち惚けている様子が確認出来、2人はダイニングテーブルの椅子に座り目の前に有るオードブルの品々を眺めていた。
因みにテーブルには早苗が電話注文した(既に8等分にカットされている)宅配ピザ、食べ易いサイズに切られたローストビーフ、(4~5人前と思われる)寿司の大皿が中央付近に有り醤油やチューブ入りのワサビ、ドレッシング、タバスコといった調味料と共にオードブルを取り分ける際に必要となる小皿と飲み物を注ぐ際に使用するガラス製のコップ、それに各自で使用する箸が夫々配置されていた。
「お母さん。もう、スプライト出しておく?」
「後にしたら?今、出すと温くなるわよ。」
調理スペースにて作業している早苗に問い掛ける実莉。
その問いに答えつつ早苗は間に合わせで作った野菜サラダを手に、食卓スペースへとやって来るとオードブルが置かれた付近にボウルごと『ドスン』と置くと少しして玄関のドアが開く音が3人の耳に届く。
「ただいまぁ。」
「あ、お父さんが帰って来たみたい。」
家主である千秋による帰宅を知らせる声を確認し、早苗はダイニングテーブルの椅子に座ると正面に居る娘達にそれを告げる。
すると実季と実莉は椅子に座った状態で姿勢を正し何処か畏まった装いを見せるのだった。
その一方で玄関の脇に常備されている来客用のスリッパを手にした千秋はそれを床に置きクロードへ上がるよう促す。
「さ、上がって。」
「はい、お邪魔します。」
千秋に向け家に上がる際の挨拶言葉を述べるクロード(余談だがこの礼儀作法については人間界、魔法界共通の様だ)。
そして、手にしていた荷物を一旦、上がり框に降ろすと続けてスニーカーを脱ぎそれを揃える様にして端の方へ置くと玄関マットに軽く足を付けた後、スリッパを履いた。
「取り敢えず、キッチンへ来てもらえるかな?妻と娘達がそこで待っているらしいから。」
「分かりました。」
クロードが上がり框に降ろした荷物を手にしたタイミングで千秋はキッチンへ来るよう誘導をする。
その傍らで廊下から不意に届いた少年の声に何処か聞き覚えが有ると感じた実季は反射的に少し眉を顰めると程無くして千秋がキッチンの食卓スペースに通じるドアを開いた。
「みんな、居るかい?」
ドアを開けると同時にダイニングテーブルの椅子に着席しているだろう家族へ向け声を掛けるとそれに反応した早苗と実莉が千秋に向け帰宅した際の挨拶をする。
「あぁ、千秋くん。お帰りなさい。」
「ただいま、早苗。」
「お父さんお帰りなさい。」
「ただいま、実莉。」
そして、実季もまた父へ向け帰宅した際の挨拶をしようと試みるも千秋の横に立っている一人の少年の姿を見付けるなりその行為をする事が出来なくなってしまう。
「(く、クロード!?)」
父が連れて来た少年の正体がクロードであった事を認識するや否や実季は吃驚するあまり目を見開き椅子に座ったまま硬直してしまうのだった。
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