Stand by You④
臨海学校初日。活動を終えた悠は部屋で過ごしていた———
三人が部屋を出ていったあとも、悠はしばらく窓際に立っていた。
夕焼けが海を橙色に染めている。
遠くから波の音が聞こえた。
学校では、誰かの笑い声が聞こえるだけで胸が締め付けられた。
でもここには、それがない。
宮本もいない。
誰かの顔色を窺う必要もない。
たったそれだけのことが、こんなにも心を軽くするなんて思わなかった。
コンコン。
「悠ー? まだいる?」
村田が顔を覗かせる。
「飯始まるって。折角だし一緒に食べようぜ」
「わかった。今行く」
部屋を出る。
食堂には学年中の生徒が集まっていた。
「これうまっ!」
「ご飯おかわり行こうぜ!」
あちこちで笑い声が上がる。
悠の席も、それぞれのグループやクラスの話で盛り上がってる。
「なあ知ってるか?」
C組の小杉が話し始める。
「A組の宮本がC組の夜野に告るんだって!」
村田が反応する。
「夜野…ってあれだよな。体育祭の時に5人くらいから告られたけど全員振った」
西野も乗っかる。
「先輩からも告られたんだろ?」
「そうそう。けど宮本もかっこいいとかって結構有名じゃん」
悠の肩がびくっとなる。
「まあ顔かっこいいもんな」
「僻みかよ、西野」
茶化す悠。
「そんなんじゃねえし」
笑いが起こる。
「なんか今夜海岸で告るらしいわ」
「どっちも人気者だしお似合いかもな」
「とうそらカップル成立かー」
小杉の発言に悠が問う。
「とうそら?」
「宮本斗真の"とう”と夜野天の”そら”」
そら。
その二文字が耳に入った瞬間。
悠の心臓の鼓動が、早くなるのを感じた。
でも。
まさか。
そんな偶然あるわけがない。
頭では否定しているのに、その名前だけが妙に引っ掛かった。
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夕食も終わり、消灯までは少し時間があった。
「次ババ抜き負けたやつジュースおごりな!」
村田の提案で場に緊張が走る。
最初に一番多かった小杉の手札を悠が引くところから始まった。
早速ジョーカー。
一番右に配置する。
6枚ある悠の手札の左端を村田が取った。
揃った。残り3枚。
ゲームは順調に進んだが、ジョーカーは動かない。
2枚残った悠のカードを村田が引く。
ジョーカーは、動かなかった。
「流石にお金は出すわー。俺コーラで」
「じゃあ缶コーヒー」
「スポドリで」
3人の期待と小銭を片手に外へ出た。
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夜の海沿いは7月とはいえ、半袖には寒い。
自販機のある宿舎の裏手。
少ない街灯が海岸を照らしていた。
潮風が心地よく吹き抜ける。
一人の男子生徒が砂浜に立ってるのを見かける。
宮本だ———




