第七話 ジャスくん覚醒
鍛冶屋というか研ぎ専門の職人のところに行く。
まずは鍛冶屋組合というかギルドに行って受付に紹介状を渡す。
受付嬢だ。
受付嬢は存在した!
異世界に!
俺と目が合った瞬間、受付嬢がガタッと立ち上がる。
「ひい!」
やはり怖がられた。
しょぼーん。
「まこちん……ハグして」
「叩くよ」
スパーン。
「ふええええん。手つないで」
「もー、しかたないな!」
手をつないでくれた。
「あの……チンピラにしか見えないけど、人畜無害なんで。怖がらないでください」
ぴきゅーぴきゅーぴきゅー。
ぼく悪いチンピラじゃないよ。
「は、はあ、それでなにか?」
「これを研いでで欲しいのですが」
手つなぎ終了。
ぴきゅう。
「あの……あの方、竜族ですよね? 一緒にいて大丈夫なんですか?」
「いえ人間ですけど。ねえジャスくん。キミ人間だよね」
「人間だよ? ……やめてよまこちん。俺まで魔王とかいう変態にしないで!」
佐左ヱ門どもを見てたらわかるでしょが。
俺はあんな不思議な生物じゃない。
「だよね。それで研ぎ専門の工房とかは?」
「なるほど東方の武器ですか。ならば専門の工房がございます。ご案内いたします」
お姉さんについて行く。
ふんどし半ケツ、金太郎シャツの着物集団が作業してた。
チョンマゲじゃないけどトラディショナルジャパン。
「神殿のお客様です。こちらの刀を研いで欲しいと」
「おう、見せてみろ」
ケツの汚いおっさんがまこちんの刀を受け取った。
「おめえさん、斬りてえのか飾りてえのか選びな」
ぶっきらぼうであるが「武器として使うのか」それとも「美術品として飾るのか」選べって話だ。
「もちろん武器としてお願いします」
「うん。7日待て。先にこいつを研ぐ石を仕入れにゃならん」
なんだか信用できそうなおっさんである。
ケツ汚いけど。
ケツも火傷の跡か……。
腕も凄え。
「なに見てやがんだ」
「名誉の傷だなと」
すると無言で背中を叩かれた。
「ボウズども、生きて戻ってこいよ」
「ウス」
「ついでにおめえの剣も研いでやる」
お高い剣を渡す。
そうなると一週間、暇になった。
まこちんとデートでもしようかな。
「まこちん、遊びに行こう」
目をキラキラさせる。
きゅーん。
「帰るぞ」
「きゅきゅきゅきゅーん!」
「うるさい! なにも買わないからね!」
「くーん……」
ということで神殿に帰る。
せっかくおいたんがお小遣いくれたのに。
暇になってしまった。
まこちんは女性神官さんに捕まったようだ。
服を作るんだって。
野郎は既製品でいいわけよ。
はっはっは!
というわけで学校に行く。
「おっちゃん、こんちゃーっす」
「うむ」
「はい屋台で買ってきたパンと串焼き」
「うむ!」
「オーク三人衆もほれ」
アダムのおっさんと一緒にいたオーク先輩どもにも串焼きとパンを渡す。
「ありがとうよ~!」
「ねえねえ、おっちゃん。剣研ぎに出したんだけどさ~。そもそも佐左ヱ門に勝てる気がしないんだけどさー。なんかいい手ない?」
「なんだボウズ。ブレスを吐けぬのか?」
「だって俺人間だよ」
「見た目は人間だが神竜の使徒、つまりお前はドラゴンだ。ドラゴンはブレスを吐けるものだ」
「どうやって~?」
「そうだな。あの辺を見ながら口を大きく開けて『焼き尽くせ』と言ってみろ」
アダムのおっさんがロッカーを指さす。
「んが」
かぱんと口を大きく開けて。
えっと『焼き尽くせ!』。
「あんぎゃああああああああああああああああああああ!」
ぼーんっと稲妻みたいなのが放出された。
ロッカーが粉々になった。
「お、おう……」
「できただろ。食わぬのならもらうぞ」
アダムのおっさんが俺の分の串焼きを見る。
「どーぞ」
俺はもう食欲どころじゃない。
ビームまで出せるようになったぞ。
「ためしに撃ってみよ。どうせ動けんのだろ?」
「ういー了解」
行ってみるか。
例のアホどもは家庭科室前でつっかえていた。
「は、ハロー!」
佐左ヱ門は青いエプロンのポケットに手を突っ込む。
「裏家庭部奥義! パイナップルグレネード!」
「っどわあああああああああああああああああ! 『爆ぜろ!』」
あんぎゃあああああああああああああああああッ!
と口から怪光線。
パイナポーグレネードごと爆発させる。
「ぬうううううううううん!」
校舎の廊下が崩壊。
佐左ヱ門と変態どもは下の中庭に降りた。
「我は魔王佐左ヱ門! いざ尋常に勝負!」
ババッと構える。
俺もナイフを出す。
「裏料理部、暗黒家政術奥義! オムライスデスティニーレボリューション!」
技名から動きがまったく予想できない。
それはオムライスと化した佐左ヱ門がサイ●スラッシャーアタックで突っ込んできた。
俺は佐左ヱ門にブレスを浴びせる。
あんぎゃあああああああああああああああああ!
ちゅどーんと音がして佐左ヱ門が墜落。
地面に突き刺さった。
「さ、佐左ヱ門どの~!」
もう一人の変態、蛇京院スネアキが駆け寄る。
そしてその後ろにはもう一人の変態。
えっとガバガバなんとかがいた。
「ジャスくん、ガバメント幸田」
「ありがとパイセン」
ガバメント幸田が拳を握って構える。
「ミーは無呼吸で30分間連打でき」
「あんぎゃあああああああああああああああッ!」
ちゅどーん!
ガバガバが地面に突き刺さった。
「が、ガバメントどの~!」
「え、えめ」
それ以上言わせたら危険な気がするから「あんぎゃああああああああああああッ!」。
ちゅどーん。
学校の壁にめり込んだ。
なぜか時計台まで壊れてるがハズレだ。
俺は時間を止められるわけではない。
最後まで絵面が危険な男だった。
ふう……勝利とは常に虚しいものだ。
「ふむ、やればできるではないか。小竜よ」
アダムのおいたんが来た。
「お、俺、もう人間じゃないってことぉ!?」
「気がついておらなかったか」
「そ、そんな……俺はただ……高校で彼女見つけて、卒業したら東京に行ってテキトーな企業に入って30代で春日部あたりに家を買うのが理想だったのに……」
「ツッコミどころ満載だがそもそもうちの学校で彼女見つけるのが無理ゲーじゃね? なあ吉野?」
「だよなー松。鋤はどう思うよ?」
「だってうちの女子なんて暗殺拳の使い手ばかりだぜ!」
なぜ世界には聞いたこともない暗殺拳の使い手がゴロゴロしてるのだろうか?
そんな呆れる俺のところにとんっと人が降りてきた。
桃色ツインテールの女子だ。
「佐左ヱ門先輩たちを一撃とはね……あんた強いね」
俺はヒザをつき号泣する。
「新しい女子とお話ししてしまった!」
「え……あの……」
「あー。裏料理部の女子……あー貝原か? こいつかわいそうなヤツなんだよ。優しくしてやってくれる」
「うむ、たいへんな艱難辛苦を乗り越えて来た人生だったようである」
「あ、うん。ほら泣かないで。あたし貝原アマモ」
「あい……ぼく極道ジャスティスくん」
「よろ~♪ ほら立って」
立たされる。
「魔王候補どうしは惹かれ合う運命にあるのだな。うむうむ」
きゅーん。
「あー……戦おうと思ったけどかわいそうだからやめとくわ。化け物みたいに強いみたいだし」
「ぴきゅーぴきゅー」
「ふむ、我が友は『一緒に外に出る?』と聞いているぞ」
「あ、助かる。先輩たちが廊下につっかえててお風呂も入れなかったし」
「我も外に出ることを許そう」
「し、師匠! 俺らは?」
「ダメである!」
「ぴえーん!」
牛丼三兄弟は再びダンジョンの中。
なおノベルト・バーンシュタイン・ド・シャンティーであるが。
「やれやれだぜ」
ドドドドドドドド……。
俺は何も見なかったし聞かなかった。
時間止めそうなヤツは見てないし知らん!
魔王でもなんでも好きにしろ!
ばーか! ばーか!
アマモたんと外に出る。
外に出ると神殿のおいたんとまこちんがいた。
「あ、やっぱり! バカぁ! 一人でダンジョンに入って……って誰?」
アマモたんを見て驚く。
「ダーリンの嫁のアマモです♪ ヨロ~♪」
ピキ。
うん?
なんの音?
「ジャスくん……その娘なに?」
「ええ~。あなたこそ誰ぇ~。彼ピとのイチャイチャを邪魔するつもり~♪」
「あ? てめえ喧嘩売ってんのか?」
まこちんの額にビキビキと血管が浮き上がる。
目がつり上がってて口調がヤンキーになってる。
「あっれ~。ジャスくんのこと好きなんですか~♪」
「ちょっとそこで決着つけようかコラァッ!」
すると神殿のおいたんがつぶやいた。
「サキュバスですな」
「はい?」
サキュバスってあの漢の夢的なやつ?




