魔法少女、誕生 Part.32
前回投稿した『Part.31』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
『実季ちゃんに大事な用が有る。』
父の直哉が用いた言い回しにより母の弥生から『実季へ愛の告白をすべく出掛けて行った』と勘違いされてしまった智史。
それどころか祖父母の泰造、静子にまで同様の認識をされてしまい溜め息交じりに肩を落とすも一先ず2人へ向け釈明を試みようとした矢先、2階から3歳下の弟である一史がやって来る。
「兄ちゃんお帰り。ってか、どうしたのそんな所で?」
「か、一史。お前こそどうした?何か用事か?」
兄である智史が帰宅して来た事に気付くと何気無くそこで何をしてるのか尋ねる一史。
すると智史はこれ以上面倒な事にならぬ様、その問い掛けを躱すと一史へ向け尋ね返した。
「ああ、ちょっと三ツ矢サイダーでも飲もうと思って。」
「そ、そうか・・・。」
やや不自然な装いにも見えたが特に気にする事無く一史は素直に智史からの問い掛けに答える。
話の内容からどうやら冷蔵庫に入っている三ツ矢サイダーを飲む為、キッチンへ向かう途中だったらしく偶々通りがかったところに兄である智史が帰宅した事に気付いた様だ。
そして、智史がそれに対しての相槌を一つ打った後、一史は兄へこんな質問を投げ掛けた。
「あ、そう言えば兄ちゃん、実季さんに告白しに行ったんでしょ?どうだった?」
「一史、お前もか・・・。」
悪気は無いと分かってはいながらも父である直哉が発した一言が原因で弟である一史にまで誤解をされてしまったらしく実季と交際に発展する事となったか否かを聞かれる智史。
一方で返す言葉が見付からずガクッと項垂れる智史であったがそんな兄の様子に構う事無く一史は淡々とした口調で所感を述べ始めた。
「もしも実季さんみたいな人が兄ちゃんと付き合う事になったら俺としても鼻が高いけど問題は実莉だな。アイツの事だからきっと何かしらの理由を付けて俺にして来そうな予感がするんだよなぁ。」
「ははは。まぁ、確かに智史が実季ちゃんみたいな子と付き合えたらお前としても自慢出来るな。」
「だよね、だよね。」
智史が実季と付き合う事になったらという仮定を前置きに一史はそうなった場合に実莉の振る舞いにより起こるだろう自身の不運を予感する。
(余談だが多少の時間軸は有るものの赤松家のキッチンにて実莉もまた実季へ向け一史に対し普段思っている本音をぶちまけていた。)
その所感を聞き直哉は実莉の事柄には触れない事にした上で冒頭部分について共感すると一史は心成しか嬉しそうに相槌を打ったタイミングで一連の事の流れにより心情的に耐え兼ねなくなった智史は大きく息を吸った後、大きな声を張り上げる。
「だからそうじゃないんだって!俺は実季にお釣りを届けに行っただけなんだよ!」
突如として家中に木霊した智史の声により反射的に目を丸くする一同。
そこへ事情を把握すべく母である弥生が驚いた様子で此方へとやって来た。
「どうかしたの?今、智史の大声が聞こえたけど?」
心配そうに尋ねる弥生の表情を見たのを切っ掛けに我に返った智史は誤解を解くべく公園へ向かった実季の後を追った理由について説明を始めた。
「な~んだ、そうなんだ。」
「それならそうと言ってくれれば良かったのに。」
智史からの説明を受け弥生と一史は『告白』ではなく『お釣りを届けに行く』という名目の下、実季の後を追った事を理解した。
「それにしても智史、ちゃんとお釣りを届けに行くとは偉いぞ。」
「爺ちゃん・・・。」
直哉に促される形ではあったもののその行動に感心した泰造に褒められた事で智史は照れ臭そうにはにかんだ。
するとその傍らで智史の祖母である静子が息子である直哉へ此処までの騒動に発展してしまった事に関しての小言を述べ始めた。
「元はと言えば直哉、あんたが変な言い方するからみんなが勘違いしたんじゃないか。」
「母ちゃん、いきなり何だよ?」
「あんたは昔からそういうところが有るんだから。」
「おい、止めてくれよ。弥生と子供達が見てるじゃねぇか。」
子供の頃からの性格なのかやや呆れながらも苦笑交じりに説教とも取れる言葉を静子によって告げられた事により直哉は困惑を覚えた後、顔を赤らめ控え目に反駁したのだった。
閉店間際という事で利用客が店内と住居スペースを隔てた空間にて吉岡家によるやり取りが繰り広げられた後、一史がふと頭に浮かんだ素朴な疑問を口にする。
「だけど、実季さん何でまたそんなに慌ててたんだろう?」
「へ?そ、そうだな。何でだったんだろうな・・・。」
「え?兄ちゃん、理由聞いて来なかったの?」
「うえ!?まぁ、何と言うか・・・。」
公園にてジョギングの途中、実季が魔法少女へと変身を遂げようとする過程を偶然目撃してしまった真琴と共に彼女と遭遇した智史は魔法使いの少年を含めた3人そこまでに至った経緯を一通り聞かさせる。
その話の中で2度目の来店の際、吉岡パンを慌てて後にしたのもクロードに纏わる事柄を伏せておく必要が有ると判断した為と察した智史であったが先程の弟による何気無い一言が切っ掛けで奇しくもそれと類似した心境を覚える。
片や適当な返答が思い付かず曖昧な言葉を口にする兄を受け一史は不思議そうにその様子を見るのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
ご意見ご感想等が有りましたらお気軽にお寄せ下さい。




