十二話 わかるのか! アマモたん!
南館に到着。
「勝手知ったる機械科南館!」
アマモたんが元気にバンザイする。
ビキニ・アーマーの穴から通したサキュバスしっぽがご機嫌に揺れる。
ほぼお尻丸見えなのに……ワイのワイは沈黙の戦艦。
マコたんを見る。
ワコたんは背中の開いた白いワンピース。
ワイのワイは「やあ! ぼくジャスくん!」ってカートゥーン的な不自然に高い声で挨拶してくれた。
慈恩姉妹を見る。
女子の制服スカート姿だ。
うちはユニセックス仕様の制服もある。
まこちんも翼が生える前は男子制服だった。
つまり好んでスカートをはいてるのだろう。
「やあ! ぼくジャスくん! いまのところ排尿にしか使われてないんだ!」
余計なご挨拶してくれた。
「旋盤が欲しいですわお姉様」
「CNCもあったはずよ」
旋盤の民が言った。
旋盤があればなんでも作れるんだって。
そして今回はまこちんもいる。
刀の研ぎが終わったんだって。
電気科一年は戦闘要員にしかならない。
「無線どうする? 現状じゃ動かないもんね」
蓄電池もないし。
「……東館の発電機を持ってくるしかないわ。ねえ咲夜」
工業高校は便利だなー。
「あと漫研の部室がありますわ。お姉様」
「漫研?」
「ええ、漫研の部室にはアレがありますわ」
「液タブ?」
「いいえ、フライヤーですわ」
「印刷物?」
「そっちではなく揚げ物を作る方の」
「なんでそんなのあるのぉ!?」
「漫研……それはお肉の豊満な方々が集う部活」
伊予たんが「デブ」という言葉を避けた。
漫研入ろうと思ってたがやめてよかったかもしれない。
「でもお姉様、漫研には裏漫画の闘技者たちがおられますわ」
「う、裏漫画……!」
「し、知ってるのかアマモたん!?」
「ああ、もともと何十年か前に秋葉原でカツアゲから身を守るために生まれた組織だ。当時のオタク差別は過酷だったらしい。90年代初頭の秋葉原中央通りにはギャングに磔にされたオタクの死体が道の両側にあったって話だ……」
「怖っ! 都会治安悪!」
「いまではいくつかに分派して漫画流、ラノベ流、TCG流などに分派したと聞いている……」
「い、嫌な予感がするのう」
まーたギリギリの変態が出てくるだろ。
「漫研は神奈川の暴走族SEEDのメンバーが中心だ。なんでも中学受験ドロップアウト組を中心を構成されているらしい」
「ねえ、なんで一行に危険なネタを盛りだくさん詰め込んでくるのかな?」
「知らねえよ。でよ、その中に四天王がいてさ」
「ほう……」
「呪文高速詠唱のしんのすけ。野菜MAXマシのトオル。アブラ大量がけのボー、豚大量注文のマサオ……」
なぜか埼玉に住んでそうな名前だ。
「全員食いもんじゃねえか。揚げ物の存在する感じねえけど!」
しかもごく狭いラーメンの特定ジャンルだけである。
「やつらにとって揚げ物はおやつ……」
「な、なんだってー!」
驚愕していると南館からサングラスをつけた全裸のマッチョが二人出てきた。
股間は葉っぱで隠されている。
「我らは南館の門番! タカ!」
「同じくユージ!」
危険すぎる……。
「南館に入りたければ我らに力を見せよ!」
「ぎゃおおおおおおおおおおおおん!」
一刻も速くこいつらを視界から消したくて全力ブレス。
だがひょいっと避けられる。
「あ、あれは……伝説の魔拳……葉っぱ隊!」
「が、がおん?(知ってるのかアマモたん?)」
「服をなくすことで空気抵抗をゼロにし神速を可能にする暗殺拳だ!」
「が、がおん?(葉っぱが空気抵抗じゃね?)」
「葉っぱ隊。それは紀元前1300年、古代オリエント時代に書かれたとされるギルガメッシュ叙事詩。
別名『深淵を覗き見た人』。
十二枚の石版があることで有名だが、幻の十三枚目が存在する。
詩編の『深淵を覗き見た人』というタイトル通り、十三枚目を見たものは狂気に蝕まれ破滅するとされる。
なんとか書き写した当時ミスカトニック大学埼玉分校の教授であった誤野礼悟による命をかけた翻訳により葉っぱ隊の記述がみつかったことで有名である」
なにその解説。
タカとユージは空気など読まない。
普通に攻撃してきた。
「ふははははは! くらえええええええええええええええッ!」
どぎゅううううううううん。
そのときロボットの移動音のような音が響く。
それは咲夜たんの手斧だった。
それをユージは葉っぱで防ぐ。
そこで防ぐのおおおおおおおおおおお!
「ぬうううううううううん! 我が股間は最強の盾なり!」
そしてもう一人。
伊予たんにM字開脚しながら回転して突っ込んでいくものが。
タカだ!
伊予たんはなにかに気づいて回避する。
そのままタカは地面をえぐった。
「回避するとはいい判断だ。我の股間は最強の矛なり!」
「ぐ、隙がない! カメラの位置を数㎝変えただけで放送事故だ」
アマモたんがメタい発言してる。
「ふはははは! 喰らえティンティンぶらぶらソーセージ!」
「『ティンティンぶらぶらソーセージ』
誰もが知ってるが由来を知らない言葉である。
だがそれは前述の誤野礼悟教授に翻訳された十三枚目の石版に描かれた伝説のメソポタミアの暗殺拳『葉っぱ隊』その最終奥義。それが『ティンティンぶらぶらソーセージ』なのである!」
「いまアマモたんが超高速でアタオカ発言した!」
タカとユージが跳び上がり。
地獄車になる。
ただし方向は逆。
葉っぱをこちらに向けている。
まさに逆地獄車。
逆地獄車そのまま俺たちの方に飛んでくる。
「ティンティンぶらぶらソーセージ!」
俺はその一瞬、見てしまった。
葉っぱが取れてソーセージがソーセージしながら飛んでくるのを。
「あんぎゃああああああああああああああッ!」
俺はブレスを吐いた。
もうやめて!
絵面の汚さが限界突破よ!
「無駄無駄無駄無駄無駄ぁッ!」
ブレスが弾かれていく。
するとアマモたんもメタい危機を感じたのか必殺技を出す。
「駄悪留死笛流拳奥義! 彗星拳!」
「無駄ァ!」
俺たちは弾き飛ばされた。
よかった直撃してない。
「ジャスくん!」
俺はマコたんに抱え上げられる。
なぜか幼児におしっこさせる体勢。
いわゆるシーシーポーズで。
いやん……なにかに目覚めちゃう♪
「くくく、逃げる一方か! 我ら『SEED』こそ最強なり!」
「くそ、あの野郎! SEEDか!」
「SEEDって神奈川の暴走族!?」
「ああ、うちの学校の大半が連邦かSEED所属だ!」
やはり……わが埼玉はマイノリティ!
ジ●ン軍のような存在なのか!
「ぐ、しかたない! 奥義! 穴座泥免死怨!」
アマモたんが必殺技を繰り出す。
なんか光線が出た。
あ、また説明が始まる。
彗星拳の説明はなかったのに。
「穴座泥免死怨。
十九世紀の神秘家フリードリヒ・ヴィルヘルム・フォン・ユンツトが著述した『無名祭祀書』。
その一説、ムー大陸について書かれた箇所に『ムー大陸の末裔は埼玉にあり』と記されている。
そう駄悪留死笛流拳とは遣隋使とともに海のない埼玉に渡りしムー大陸人の末裔、貝原アマモの血に流れるさだめなのである。
その中でも穴座泥免死怨は幻の秘拳。
埼玉出身の渋沢栄一も回顧録において「穴座泥免死怨、我らムー大陸人の末裔の秘技なり」と書いている」
渋沢栄一、ムー大陸の子孫説!
「むうううんんんん! むだむだむだ……!」
なんかよくわからん光線を受けながらも回転し迫ってくる全裸地獄車。
解決が丸ごと無駄だった!
俺はそれを見ながらふと思った。
最強の攻撃力ティンコと最強の防御力ティンコ。
それが兜合わせしたらどうなるんだろうと。
「ふん!」
俺は跳んだ。
怪獣ブレスあんぎゃああああああああああああああッ!
「ふ! 無駄だ!」
と避けた瞬間、俺は二人のお尻をパーン!
ティンコとティンコを合体させた。
「あん♡」
それはひどい絵面だった。
ひどい絵面すぎて説明は省こう。
「そうか! 最強の矛と最強の盾の衝突! 矛盾か!」
「矛盾。『韓非子』にある故事の一説。矛と盾の説話である。
ドイツの哲学者ヘーゲルは弁証法において矛盾を重視したとされる。
最強の矛で最強の盾を売る商人に矛で盾を突いたらどうなるかを問うたところ、返答できなかった。
つまり辻褄が合わぬ。
これで韓非子は徳治主義を掲げる儒家を批判し、法治主義思想こそ正しいと主張したとされる。
つまり最強の攻撃力のティンコと最強の防御力えを持つティンコが兜合わせした結果……それは両者の破裂だった。
なんという恐ろしい拳法界に残る悲劇!」
アマモたんのどうでもいい解説が響く。
とにかく最強と最強は矛盾、そう矛盾により崩れ去った。
汚い絵面で事切れるタカとユージ。
ブレスで焼き払っておいた。
成仏しろよ!




