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Made for You  作者: 依代 蓮
Stand by You
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8/9

Stand by You③

臨海学校が始まる———

 約二時間後。

 バスは海沿いの施設へと到着した。


 扉が開くと、潮風が一気に流れ込む。


「うわ、海だ!」


「めっちゃきれい!」


 生徒たちが次々と降りていく。

 悠もゆっくりとバスを降りた。


 目の前には、どこまでも続く青い海。

 白い波が砂浜を撫で、夏の日差しを反射してきらきらと輝いていた。

 そんな景色を見ても、不思議と胸は高鳴らなかった。



「クラスごとに並んで点呼なー」


 教師の声が飛ぶ。

 荷物を持ち、クラスの列へ向かう。


 開校式を終え、グループごとに集まることに。


 生徒たちがそれぞれ移動し始める。

 悠も静かにCグループへ向かった。


 周囲を見渡す。

 知っている顔はほとんどいない。

 同じクラスからも数人だけだった。


 少しだけ肩の力が抜ける。


 宮本たちはいない。

 それだけで十分だった。


 教師が点呼を始める。


「呼ばれたら返事してくれー」


「新田」


「はい」


「真野」


「はい」


 淡々と続く。


「夜野」


「はい」


 少し離れた場所から、澄んだ声が返ってきた。

 悠は声のほうを振り返る。


 どこかで聞いたような声。


 そんな気がした。


 気のせいだと考え、すぐに視線を戻した。

 ——————————————————————————————————————————————

 Cグループの生徒が浅瀬へ集められる。

 波は膝ほどの高さしかない。


 教師が前へ立った。


「今日は海に慣れるのが目的だ。あそこの浮きまでなら自由に泳いでいいぞ」


 生徒たちが続々とゆっくり海へ入っていく。


 悠もそれに続く。


 水は思っていたより冷たい。


 足が砂浜から離れ、体が浮く。

 太ももで水を挟んで、押し出す。

 水を撫でるように腕を回し、胸の前で合掌。


 それを繰り返すのが、不思議と楽しかった。

 ——————————————————————————————————————————————

 初日の実習は、思っていたよりもあっけなく終わった。

 教師の笛に合わせて泳ぎ、休憩し、また泳ぐ。


 気づけば日も落ちていた。


 グループが違うので、宮本らと顔を合わせることは一度もなかった。

 そのせいか、不思議と肩の力が抜けていた。


 逃げているだけなのかもしれない。

 それでも今は、それで良いんだと思えた。


 宿舎へ戻ると、部屋割りが貼り出されていた。

 悠は自分の名前を探す。


 201号室。

 その下には、四人の名前が並んでいた。


 小杉。

 西野。

 村田。

 そして、悠。


 全員違うクラスの人だった。

 胸の奥で、小さく息をつく。

 ——————————————————————————————————————————————

 部屋の引き戸を開ける。


「お、よろしくー」


 先に来ていた男子が軽く手を挙げた。


「荷物そこ空いてるよ」


「ありがとう」


 言葉はそれだけ。


 三人はすぐにスマホを見たり、ベッドへ寝転んだり、それぞれ好きに過ごし始めた。


 無理に話しかけてくることもない。

 だからといって、露骨によそよそしいわけでもない。


 その距離感が、不思議と心地よかった。


「風呂行くやつー?」


「行こ行こ」


「悠も行く?」


 一瞬だけ視線が集まる。


「夕飯の後に入るわー」


「りょー」


 三人は特に気にする様子もなく部屋を出ていった。


 静かになった部屋で、悠は窓を開ける。

 潮風がカーテンを揺らした。


 今日は一度も宮本と顔を合わせていない。

 それだけで、こんなにも心が軽い。


 逃げているだけなのは分かっている。


 それでも。

 今だけは。

 この二泊三日くらいは。

 この平穏な日々を。


 何も考えずに過ごしたかった————

100ビュー超えました!!いいんですか!?

めっちゃ嬉しいです!!

感想とかあったら是非是非書いていってください!!!

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