十三話 これぞ慈恩流! 変態に引導を渡す慈恩姉妹!
タカとユージを倒した俺たちは南館に入る……。
やつらの魔石は大きかった。
うーん、魔王クラスっていうことだろうか。
持って行けないから中庭に置いとこ。
外に出られなきゃ持ってても意味ないし、これを売るには神殿の協力が必要だし。
俺たち以外にはただのゴミですな!
「え?」
そこは空間が歪んでいた。
どう考えても南館じゃない。
石壁のダンジョンだった。
「知らねえ場所だな。あーしの旧車どこだよ!」
アマモたんが壁を蹴る。
「まったくこれだから埼玉県民は……咲夜。我々のバイクを運び出しましょう」
「はい、お姉様」
「バイクってあの真っ赤なヤツ?」
アマモたんがお股押っ広げてウンコ座りする。
なぜだろうか……見えそうなのにジャスくんのジャスくんは未だ沈黙。
というか見せてやがるな。
そのドヤ顔にジャスくんのジャスくんは羊たちの沈黙。
「そうですわ埼玉県民」
伊予たんが答える。
なんというか……この二人……クソ真面目だな。
「どこに?」
で、こっちは真面目さの欠片もないサキュバス。
「どこにって学校の駐輪場のバイク置き場に……」
「駐輪場って南館の横だったよな……ダンジョンに飲み込まれてないか?」
伊予たんと咲夜たんの顔が真っ青になっていく。
「たいへんですわお姉様! 我々のバイクがSEEDの本拠地に!」
「さ、咲夜! どうにかしなければ!」
おほーい、南館の探索だぞぉ。
なんて思ったのがまずかった。
股間に像を書いたマッチョが一階の階段前にいた。
春日部人だ!
「象さん♪ 象さん♪」
「隠れろ!」
まずい!
葉っぱすらない。
全裸だ。
しかも靴と靴下だけは着用してる!
タカとユージは裸足だったのに!
「うほーい!」
眉毛のやたら濃い変態がソーセージをぶらぶらさせながらやってくる。
「ま、まさか! やつが出てくるなんて!」
「知ってるのかアマモたん!」
「神奈川SEED四天王、呪文高速詠唱のしんのすけだ!」
「あ、あの黄色い看板のラーメン屋の呪文高速詠唱! そ、そんなことが可能なのか!」
「うるさいですわ。黙ってくださいません!」
伊予たんに怒られた。
咲夜たんが「やーいやーい♡」とあおってきた。
「やあぼくジャスくん! ちょっとマゾだよ! ハッハー!」
股間に波紋疾走を感じながら、俺たちは息を殺してやつが通り過ぎるのを待つ。
変態は俺たちの隠れていた場所を通りすぎた。
「ふう、あれが神奈川……」
「どいつもこいつも全裸だ。神奈川県民に何があったんだよ!」
アマモたんが悪態をついた。
「あら埼玉県民。あなたも大差なくてよ」
伊予たんのツッコミ。
だがアマモたんには効果ない。
「わかるか慈恩のアホ姉妹。あーしのこれは美。あれは変態」
恐ろしいほどの自信である。
これほどの自己肯定感、見習いたいものである。
ビキニなのに!
なんて思ってると新たな変態が出現。
俺たちはまたもや隠れる。
「川の中に、石がある! 拾いに、いこ!」
「あ、あれは!」
「知ってるのかアマモたん!」
「SEEDの幹部、アブラ大量がけのボーだ」
まこちんはこのやりとりを冷たい目で見ていた。
一言も発せずひたすら冷たい目で見てた。
そんな目で見ないで!
「やあ! ぼくジャスくんのジャスくん! 波紋疾走をアマモたんに悟られそうだよ! ハッハー!」
カートゥーン調で語りかける分身。
正直……まこちんの冷たい目。
黄金の回転が始まりそうだよ。
俺はあくまでクールに言った。
「放っておけば溺死するんじゃね?」
なんて言ったその瞬間だった。
ズボッと野郎が地面に潜った。
「なにあれスタンド使い!?」
「ま、まさか、溺死房!」
「で、できしぼう!?」
「あれこそ幻の暗殺拳『溺死房』。
溺死房。古代アッシリアに口伝で伝わったとされる暗殺拳である。
アッシリア滅亡後はアケメネス朝に伝わり、日本にも渡来、北条早雲が使い手だったと言われる。
その拳は酔拳に似ており……溺れたと見せかけての地中からの奇襲……まずい! 逃げろ!」
ボボボボボボボボ!
アブラ大量がけの変態が地中から出現した。
その姿はまさに変態。
そう、すでに全裸だったのだ。
素早さのパラメーターの低いゴーレム姉妹が逃げ遅れる。
俺? ゴキブリみたいに壁よじ登って回避した。
「ボボボボボボボ、死ね」
すると伊予たんが笑い出した。
「くくくくく、たかが全裸! 関東を統べる千葉県民として負けるわけに行きませんわ! 咲夜!」
「はい、お姉様!」
バッサーと二人は服を脱いだ。
そこにいたのは金色ビキニの伊予たん。
銀色ビキニの咲夜たん。
待って、ゴールドゴーレムにシルバーゴーレムってそういう話ぃ!?
「これで互角ですわね」
ごめん何言ってるかわからない。
伊予たんと咲夜たんが武器を構える。
あきれてる今度はまこちんが語り出す。
あ、和物はまこちん担当なのね。
「慈恩流。日本最強と呼ばれる一門だよ。
古くは乙巳の変に関わったとされる裏の世界の暗殺集団だ」
「その歴史ある一門の姫がゴールドビキニとシルバービキニになってドヤ顔してますが?」
「裏の世界の暗殺集団だ……?」
あ、まこちんの中で迷いが生まれた。
「ボボボボボボ……」
「さあ行きますよ! 咲夜!」
「はいお姉様!」
たゆんたゆんと揺らしながら伊予たんが薙刀を振るう。
「慈恩無音拳!」
すうーっと伊予たんが滑るように移動した。
「ボボボボボボ!」
ズバッと変態が斬られた。
つうか金色ビキニが戦闘にどのような影響を与えているのか?
その説明は一切ない。
「ボボボボボボ!」
斬られた変態が崩れていく。
勝利したのか!?
いや違う!
「気を付けろ! それはデコイだ!」
「わかってますわ! 慈恩流爆殺斬り!」
咲夜たんが斧で地面へ振り下ろした。
次の瞬間、変態が地面から出てくる。
「ボボボボボボ! ボー!」
頭に突き刺さった変態が爆発する。
なぜ爆発するのか?
それは謎に包まれていた。
頭痛くなってきたから神殿に帰っていいかな?
「これぞ慈恩流金色ビキニ!」
「同じく銀色ビキニ!」
「絶対嘘だ! ハッハー!」
ジャスくんのジャスくんが心の中で吠えた。
なおエロくない。何一つエロくない。
やはりエロは恥じらいなのだと思うジャスくんであった。




