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Made for You  作者: 依代 蓮
Stand by You
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6/9

Stand by You①

You Mayへ行った翌日—————

 次の日。


 教室へ入ると、いつものように笑い声が響いていた。

 宮本が中心で話している。


「昨日の猫ミームおもろすぎだろ!久々に笑ったわ」


 周りも宮本に言葉を返す。


 悠は黙って席へ向かった。


 一瞬だけ宮本と目が合う。

 宮本は何も言わず、近くの坂本へと体を向けた。


「でさー」


 話は何事もなかったように続く。


 それだけだった。

 それだけなのに。


 "話しかけるな。"


 そう言われた気がした。


 その空気は、すぐに周りへ伝わる。

 誰も露骨には避けない。


 でも。


 誰も近づいてこない。


 宮本の輪へ入っていく方が、

 教室では自然だから。


 誰も責められない。


 だからこそ苦しかった。


 ——————————————————————————————————————————————


 数日後の昼休み。


「購買行こー」


 宮本が立ち上がる。


「ちょっと待ってー」


「おい、早く行かないと日替わりパンなくなるって」


 宮本の周りに人が集まる。

 浜も立ち上がる。


 一個前の悠の席を通る時、一瞬だけ悠に視線を向けた。


 目が合った。

 何か言いたそうに口を開く。


「浜ー。行くぞー」


 宮本が呼ぶ。


「あ……うん。今行く!」


 浜はそのまま歩き出した。

 悠だけが、一人だ。


 窓の外からの運動部の声が、やけに耳に響いた。

 ——————————————————————————————————————————————

 それから何度か同じような日を過ごした。


 一日。

 また一日。


 誰も悪口は言わない。

 机に落書きもされない。

 物がなくなることもない。


 ただ、


 自分だけが、教室という輪の外側にいる。

 そんな毎日だった。

 ——————————————————————————————————————————————

 帰り道、見慣れた看板を見つける。


 気づけば足は店へ向かっていた。


 カラン。


「おかえりなさい、悠くん」


「ただいま」


 思わずそう返してしまう。

 一瞬きょとんとした天が笑って、


「おかえり」


 と返した。


 ある日は学校の話をした。


「今日、英語の小テスト返ってきたんですよ」


「どうだった?」


「78点」


「おっ、高いじゃん」


「平均が79点…」


「あー惜しい!」


「めちゃ悔しい」


「てか平均鬼高いね」


 またある日は、


「店長にまた怒られちゃった」


「天さんでも怒られるんですね」


「そりゃ怒られるよ」


「何したんですか」


「砂糖と塩を間違えちゃって」


「そんなベタな失敗ってあるんだ…」


「ひどい!」


 二人で笑う。


「最近、笑う回数増えたね」


「え?」


「最初に来た日は全然笑わなかったもん」


 悠は照れくさそうにアイスコーヒーへ視線を落とした。

 言われるまで、自分では気づいていなかった。


 気付けば、この店では自然に笑えるようになっていた。

 ——————————————————————————————————————————————

 天の言葉を、すぐに信じられたわけじゃない。


 教室へ入るのは、相変わらず怖い。

 宮本を見ると、胸が苦しくなる。

 みんなの笑い声が、自分の悪口に聞こえる日もある。


 それでも


 "失敗した自分だけが、自分じゃない。"


 毎日自然と思い出すこの言葉が、

 教室に入る勇気をくれた。

 それだけで十分だった。


 まだ笑えなくてもいい。

 まだ輪に入れなくてもいい。

 今日も学校へ来られた。

 それだけで昨日の自分より前へ進めている。

 少しずつでいい。

 そう思えるようになっていた。


 教室の空気は相変わらずだった。

 少しだけ変わったのは、教室へ向かう自分の足だった。

 ——————————————————————————————————————————————

 ある日。


 担任が教室へ入ってくるなり、手を叩いた。


「はーい、静かにー」


 ざわついていた教室が少しずつ落ち着く。

 なんだなんだと担任に視線が集まる。


「来月の臨海学校について説明するぞー」


 夏は、もうすぐそこまで来ていた。

 そしてその夏が、

 悠の世界を少しずつ変えていくことを、悠はまだ知らない———————

いよいよ臨海編!悠と天が変わっていく様を乞うご期待!!

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