第五話 牛丼三人衆
学校に行く前に神殿から武器を貸してもらった。
「ジャスくんはどういう武器使えるの?」
まちこんに言われた俺は小さな声を出す。
「ドスとだんぴらと……あと不法入国の外国人に教わったナイフにでしょ、剣でしょ、チェーンにメリケンサックにあと割れた瓶!」
「だいたいなんでも使えるのはわかった」
というわけで神殿の騎士が使う剣を借りた。
片手剣で全長70~80㎝くらい。
二、三分は振り続けられると思う。
全力だと一分くらい。
門から昇降口に入るとアダムのおっさんがいた。
「おいっす!」
「うむ、神竜の使徒か」
相変わらずグロい乳首に指輪みたいなピアスをしてる。
どんな変態プレイを繰り返せばこうなるのだろうか?
だが今回、対策は完璧だ。
「アダムさん、これお土産」
神殿に用意してもらったお酒を渡す。
賄賂……それは人間関係を潤滑にする秘訣。
「……ふむ、貴様わかっておるな」
「通っていいっすか?」
「いいぞいいぞ。友よ」
はっはっは。
賄賂!
賄賂こそ最強!
ということで中を探索。
ゴブリン発見。
後ろから剣で斬りかかろうとしたらバレた。
「や、やめろ! 殺すな! こ、こんな姿だが、俺は一年の安藤だ!」
「あん? なんで外に出ないのよ?」
「乳首のデカいおっさんが外に出してくれねえんだよ!」
もしかしておっさん、ダンジョンからモンスターを出さない役目かな?
聞いてこよう。
安藤を連れて昇降口へ。
「ねえねえ、アダムのおっさん。なんでこいつ外に出さないの?」
「雑魚だからだ」
「安藤、お前雑魚だから外出たらダメだって」
「魔王の器でなければ外に出さぬ」
「だって」
「ひでえよ! もうお腹がすいてよ! お腹がすいてよ……だから同じクラスのヤツを」
目の色が変わった瞬間、殺気がぶつけられる。
「肉ううううううううううううう!」
それと同時に俺は安藤の首をはねた。
この剣鋭いね。
骨か腱で引っかかってもう一度ぶち込む羽目になると思ったのに。
安藤の残骸が光り石が残された。
「魔石だ。持っていくがよい」
アダムのおっちゃんが石をくれた。
「なるほど。そういうわけね」
つまりカスカードを整理してるわけね~。
「ジャスくん容赦ないね……」
「友人でも知り合いでもないし、攻撃してこようとしたら普通殺すよね?」
ここは日本国の刑法の範囲外だろうし。
「うむ、さすがは神竜のお気に入りである」
「アダムのおっちゃん、ものは出してもいい?」
「好きにせよ。我が頼まれたのはゴミモンスターの処理だけだ」
「あざっす! まこちん工具とケーブル出そうぜ」
「まずは倉庫にある台車だよ」
「了解」
勝手知ったる……というわけでもない入学初日しか知らない校舎を進む。
敵がいると考えると実質ダンジョンだ。
案内図を見ながら一階を進むとウンコ座りする三人組ヤンキーがいた。
頭が豚だ。
よし殺そう。
「死ね!」
「判断が速すぎる! ちょっとやめてくだストップ!」
「エルフレ●プしてそうなツラしやがって。喧嘩売ってんのかコラァ!」
「ちょっとジャスくん! なんでそんなに強火なの!?」
「わしゃあラノベ好きじゃからのう! こういう見た目のヤツはエルフレ●プするって相場が決まってんじゃ!」
「ひどすぎる!」
「てめえらのチ●コ切り落として和式便所に捨ててやらぁ!」
校舎にあるか知らねえけど。
「やーめーてー!」
「ジャスくん! ジャスくん! 会話、会話成立してる! 彼ら正気だよ!」
「そ、そうだ!そのおっぱいの言ってることは本当だ!」
まこちんの目が冷たく濁る。
「ジャスくん。やっぱり殺そう」
「やーめーてー! ぼくら悪いオークじゃないよ!」
「いいも悪いもあるか! あれは俺のおっぱいだ!」
げし!
まこちんに蹴られた。
「ぼくは誰のでもない!」
「あ、はい。てめえら謝れ! それで倉庫どこだかわかる?」
「運動部の?」
「そっちじゃなくて台車探してるんだわ」
「なに運ぶんだよ」
「オシロスコープでしょ、無線機でしょ、あとパソコンと関数電卓に……」
「あー、電卓なら職員室にたくさんあるぞ」
「なんで?」
「テストのたびに忘れるやつがいるからクラス一つ分ストックしてあるはず」
さすが最底辺学校……。
「あと発電機か?」
「ソーラーのパネルと蓄電池なら高橋が持ってるぞ」
「高橋?」
「電気の教師」
「もしかしてお前ら上級生」
「二年だ。つうかそんな気合の入った墨入れて一年かよ!」
「あたいの恥部を見ないで……」
「きもい!」
「それでさー、あと旋盤とCADソフトあれば外でも商売できそうなんだよね」
「いいなー。俺たち出られねえのに。悪いけど機械科じゃねえとわからねえわ」
「機械科に生き残りっている?」
「だいたい頭おかしくなっちまったぜ。アホから化け物になってくんだよ。ほら機械科って電気科より偏差値が残念……」
悲しい事実である。
「機械科が封印されてる北館あるだろ。俺たち怖くて近づけねえんだわ」
「なんで?」
「バカ! 機械科にはジャックがいるんだよ」
「誰?」
「ジャック・ピストン・ディックだ」
「ごめん。下ネタから離れてくれないかな? こっちには女の子がいるんだ」
本当にまこちん下ネタ嫌いなんだ。
帰ってくれないかな。
「本名なんだからしかたねえだろ! 裏ボクシング界をドーピングで追い出された男だ」
「裏なのにドーピング検査あるのぉ!?」
パパンの組でやってた地下闘技場ではみんな試合前にお薬キメてたよ。
ヤクザが忍者と戦う用のやつ。
そもそも裏ボクシングって聞いたことないんだけど。
ねえなにそれ?
「ぼくも聞いたことある。世界裏ボクシング協会……手業最強のボクシング」
まこちんも意味不明なこと言ってる。
「ねえねえ、まこちん。世界規模の団体だったらそれ裏じゃなくね?」
「裏ボクシング恐るべし!」
聞いてくれない。
とにかく魔王候補、変態の一人だろう。
「だが工作機械は北館に……」
「いまのところはあきらめるしかないか」
「そうだね」
「じゃ電卓だけでも」
工業化の職員室に押し入り関数電卓を奪っていく。
おっとタブレットもたくさんある。
教師所有のソーラーパネルと蓄電池も。
「おい……ジャスくん。炊飯器があるぞ」
「なん……だと!」
炊飯器!
……待てよ。
「ブー太郎パイセン! 米は! 米はあるですか!?」
「適当な名前つけんな! 俺は吉野、そっちは松、そっちの眼鏡は鋤だ」
なるほど。
牛丼三人衆か。
「とにかくだ。家庭科室の冷凍庫に米は備蓄されてるはずだ。だがあそこには裏料理部がいるはずだ」
「裏料理ってなんだよ……」
「裏料理だと!」
「知ってるの!? まこちん!」
「ああ、伝説の暗殺拳だ。古代中国で皇帝を守護する料理人が編み出した武術と言われている」
「ねえねえ、このクソ学校。俺ってまだまともな方なんじゃね?」
ヤクザの息子ってだけだ。
俺はまだ常識の範疇の生き物だ。
おかしいだろ。
「そこの部長、三年の佐左ヱ門がいるはずだ」
「名前がギリギリなのは仕様か?」
「頭がテカテカしてる」
「やめろお前」
「く、裏料理部がいるとなると家庭科室攻略も難しいな……」
まこちんが焦った顔をする。
「ぼく、まこちんだけは変態の手先じゃないと思ってたよ」
「話し合いでどうにかならないの?」
すると牛丼三人衆は真面目な顔をする。
「俺たちは近づいただけで攻撃対象だ」
「もう二日もなにも食べてねえよ」
「はらへった……」
「神殿がくれたパン食う?」
神殿の弁当を差し出すと奪われた。
非常にマナーのなってない様子で先を争うように食べやがった。
「う、うう……うまい……」
「きっとこれが俺たちの最期の飯なんだ……」
「悲しいこと言うなよ!」
なんかかわいそうになってきた。
「またメシ持ってきてやるよ」
「うわあああああああああん! ありがとう!」
ということで俺らのパーティーに牛丼三人衆が加わったわけである。




