魔法少女、誕生 Part.34
前回投稿した『Part.33』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
突然、目の当たりにした『空間の歪み』により夫々の自宅にて奇妙な体験をする事となった智史と真琴。
それから数分経った頃、実季が魔法少女へと変身を遂げた公園のとあるエリアに目を向けてみると・・・。
「カアー。」
「カー。」
「カアア。」
時折、カラスの鳴き声が聞こえる園内にて人間界の少年少女達と別れる際、クロードが中に入っていった関係で転がって行った末、植樹されている低木の根の辺りで停止した筈の『ワンルーム カプセル』が何らかの力が加わった為か再び転がり始める。
「よし、誰にも見られてないな。」
石畳で舗装された歩道まで出て来たところでピタリと止まるとカプセル内から辺りを見渡した上で姿を現したのは持ち主である魔法使いの少年、クロード・アンバー・フォールド。
閉園間際で人の気配が無かった事も幸いし第三者によって目撃されなかったであろうと確信するとクロードは多少の緊張感を漂わせながらも何やら行動に移そうとするのだった。
そして、時間を少しだけ巻き戻してみると智史と真琴同様、実季もまた『空間の歪み』の様な光景を目にするのだった。
「なに、今の?」
キッチンにてロージー牛乳及びロージーコーヒーを飲んだ後、自室へと移動した実季は取り敢えず家着へと着替える為、外出着であるパーカーを脱ごうとした矢先、一瞬だけ空間が歪んだ様に思えてならなくなると上着を脱ぎかけたまま窓の外を見詰める。
すると自身が経営する小児内科から自宅へと戻って来た母の早苗がノックもせず実季の部屋のドアを開ける。
「実季、ちょっと良い!?」
「きゃあ!!」
心成しか慌てている様子の早苗がいきなりドアを開けやって来た事で昼間の真琴よろしく腹部が露わになった状態の実季はやや顔を赤くさせ驚きながらも声を上げる。
「ゴ、ゴメン!着替え中だったのね。」
「あ、ううん、いいの。で、お母さんどうしたの?」
早苗の反応から悪気は無いと判断した実季は脱ぎかけていたパーカーを整えると至って気にしていない旨の言葉を口にした後、用件を尋ねる。
「悪いけど、今からスーパーに行ってローストビーフ買って来てくれない?」
「『ローストビーフ』?」
「お願い、もう時間が無いの!」
そう言うと早苗は現金を手渡し足早に実季の部屋を後にする。
片や訳が分からないでいる実季であったが受け取った現金を一旦、左ポケットに入れると早苗からの要件を実現すべくスーパーへ行く為、自室を出るのだった。
「じゃぁ実莉、小僧寿しでお寿司の盛り合わせを宜しくね。」
「うん、分かった。」
自室のドアを開け廊下へと出ると実季は妹の部屋の前にて早苗が持ち帰り用の寿司の盛り合わせを購入するよう実莉へ依頼すると自分の時と同様、現金を手渡す早苗の姿を確認する。
「あとは宅配ピザを頼んで・・・。あ、そうだ実季、ローストビーフの他にジュース買って来てね。コカ・コーラとかカルピスとかみんなが好きそうなヤツ。」
「は~い。」
宅配ピザのオーダーをすべく自身が所有するスマートフォンを取り出すと早苗は思い出した様に実季へ清涼飲料水の購入も依頼する。
それを受け実季は早苗の方へ視線を向け返事をすると実莉と共に家を後にしたのだった。
「お母さん、どうしたんだろうね。凄く慌ててたけど。」
「何か外国から家に誰か来るらしいよ?」
「外国から?何でまた?」
「分かんない。でも、お母さんは『事前にお父さんから報告が有った』って言ってたよ。」
早苗が経営する小児内科の横を通りながら今し方、目にした母による慌ただしそうな振る舞いと外国から来客が訪れるという事柄に2人の姉妹は揃って首を傾げる。
そんな中、実莉が改まった様子で実季へ呼び掛ける。
「ねえ、お姉ちゃん。」
「どうしたの、実莉?」
先刻までとは異なる実莉の装いに疑問を覚えるも取り敢えず実季は率直に何事かと尋ねる。
「お姉ちゃん。あたし、お願いが有るんだけど良いかな?」
「な、なに?」
実莉から発せられる雰囲気に只ならぬものを感じ始める実季。
そして、これから投げ掛けられるだろう言葉に備え身構える実季へ実莉はこんな事を口にする。
「お姉ちゃん・・・。スプライト絶対買って来て!」
「す、『スプライト』・・・?」
「うん!多分、『あるある』だと思うんだけど、スプライトって偶に飲みたくなる時、有るじゃん?」
「え?まぁ、それは人によると思うけど・・・。」
「あたし今、そんな気分なんだよ。だから、コカ・コーラやカルピスと一緒にスプライトも忘れずに買って来てね!」
「わ、分かった。忘れずに買って来るよ。」
思わず拍子抜けしてしまう実季だったが真剣な表情でスプライトを購入して欲しいと訴える実莉の要望を一先ず聞き入れる事にするのだった。
閉園間際の公園にて係員達が清掃作業等行う中、左手に魔法界から持参したステッキを入れたバッグを持ち駐車場の端の方でクロードが独り佇んでいた。
「(もうそろそろだと思うんだけどなぁ・・・。)」
そんな事を思いながらも魔法界からの支給品である『タッチパネル テレフォン』をポケットから取り出し液晶画面に表示された時刻を目にするクロードの様子からはどこか落ち着かない心境を窺わせるのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
ご意見ご感想等が有りましたらお気軽にお寄せ下さい。




