第二話 偽典・便器転生
「どうする?」
まこちんを無視してそそっと近づいて喉をカッ切る。
アメリカの刑務所スタイルだ。
緑色の血か。
やはり人間じゃねえな。
持ってるのは剣。
外国人マフィアが持ってるやつと似てる。
「まこちん、この剣使う?」
「いらない」
「んじゃ俺が使うか」
正しい使い方なんて知らないけどね。
殺したのはたぶんゴブリンかな。ファンタジー的に。
そいつの服でナイフの血を拭いて折りたたんでポケット入れる。
剣の善し悪しは正直わからん。
ただ研がないといけないのはわかる。
刃がボロボロだ。
「ジャスくん弱いって嘘でしょ?」
「弱いよ。喧嘩だったら生首になった三人衆よりはるかに弱いし」
「でも三人衆が勝てなかったゴブリン倒したじゃん」
「そりゃ奇襲だからね。それに何匹もいたんでしょ?」
「うん」
「それじゃ無理だよ。数が多い方が強い」
暴力は数だ。
僕が百人いれば三年生の変態拳法家にも勝てるかもしれない。
とにかく俺に殺されるようなカスでも百体集めれば三人衆くらいなら余裕だろう。
二人でコソコソ歩いて行く。
便所で金髪がボリボリ食われてた。
緑色のゴブリンはなぜか制服を着てる。
「俺はああああああああああああ! 魔王になるぞおおおおおおおおおお!」
「うるせえ!」
背中から斬りかかる。
一撃必殺?
知らねえ言葉だな!
何度も何度も斬りかかる。
ピクピクしてるから突き刺した。
さらに片手でバタフライナイフを抜いて展開。
首の後ろ、急所を刺しまくる。
さらに腰の後ろ。腎臓を突き刺すと動かなくなった。
「ふへー疲れた」
「ジャスくん後ろ!」
便所の扉が吹っ飛んで、中から大きなゴブリンが現われた。
そのゴブリンは破れた芋ジャージにシャツを着ていた。
魔法の電車少女レイルウェイだ。
女児アニメに詳しくない俺はよく知らない。
「しゅっしゅぽっぽ」
魔法少女のシャツが極限まで伸びてる。
「ちょ、待て! お前生徒か!?」
ってことは俺が殺したのも……。
「しゅっっしゅぽっぽー!」
がんっと殴られた。
ストレートでもフックでもない。
ただ振り上げた拳を叩きつけられた。
だというのに俺は小便器までぶっ飛ばされた。
便器が割れて俺の背中に突き刺さった。
「オデ、魔王ニナル」
地獄にいるお父様お母様。
ジャスティスもそろそろそちらに行くと思います。
できれば死ぬ前に一度くらいおっぱいをもみたい人生でございました。
……。
……。
「……おっぱい!」
背中の痛みで飛び起きた。
目の前には緑色のデブ。
どうやら意識が飛んだのは一瞬だけだったようだ。
おっぱいいてすごい!
「ジャスくん!」
「おっぱい!」
「……生きてるみたいだね」
ゴミを見えるような目を向けるな。
口の中を切ったようだ。
さっきから鉄臭い。
ぼく……ああ、もういい子やめよ。
俺は両手で拳銃を構える。
体の中心に構えて……。
「死ねコラァ!」
全弾撃ちつくす。
残弾?
知らねえよボケ!
「ぽっぽー!」
デブが悲鳴を上げた。
あ、クソ、貫通しねえ!
すかさず落とした剣を拾って斬りかかる。
「死ね! このカス!」
肩口に剣を振り下ろす。
ブシュッと刺さったが抜けない。
「てめえ! クソ!」
蹴って剣を抜こうとするが肉が固くなって取れない。
「しゅっぽっぽ」
首をつかまれた。
そのまま持ち上げられる。
「てめえ離せコラ!」
指を逆に曲げてやるとつかんだが、ビクともしない。
そのときだった。
「ジャスくん!」
まこちんが刀を抜いた。
いままで生きてるものを斬るのに躊躇してたっぽいのにね。
がんばれー!
「きえええええええええええい!」
あ、巻き藁切ったことある動きだわ。
畳斬りもいける口か。
俺が斬りかかった方からお手本みたいに胸まで斬り裂いた。
「グレイト」
「お、おでは、ま、まおうに……」
がくんとデブが倒れた。
「ふう……」
「まこちん、まこちん」
「なんだいジャスくん」
「お胸のボタンが外れて……その……」
たわわなお胸の谷間が見えてる。
まこちんは女の子だったようだ。
「……ジャスくん。そういう目で見ないでくれないかな!」
「ごめんよう……ごめんよう……男の子の本能なんじゃ……」
「それより背中の傷見せて」
そう言って制服をまくられる。
あ、らめ!
「怪我はなさそうだけど……すごい入れ墨」
……おかしいな。
便器が刺さった感じがあったんだけど。
それと背中の昇り竜である。
キングギ●ラ的なアレだ。
「す、好きで入れたんじゃないもん! バ●の最強トーナメント見た親父にネズミー遊園地連れてってやるって言われて喜んでたら食い物にケタミン仕込まれてて起きたらこんな感じに……死ぬほど痛くて夜も眠れなくて泣いてたらケタミンで強制的に眠らされて……。しかも後日連れて行かれたのは西●園だったんだ……」
「君の家は地獄かな!? 児童相談所には相談しなかったのか?」
「県知事暗殺しようとする武闘派ヤクザだから、学校も警察も児童相談所も裁判所もスルーしたんだもん! 俺はただのオタクなのに……」
ひーん!
こんな人生嫌じゃ!
「こんな学校来たくなかったんじゃー! 中卒で声優の養成所入りたかったんじゃー!」
モテたかったんじゃー!
いやモテなくてもいい!
せめて……女の子とお話ししたかったんじゃー!
女の子に目をそらされて、二人きりになると震えられる人生は嫌じゃー!
嗚呼……おっぱいをもみたい人生であった。
おっぱい……おっぱい?
「まこちん、まこちん」
「なにその顔」
土下座。
「我が輩を哀れと思うなら、おっぱいを! おっぱいをもませてくださいでゴワス!」
「死ねバカ!」
ちぇ。
土下座じゃだめだったか。
「いいから立って。入り口に向かおう」
「はーい」
拳銃は……誰か弾持ってるかもしれない。
なにせ伝説の暗殺拳の使い手がいるくらいだしな。
職員室あたりにありそうな気がする。
没収されたヤツ。
なんて考えてるとまこちんが話しかけてくる。
「ところでさナイフはどこで習ったの?」
「不法滞在の外国人に教わったんだ。ほら彼ら、彼ら生まれたときからナイフ使う生活だし」
「剣道とかは?」
「入れ墨入れてると誰も教えてくれないんだ……不思議だよね」
「総合格闘技とかは?」
「俺が殴り合いみたいな野蛮なスポーツに耐えられるとでも?」
「好きそうだけど……」
「ぜったいにノン! ミーは殴られるの嫌デス! 後ろからナイフで刺す、これが正義」
「誰かな。こんな危険人物学校に入れたヤツ!」
「家庭裁判所」
「お、おう……」
世界って不思議なワンダー。
うふふ。めぐりめぐって人生が壊れていく。




