Stand by You①
You Mayへ行った翌日—————
次の日。
教室へ入ると、いつものように笑い声が響いていた。
宮本が中心で話している。
「昨日の猫ミームおもろすぎだろ!久々に笑ったわ」
周りも宮本に言葉を返す。
悠は黙って席へ向かった。
一瞬だけ宮本と目が合う。
宮本は何も言わず、近くの坂本へと体を向けた。
「でさー」
話は何事もなかったように続く。
それだけだった。
それだけなのに。
"話しかけるな。"
そう言われた気がした。
その空気は、すぐに周りへ伝わる。
誰も露骨には避けない。
でも。
誰も近づいてこない。
宮本の輪へ入っていく方が、
教室では自然だから。
誰も責められない。
だからこそ苦しかった。
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数日後の昼休み。
「購買行こー」
宮本が立ち上がる。
「ちょっと待ってー」
「おい、早く行かないと日替わりパンなくなるって」
宮本の周りに人が集まる。
浜も立ち上がる。
一個前の悠の席を通る時、一瞬だけ悠に視線を向けた。
目が合った。
何か言いたそうに口を開く。
「浜ー。行くぞー」
宮本が呼ぶ。
「あ……うん。今行く!」
浜はそのまま歩き出した。
悠だけが、一人だ。
窓の外からの運動部の声が、やけに耳に響いた。
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それから何度か同じような日を過ごした。
一日。
また一日。
誰も悪口は言わない。
机に落書きもされない。
物がなくなることもない。
ただ、
自分だけが、教室という輪の外側にいる。
そんな毎日だった。
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帰り道、見慣れた看板を見つける。
気づけば足は店へ向かっていた。
カラン。
「おかえりなさい、悠くん」
「ただいま」
思わずそう返してしまう。
一瞬きょとんとした天が笑って、
「おかえり」
と返した。
ある日は学校の話をした。
「今日、英語の小テスト返ってきたんですよ」
「どうだった?」
「78点」
「おっ、高いじゃん」
「平均が79点…」
「あー惜しい!」
「めちゃ悔しい」
「てか平均鬼高いね」
またある日は、
「店長にまた怒られちゃった」
「天さんでも怒られるんですね」
「そりゃ怒られるよ」
「何したんですか」
「砂糖と塩を間違えちゃって」
「そんなベタな失敗ってあるんだ…」
「ひどい!」
二人で笑う。
「最近、笑う回数増えたね」
「え?」
「最初に来た日は全然笑わなかったもん」
悠は照れくさそうにアイスコーヒーへ視線を落とした。
言われるまで、自分では気づいていなかった。
気付けば、この店では自然に笑えるようになっていた。
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天の言葉を、すぐに信じられたわけじゃない。
教室へ入るのは、相変わらず怖い。
宮本を見ると、胸が苦しくなる。
みんなの笑い声が、自分の悪口に聞こえる日もある。
それでも
"失敗した自分だけが、自分じゃない。"
毎日自然と思い出すこの言葉が、
教室に入る勇気をくれた。
それだけで十分だった。
まだ笑えなくてもいい。
まだ輪に入れなくてもいい。
今日も学校へ来られた。
それだけで昨日の自分より前へ進めている。
少しずつでいい。
そう思えるようになっていた。
教室の空気は相変わらずだった。
少しだけ変わったのは、教室へ向かう自分の足だった。
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ある日。
担任が教室へ入ってくるなり、手を叩いた。
「はーい、静かにー」
ざわついていた教室が少しずつ落ち着く。
なんだなんだと担任に視線が集まる。
「来月の臨海学校について説明するぞー」
夏は、もうすぐそこまで来ていた。
そしてその夏が、
悠の世界を少しずつ変えていくことを、悠はまだ知らない———————
いよいよ臨海編!悠と天が変わっていく様を乞うご期待!!




