魔法少女、誕生 Part.30
前回投稿した『Part.29』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
智史の弟である一史を引き合いに実季から『来るべき日が来るであろう』と諭されるや否や実莉はそれに対して否定的な反応を示した。
「良い奴である事には間違いないんだけど、アイツって何かこう『頼り癖』みたいなのが有るんだよね。」
「た、『頼り癖』?」
前置きとして一史に対しフォローを入れつつも実莉は自身が発した『頼り癖』という言葉に引っ掛かっている様子の実季へその理由を話し始めた。
「うん。5年生に進級して違うクラスになったから今でこそ無くなったんだけど、3、4年生の時なんか酷かったんだから。何か有る度に『実莉、宿題写させてくれぇ』とか『実莉、日直の当番俺一人だけじゃ出来ないから手伝ってくれぇ』って言ってあたしに泣き付いてたんだから。ま、報酬としてアイツん家のパンを貰えるからその点に関しては良かったんだけどね。」
妹から告げられたその内容に唖然としながらもつい数ヶ月前まで吉岡パンにて製造された購入者不明の菓子パンがキッチンのダイニングテーブルに置かれている光景をよく目にしていた事を思い出すとそれを機に実季は自分の中で点と点が線になった様な心境を覚えるのだった。
そして、人知れず抱えていた疑問が一つ解決したところで実季は気を取り直し今度は真琴の弟である斗真を引き合いにし、尋ねる。
「じゃぁ、斗真くんは?」
「斗真ぁ?優しい奴ではあるんだけど、アイツもねぇ。」
「また何か有るのぉ!?」
再び何か物申しそうな雰囲気を漂わせる妹に戸惑いを見せる実季であったがそんな姉を他所に実莉は何処となく微妙な表情を浮かべつつ斗真とも『そういった関係性』にならないであろうその理由について説明を始めた。
「アイツってちょっとシスコンの気が有るんだよねぇ。5年生になって多少は改善されてるとは思うんだけど、3年生頃まで真琴さんと一緒にお風呂入ってたみたいだし、何だったら耳かきまでしてもらってたらしいしね。まぁでも、真琴さんみたいな人がお姉さんだったらあたしでもシスコンになっちゃうだろうけどね。」
先刻同様、せめてものフォローを枕言葉に置きながら斗真に対しても辛辣な所感を述べる実莉に実季は絶句すると共に幼馴染の友人である真琴が小学校6年生頃まで3歳下の弟と一緒に入浴し、挙句の果てに耳掃除までしていた事実を知ってしまい後ろめたい気持ちになるのだった。
赤松姉妹によるそんなやり取りが行われている丁度その頃、自宅である吉岡パンへと辿り着く智史。
パンを買いに来た客及び小麦粉や小豆、砂糖といった原材料を搬入する業者が利用する店舗出入口の前を素通りした彼は隣の住居との境目に在る路地へと足を運ぶ。
そして、店舗出入口とは別の場所に位置し、主に家族が利用する住居スペースへと直通する玄関ドアから家の中へと入るのだった。
「ただいまぁ。」
溜め息交じりに帰って来た事を告げながらも履いていたナイキのスニーカー『エバノン ロウ』を脱ぐと家族の内の誰かに誤って踏まれてしまうのを阻止すべく、向かって右側の位置へつま先部分を下にかかと部分をセメントで塗られた壁に立て掛ける様にして置き家の中へと上がるのだった。
「やっぱり全部、マジで起こった事なんだよな。」
そう呟きながら公園内で遭遇した出来事の一つ一つを回想していく智史であったがその過程の中でふと邪な光景が過る。
『魔法少女へ変身を遂げたばかりの実季によって繰り出された魔法により意図せず腹部が露わになってしまった真琴の姿』
『魔法少女から元の姿へ戻るべく変身を解除する際、光に覆われていたとはいえ身体のシルエットを露出する羽目になってしまった実季の姿』
これ等の光景を思い出してしまい激しく赤面する智史は天を仰ぎながら両手で頭を掻き毟った。
「(嗚呼、何考えてんだよ俺!アイツ等は只の幼馴染なんだぞ!)」
宛ら自分に言い聞かせながらも邪な想いを一刻も早く忘れるべく何度も首を横に振る智史であったがその後ろ姿に目掛け何者かが声を掛けて来る。
「ちょっと、智史!あんた何やってるの!?」
「わぁ!お、お袋。」
驚いた拍子に意識を此方に戻し後ろを振り返った智史はこの瞬間をもって今の声が母である弥生のものであった事を確認した。
因みに弥生は実季の母、早苗が院長を務める『あかまつ小児内科』にて看護師として勤務しておりその為、吉岡家の家業であるパンの製造販売の方には関与していないのであった。
「何だよ、お袋!いきなりビックリさせんなよ。」
「それはこっちの台詞よ!廊下に突っ立ったまま物凄い勢いで首振ってたら誰だって何事かと思うわよ。」
先の動向を目撃された事への恥ずかしさも有ってか動揺しながらも母へ意見する智史へ弥生はそれに反論するも心配した様子で息子へ所感を述べる。
一方で公園内にて目の当たりにしてしまった真琴と実季、夫々の霰もない姿を思い出してしまった事を悟られずに済んだと感知するも母によって正論をぶつけられてしまった智史は無意識に口籠ってしまうのであった。
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