第十六話 金銀銅貨って分けられないよね
いかにもRPG風の城に案内される。
頭の悪そうな作りだ。
土木や建築科のやつがいたらグーで殴りつけられただろう。
柱も入ってねえ石造りで高い建物作るな。
中の玉座に通される。
王様はヒゲのおっさんかと思ったら痩せて暗そうな男だった。
なんか床に座らされたので正座する。
小さなころはひたすら正座させられたものだ……。
いま考えると虐待だよね?
両親死んでよかった!
王様はボソボソと何か言った。
聞こえない。
「国王陛下は『そなたが神竜の使徒か?』と仰られました」
なぜか代わりに横にいた人が通訳してくれた。
「自分ではわかりません!」
そう言われただけで自分が神竜の使徒という自覚はない。
またボソボソと王様が何か言った。
「『ところで、そこの美しい女性は誰かな』と陛下は仰られてます」
「どの女性?」
美しいのはまこちんでしょ、伊予たんでしょ。
咲夜たんとアマモたんはかわいい系か。
でもかわいい系も美しいわけで。
誰だ?
「やだー、もう陛下ったら♪」
アマモたんは自分のことだと思ってるようだ。
クネクネしてる。
国王がボソボソ喋る。
「『黙れツルペタ。そこのボーイッシュ巨乳ちゃんだ』と陛下は仰られてます」
まこちんだった。
まこちんはおずおずと挨拶する。
まー、まこちんったら、おすましして!
「し、新城真琴です」
そのとき俺は見てしまったアマモたんに対して勝ち誇るまこちんの笑顔を。
「あ、てめえ! やんのかこらああああああああああああ! てめえら二人ともぶち殺してやらああああああああああッ!」
とりあえずアマモたんを捕獲。
で、本題の魔石を渡して逃げるように玉座の間を後にする。
「『褒美は後で送る』と陛下は仰られてます」
「てめえふざけんな! ツルペタって言ったの謝罪しろ!」
「『せいぜい強く生きろツルペタ。ぶぁーか』と陛下かは仰られてます」
「てめええええええええええええええええええッ!!!」
圧倒的レスバの強さを見せつけた王様。
一方、圧倒的レスバ弱者のアマモたん。
たぶん後ろの穴も弱いだろう。
というわけで魔石を納品して神殿に帰る。
「あのね、あーしね。いくらなんでもツルペタ呼ばわりは酷いと思うのよ!」
アマモたんがふえーんと泣く。
「よしよしアマモたん。アマモたんはかわいいと思うよ」
「ジャシュきゅん……しゅき……♡」
あーはいはい。
頭ぽんぽん。
「お姉様、ジャス様が取られそうですわ」
「伊予よろしくて。あれは同情。恋愛フラグじゃありませんことよ。見なさい、あのジャス様のお顔……幼稚園のお遊戯会を見る親のような表情」
「うきいいいいいいいいいい!」
逆上したアマモたんが俺によじ登って髪を引っ張る。
ジャスくんのジャスくんが沈黙してるのそういうとこだと思うの。
ダラダラ休んでると王様の使いが来た。
偉そうである。
筋肉質のおっさんたちが大きな宝箱を持ってくる。
「国王陛下はたいへんお喜びである! 財貨をつかわす! これからも励め!」
言いたいこと言って使者が帰っていく。
残されたのは宝箱。
中を開けると宝箱いっぱいの金貨に銀貨。
……もしかしてこの世界、金や銀の量多くね?
「電子基板作り放題かも」
「ですよねー」
されど我らは電気科一年生。
ただの役立たずである。カナシイ。
「とりあえず箱を動かす……」
重くて動かせない。
ニコ……。女子に助けを求める。
「少しずつ出せば」
「その手があった!」
こういうときに牛丼三人衆がいれば便利なのに。
「こちらをどうぞ」
おいたんが袋を持ってきてくれた。
このゴワゴワした感じ……麻かな?
とにかくまずは金貨を入れて、重くなったら持っていってもらう。
金貨は三つで100グラムくらいある。
だいたい一キロくらいの重さ、だから三十枚ずつに分ける。
あとで数えよう。
銀貨は……って貨幣って言えるほどの出来じゃねえな。
なんか形が歪だ。
気泡だらけだし。
「ジャス様、銀貨は融点が千度近く湯流れも悪く気泡が入りやすいのです。なのでこういう形になってしまいます」
伊予たんが教えてくれた。
「ふへー……」
「おそらく金貨と銀貨の価値は同等かと。我々の世界でも、中世の終わりに銀山の開発で供給が増えるまで希少性が高い金属でしたわ。古代では金より希少で価値も高かったと言われてますわ」
「……待って、つまり金貨と銀貨が混ざってる意味は?」
「それは私から説明いたしましょう。買い物で使うのは銅貨。商人との大きな取引だと宝石や金貨も使えます。我々神殿が金貨や銀貨の両替を行っております。特に銀は我々が欲しているものにございます」
「魔除けだから?」
「その通りでございます」
「うわー! リアルな方のファンタジーだった!」
そうなのである。
楽しくない方のファンタジーである。
ちょうど十枚で両替ではなく重量と毎日変わるレートの方のファンタジーである。
「そういやおいたん、錬金術とかないの?」
「ございます、が、賢者の石は金など足元に及ばぬほど貴重ですからな。それこそ魔王級の魔石と同等かと。問題になりませぬ」
世知辛い……リアルファンタジーに夢はなさそうだ。
「この量でどれくらい暮らせる?」
「楽に十年ほどは暮らせるかと。とはいえ、国王陛下は投資の意図もあると存じます」
「投資?」
「ええ、使徒様や魔王様は世界の変革者。新しい技術や文化を持ち込むとされてます。その初期費用の投資でございましょう」
あのおっさん……ただものじゃないぞ……。
さすがアマモたんを貧乳あおりする漢。
王様だけあるってことか。
胆力だけじゃねえ……知能も俺たちバカとは大違いのようだ。
俺が感心してると女子たちは上目づかいになる。
「あのね、ジャスくん……アマモそろそろ赤ちゃん欲しいな♡」
「知り合って数日じゃん。生き急ぎすぎじゃね?」
「我々も戦闘準備完了です!」
「そうですわお姉様!」
そんな中、巨乳枠のまこちんが俺の腕を抱きしめる。
「ダメ」
はい、かわいい。
こういうのだぞ!
こういうのだぞアマモたん!
君に足りないのはこういう成分だぞ!
「ヒャッハー! 決着つけるぞマコトおおおおおおおおお!」
ね、ほら壊れたでしょ。
アマモたん、ジョジョ立ちすんな!
「邪知暴虐の巨乳に立ち向かう勇気!」
やかましいわ!




