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魔法少女、誕生 Part.29

前回投稿した『Part.28』の続きをお届けします。

それではごゆっくりご覧下さい。

実季(みのる)と2人きりで帰るきっかけを与えた智史(さとし)の動向を気掛かりに思う真琴が浴室にてシャワーを浴び始めてから暫く経った頃・・・。

帰宅後、自宅のキッチンにてロージーコーヒーをゆっくりとしたペースで飲む実季はガラスコップを左手に持った状態でショートパンツの右ポケットを利き手で弄るとマッチ棒程の形状になったステッキを取り出した。


「(それにしても、さっきまでの出来事は一体、何だったんだろう?)」


魔法使いの少年クロードが魔法界から持参して来たステッキを手の平に乗せると図らずも持ち主となってしまった実季はそれを凝視しながらも公園内で自身に降りかかった出来事を今一度、振り返る。


『魔法少女へと変身を遂げた事』

『触れようとした真琴に対しステッキが拒否反応を示した事』

『自分達に絡んで来たノース高校の男子生徒2人へ攻撃を放った事』


ファンシーな外観とは裏腹に得体の知れない能力を備えているだろうステッキを物思いに見詰めると実季は囁く様にしてこんな言葉を呟いた。


「『魔法少女』、かぁ・・・。」


すると実季の声に反応してかマッチ棒程の形状であったステッキが突如として通常時の大きさへと戻る。


「え?わ、わ!?」


思いも寄らない出来事に動揺する実季であったが瞬時にグリップ部分を右の手の平に収めた為に何とか落下を免れるも続いて何者かがキッチンへとやって来る気配を感じる。

止むを得ず咄嗟の判断で右手に持ったステッキを背後へやると飽くまでもキッチンにてロージーコーヒーを飲んでいる様に装う事にするのだった。


「あれ、お姉ちゃん。帰ってたんだ?」

「ああ、実莉。」

「随分、遅かったんだね?」

「あ、うん。まぁね。」


今し方感じた気配の正体が3歳年の離れた妹である実莉のものであった事を確認した実季。

そんな中、何気無く発したに過ぎない実莉の言葉に実季は僅かながらに表情を曇らせる。

理由としては公園にて自身が秘めていた『魔法少女』の能力が覚醒し『魔法少女メルシールー』へと変身を遂げた事が脳裏に過ったからである。

だが、いくら肉親とはいえ小学5年生の妹の前でそんな経緯が有った事を語る訳にもいかないのに加え上手く語れるかどうかも分かり兼ねる非現実染みた出来事を11歳になった実莉が鵜呑みにする訳が無いと判断した実季は現場に居た幼馴染の友人である真琴と智史の2人に関しても同じ心境にいるであろうと確信しつつそれを自分の中だけのものにするのだった。


「あんまり遅いから、お母さん心配してたよ?」

「ええ、そうなの?」

「ちょっと前にこっちに来て『まだ帰ってないの?』ってあたしに聞いてきたんだから。」


実莉によると自身が経営する個人医院にて何かしらの業務を行っていると思われる早苗が吉岡パンへ限定メロンパンを買いに出掛けたきり未だ帰宅しない実季を心配するあまり様子見がてら一旦此方へ戻って来たらしい。

片やそれを知るなりやや驚きながらも実季は幾分申し訳無さそうにするもそんな姉の反応に構う事なく実莉は続ける。


「あと、お母さんから頼まれたお使いでロージー牛乳を買いに行った時、一緒にロージーコーヒーも買って来たから・・・、ってお姉ちゃん早速飲んでるじゃん。」

「あ、ええと、えへへ。」

「もう、お姉ちゃんったら・・・。あたしがお母さんに買っても良いかって許可貰ったんだからね、ロージーコーヒーの。」

「あ、ありがとう、実莉。」


喉の渇きを癒すべく流し込んだロージー牛乳及びロージーコーヒーが早苗から任されたお使いにより実莉が購入して来たものである事を知った実季は帳尻合わせの如く愛想笑いをした後、礼を言う。

それを受け『仕方ないなぁ』と言わんばかりに実莉が苦笑を浮かべる中、咄嗟に背後に隠したステッキが再びマッチ棒程の形状になったのを手の平越しに感知するとショートパンツの後ろポケットに右手を入れるフリをしながらも誤って落としてしまわない事を心掛けつつ押し込む様にして収めたのだった。


「そう言えばお姉ちゃん、さっき家の外で男の人の声が聞こえたんだけど・・・。」

「ああ、智史だよ。家の前まで送ってくれたんだ。」

「ふ~ん、そうなんだ。」


『メルシールー』に関連した事柄を伏せるべく実季は敢えて抽象的な返答をすると実莉は至って普通の相槌を打つ。


「実莉、もしかして羨ましかった?」

「いや、別に。」


今のリアクションを受け年齢的に『そう言った事柄』に興味を持ち始めたのだと判断した実季は面白半分に核心に迫ろうとするも実莉は相変わらずどちらとも付かない返答に留めるのだった。


「ふふふ。そんな事言ってぇ、もしかしたら実莉も何時か良い感じの関係になるかもよ?一史くんと。」


見ようによっては素っ気ない受け止め方を示している様にも感じられる実莉の振る舞いを客観視した上でその行為が照れ臭さから生じての事だと判断した実季は試しに智史の弟である一史を引き合いに微笑交じりに『(きた)るべき日が()るであろう』と諭す。


「あたしと一史がぁ?まさか、有り得ないよ。」


すると眉を(ひそ)めその線について否定した実莉は先の言葉を前置きとして実季へ向け自らの所感を述べ始める。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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