魔法少女、誕生 Part.31
前回投稿した『Part.30』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
先程、発した言葉に対し口籠る智史の様子を察してかこの件に関してこれ以上深追いしないと決めると弥生は別の話を投げ掛ける事にする。
「それよりも智史、実季ちゃんに会いに行ったんでしょ?」
「どうしてそれを!?」
「お父さんに聞いたのよ。」
ロージー牛乳を購入すべく再び吉岡パンへとやって来た実季が慌てた様子で店を後にした為に受け取り忘れたお釣りを父である直哉に促され届けに行った経緯を母である弥生が認知していた事に智史は驚いた反応を見せる。
すると智史の心境を察知した弥生は直哉から事情を聞いたのだと説明すると再び息子へ向け問い掛ける。
「それで実季ちゃんに会えたの?」
「ああ、会えたよ。実季のヤツ、『公園に行く』みたいな事を言いながら慌てて店を出たからもしかして思って行ってみたら案の定、公園に居たよ。」
母の問いに答えようとする最中、智史は実季が魔法界からやって来た少年、クロードと出会った事を切っ掛けに彼女の中に秘めていたのであろう能力が覚醒したが故に魔法少女へと変身を遂げ、挙句の果てには真琴を含む自分達3人へと絡んで来たノース高校に通う不良(正確に言えば不良のフリをした)男子生徒2人を魔法使いの少年から手渡されたステッキを用いて繰り出された魔法で撃退した光景を思い出す。
だが勿論、そんな出来事が有った等と喋ったところで非現実じみた話を信じてもらえる筈もない。
加えて14歳にもなってこの様な経験をしたのだと言ってしまったのなら確実に正気ではないと思われるのは目に見えている。
そう判断した智史はそれ等の想いを悟られない様に心掛けると母へ向け平然を装いつつ返答するのだった。
「そう。良かったわね、ちゃんと会えて。」
内に秘めた思考を知らずして息子の言葉に意味深な相槌を打つと弥生はそれを前置きにした上で智史へ踏み込んだ質問を投げ掛けた。
「で、どうなの?実季ちゃんに告白出来たの?」
何をどうしたらその様な台詞が飛び出して来るのか。
弥生の口から放たれた質問に対し反射的に吃驚してしまいながらも智史の脳内にてそんな想いが過るのだった。
「お、お袋!いきなり何言いだすんだよ!?」
「え~、だって気になるじゃない。それにあんた、こっちから単刀直入に聞かないと言わない時、有るし・・・。」
動揺を隠せないでいる中、何故そんな発言をするに至ったのかを問う智史。
だが、当の弥生はというと何食わぬ顔をしながらも宛ら息子の神経を逆撫でするかの様な発言をするのだった。
「仮にあんたと実季ちゃんが付き合う事になって将来、結婚するとかってなったら私と早苗は親族になる訳かぁ。アイツとは子供の頃からの付き合いだけど、まさかこんなに長いものになるとはねぇ。」
「何でそうなるんだよ!」
話の内容から察するに実季の母であり現在自身が看護師として勤務する『あかまつ小児内科』の院長である早苗とは付き合いが長いらしく弥生はそれを引き合いにすると感慨深げに所感を述べる。
そんな母に反駁したところで一旦クールダウンを図る智史はたった今抱いたばかりの不満を呟いた。
「ってか、何で俺が実季に告白する事になってんだよ?俺はただアイツにお釣りを届けに行くだけだってのに・・・。」
「ええ?だってお父さんが言ってたわよ?」
「親父が?」
「うん。『智史が実季ちゃんに大事な用が有る』って。」
弥生の話を基に推測した上でどうやら父である直哉が誤解を招く様な発言をしたが故にこの様な事態になってしまったのだと結論付けると智史は急ぎ足で店舗スペースへと移動する。
「親父!」
「おお、智史。帰ってたのか?」
店舗と住居、夫々のスペースを繋ぐ引き戸を開けるなり父へ呼び掛ける智史。
一方で間も無く迫った閉店時間に備え店内の片付け作業を行っていた直哉は振り向き様に智史が帰宅した事に気付いたのだった。
「『今、帰ったのか?』じゃねぇよ!」
「どうしたんだよ、そんな顔して?」
何やら只ならぬ気配を感じさせる智史に見当の付かない様子の直哉は率直にその心境に至った経緯について尋ねる。
「『どうしたんだよ』じゃねぇよ。何で誤解される様な言い方したんだよ?お陰でお袋が滅茶苦茶勘違いしてんじゃねえか!」
「ああ、その事か。勘違いも何もないだろ。実際『実季ちゃんに大事な用』が有るからお前を行かせたんじゃないか。」
諸悪の根源が父である直哉の発言によるものであった事を確信する智史。
沸々と怒りに似た感情が沸き上がる中で直哉に向け異議申し立てを試みようとする智史であったが彼等のやり取りが耳に入っての事かパンを製造する調理場にて清掃を行っていた祖父母である泰造と静子が作業を一旦中断し、此方へとやって来る。
「智史、お帰り。それでどうなったんだ、実季ちゃんとは?」
「この間まで小学校に通っていたかと思ってたけどお前もそういう年頃になったんだねぇ。」
「爺ちゃん、婆ちゃん・・・。だからそうじゃないんだって!」
母だけなら未だしも、祖父母にまで誤解されているだろう状況に智史は辟易としながら溜め息交じりに肩を落とすのだった。
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