第十話 慈恩姉妹
「そこの男、あなたは敵ですか?」
ゲルグ……薙刀持ってるポニテに言われた。
「違うよ……えっとアマモたん知ってる」
「アマモ? 誰ですか?」
「お姉様、二年のほら、埼玉とかという人外魔境、人の住めない地獄のようなところからお通いになってる」
「ま! そんな悲しい子のお友だち」
埼玉県民に親でも殺されたのかな、こいつら。
埼玉県民に当たり強くない?
「埼玉県民と仲良くされてるのならいい子なのでしょうね。落花生を差し上げましょう」
なるほど……千葉県民か……。
それならこの当たりの強さは納得だ。
「海もない胸もない……なにも持たない民ですわ」
たしかにアマモたんぺたんこだし、埼玉県に海ないけどさー。
「我々松戸市民こそ至高」
それ埼玉のすぐ近く!
すると「オラアアアアアアアアアアアアア!」って高い声が聞こえてくる。
もうこれ誰かわかっちゃった。
「慈恩姉妹! 俺の男になにしてんじゃこらあああああああああああああ!」
窓から飛び込んできたのは……大きな羽のアマモたんと大きな翼のまこちん。
飛んできたのか……。
アマモたんはビキニ・アーマー。
まこちんは背中が開いてて豊満なお胸の谷間を見せつける白いドレスだ。
エッロ!
痴女じゃん!
「埼玉県民が現われましたわ! お姉様!」
「三郷市民よ! 咲夜!」
三郷と松戸……すぐ近くじゃねえか。
あれ?
「もしかしてアマモたんと仲良し?」
「あー、こいつら幼馴染み。三郷住んでたんだけど。地元の暴走族と喧嘩して引っ越してさー」
なんだろうかこの関東あるある。
問題起こして県外ワープ。
「あなたもそこにいたでしょが! ひどいですわお姉様!」
「まったくこれだから埼玉県民は!」
「仲良しじゃん!」
「ちっげーよ!」
「ち、違いますわ!」
「違います!」
三人とも顔真っ赤。
大好きじゃん。
「と、とにかく! 答えなさいアマモ! その男はなに!?」
「彼ピ」
否定したらその場で殺される。
俺はニュータイプの如き先読みをし、これを回避。
雑魚とは違うのだよ雑魚とは!
「それとその格好は!? その羽はなに!?」
「なんかあーしサキュバスになっちゃったみたい!」
「サキュバス ・そしてその男は!?」
「しつけえな! 私専用チ●コだっつってんだろ!」
「ひどくね!?」
いくらなんでも専用チ●コはひどくない?
ぼくジャスくんのジャスくん。
アマモたん見ても力が出ないんだ……。
「とにかく~。あーしと彼はラブラブなんですぅ~♪ プ~クスクス! 処女姉妹さん私の勝ちですな! 愉快愉快!」
お前も処女だろがというツッコミも回避。
やはりニュータイプに目覚めたようだ。
アマモたん……俺の金太郎シャツに手を突っ込んで乳首こねるのやめなさい!
「ぐ、ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!」
姉妹は本気で悔しがってる。
「わ、私が魔王争奪戦をしている間にあなたは……ぐぎぎぎぎぎぎ!」
血の涙を流して悔しがる。
調子こいたアマモたんが乳首つまんできたので手でぺしん。
ホントエロいなこの娘! サキュバスだからだろうけど!
でも色っぽさゼロだな! アマモたんだからだろうけど!
言動が中学生男子だもん!
ジャスくんのジャスくんは沈黙を続けてるよ!
それをまこちんが「キレちまったぜ……屋上行こうぜ」って顔で見てる。
「そちらの悔しそうにしてる、どことなく毒親の波動を感じるかたは?」
ひでえ表現である。
でも少し同意。
「うーん、彼ピの性奴隷」
アマモたんクズだな。
そういうとこやぞ。
「てめ! やんのかコラァッ!」
まこちんがキレる。
さすがにこれは怒っていい。
「やはり彼氏ではないと……」
「三人で楽しみました!」
戦闘を避けたいまこちんが日和った。
そういう空気を読もうとするまこちんも……しゅき!
「つまり痴女……!」
「なんでボクを見るとみんな痴女扱いするんだよ! アマモの方がえっちな格好だろ!」
俺はまこちんの肩を叩く。
「まこちん聞いて……アマモたんは確かに露出度高いかもしれない。でも圧倒的にえっちななのは……まこたんだよ」
ズパーン!
叩かれた。痛い。
さらにアマモたんからは蹴られた。
こっちも痛い。
お前ら理解しろ1
隠すからエロい。
恥じらうからエロい!
仏陀も孔子も言ってる! たぶん!
「ふ、ふははははは! 正体見破ったり! 二人とも処女だな!」
げるぐ……姉の伊予が指さして笑う。
妹のざく……咲夜も指さして笑う。
君ら……俺らと同じで非モテの民だろ。
顔かわいいのに。
「ぐ、だが彼ピは本当だよ! ねえジャスくん」
平らなお胸を押しつけてくる。
「え?」
俺が答えをミスるとアマモたんは途端に不機嫌になる。
「私たちのどこが不満だ。ああ? コラァ!?」
キレ散らかす。
『すきあらばレ●プしようとしてくるとこ!』
なんて言えない。
コミュケーションの魔物を神回避。
気を取り直して……。
「どうも彼ピの仁義です」
しゃきーん!
「まあ素敵なお名前……では外にまいりましょう」
俺は囚われの宇宙人状態にされる。
「えっと……どこに行くのですか?」
「もちろんラブホですわ」
声に出して言いたい日本語だ。
「お姉様御一緒します!」
と、トリプルだと!
「ねえよバカ! おら帰るぞ!」
アマモたんが俺を引っ張るがビクともしない。
だって二人ががっしり押さえてるもの。
はーなーせー!
「どこに帰ろうというのです?」
「神殿」
「つまりラブホですね」
「脳味噌腐ってんだろてめえら!」
「では御一緒します。ラブホに」
「あ、てめ! 来るなバカ!」
「喧嘩なら受けて立つぞコラァ!」
今度は慈恩姉妹の伊予たんが喧嘩腰。
やだ怖い!
「少し貸せつってんだろ! バイク貸してやっただろがよ!」
「おま! バイクと彼ピは違えだろがよ!」
「お姉様、二人で乗りましょう!」
「てめえらふざけんな! おいマコト! お前もヘルプしろ!」
「ダメだよ。ジャスくんは私が教育するから」
なんか毒親っぽい言い方で優しく抱きしめられた。
おっぱい!
慈恩姉妹が仲間になったぞ。
……ところで、俺も埼玉県民なんだけど。
……いまさら言えない。
ああ……神様。埼玉に救いはないのでしょうか?
レイクタウンの巨大ショッピングセンター以外で。




