魔法少女、誕生 Part.35
前回投稿した『Part.34』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
スーパーへと到着し、精肉コーナーにて販売されているローストビーフを買い物かごに入れた実季は続いて清涼飲料水が陳列されているショーケース型の冷蔵庫の前までやって来る。
「(えぇと、コカ・コーラとカルピスと、あとはスプライトだったよね。)」
母の早苗に言われた通り皆が好きそうな飲み物であるコカ・コーラとカルピスを手に取り順番にかごに入れていく。
そして、最後に妹の実莉から購入してほしいと頼まれたスプライトと思しき炭酸飲料を手にし、かごに入れレジへ向かおうとするも程無くして実季はその足を止める。
「(しまった。これスプライトじゃなくて三ツ矢サイダーだ!)」
蓋の色が同じ緑色であった為か実季は誤って類似商品である三ツ矢サイダーを買い物かごに入れてしまった事に気付く。
「(ま、いいか。どっちも同じ『サイダー』だし・・・。)」
品名及びメーカーが異なるもそれ以外は然程違いが無いと判断すると実季はそのままレジへ向かおうとする。
だが次の瞬間、実季の頭の中で数分前の出来事がフラッシュバックする。
『《コカ・コーラやカルピスと一緒にスプライトも忘れずに買って来てね!》』
「(はっ!いけない。私とした事が、実莉に絶対買うって言ったんだった。)」
実莉との約束を思い出した事で実季は慌てて三ツ矢サイダーをショーケース型の冷蔵庫に戻すと改めてスプライトを手にし、買い物かごへと入れレジへと向かうのだった。
一方で実季及び彼女の幼馴染の友人である真琴、智史の3人と出会った公園の敷地内に在る駐車場にて誰かを待っているらしいクロードは人知れず心細さを覚えつつ今し方、液晶画面に表示された時刻を確認した『タッチパネル テレフォン』をズボンのポケットに入れるとバッグの中に仕舞った『ワンルーム カプセル』を取り出しそれを見詰めながら今の自分の気持ちを紛らわそうとするのだった。
「(まぁでも、最悪の場合、今夜もこの『ワンルーム カプセル』の中で過ごせば良い事だし・・・。)」
閉園の為の作業をしている公園の係員達がクロードを訝しげな表情で見る中、1台の車が駐車場へとやって来る。
それに気付いたクロードは慌てて『ワンルーム カプセル』をバッグの中へ押し込むと飽くまでも待ち合わせをしているというスタンスを装うのだった。
「やぁ、待たせて悪かったね。ええと、名前は確か・・・。」
「クロードです。クロード・アンバー・フォールドといいます。」
フォルクスワーゲン製の『ティグアン』を駐車し、運転席から出て来たのは実季の父でありクロードが現在居る公園の隣に位置する某大学の附属病院にて外科医として勤務する千秋であった。
察するにクロードを迎えに来たらしいのだがどことなく不自然な様子にも見られる。
「ああ、そうだったね。私とした事がついうっかりしてたよ、クロードくん。」
「あ、いえ。」
「それにしても態々悪かったね、私の勤務する病院の近くまで来てもらって。」
名前を忘れてしまった事に済まなそうにする千秋にクロードは全く気に留めていないといった具合に相槌を打つ。
そして、千秋は少し緊張している様にも見て取れるクロードを気遣いつつ話を続ける。
「此処まで歩いて来たんだろう?本当だったらこっちが駅か空港まで迎えに来なきゃいけないのに。」
「そんな。お気になさらないで下さい、赤松先生。」
「ははは。別に『先生』だなんて言わなくていいよ。私の事は『千秋』と呼んでもらって構わないよ。」
「そ、そうですか。ではお言葉に甘えて『千秋さん』と呼ばせて頂きます。」
対面したばかりというのも有りぎこちない会話をしている中、閉園の為の準備をしていた公園の係員数名が2人の方に何か言いたげな視線を送り始める。
そして、その内の一人が『エヘン』と咳払いをしたのを切っ掛けに係員達によるそれ等の振る舞いの意図を理解した千秋はクロードへ自身の愛車の助手席に乗る様に指示すると多少の罪悪感を覚えつつ駐車場を後にした。
車中にて時折、千秋との他愛の無い会話を行う傍らカーステレオからはラジオドラマが流れていた。
そこではテンションの高いサラリーマンの男が年の近いごく普通のサラリーマンの男に絡んではツッコミを入れられるという展開が繰り広げられていた。
その内容に千秋が「ははは。」と笑う横でクロードは助手席の窓から見える街の風景を目にしながらも何か物思いに耽る表情をさせるのだった。
そんな中、車を走らせる事、数分後・・・。
アスファルトが敷かれてそう年月が経っていないであろう駐車場の敷地内に入ると千秋は同じくフォルクスワーゲン製の『ポロ』の隣に愛車のティグアンを停車させる。
「さぁ、着いたよ。」
エンジンを止め千秋がクロードへ向け声を掛けた事から推測するにどうやら目的地へ到着したらしい。
「あ、ありがとうございます。」
それにより我に返ったクロードは千秋に礼を述べた上でシートベルトを外すと丁寧にドアを開け閉めする事を心掛けつつ足元に置いていた荷物を手にし、車から降りた。
そして、駐車場の敷地内から歩道へ出たところで千秋はクロードに分かる様に前方に見える建物へ指を差し説明を始める。
「クロードくん、あそこに見えるのが我が家だよ。」
促される様にして千秋が指を差す方向へ目をやるとクロードは反射的に不思議そうな顔をさせるのであった。
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