⭐︎編集部調査記録④
前回の記事では、三宅が宿泊したとみられる民宿での聞き取り調査について掲載した。
調査の結果、三宅は翌朝、宿を出て県境付近の山中へ向かった可能性が高いことが判明している。
編集部は、その山道の先にある廃集落について調査を行った。
現在、集落内に居住者はいない。
ただし、麓へ移住した元住民数名より話を伺うことができた。
そのうちの一人であるA氏(八十代・男性)への聞き取り内容を掲載する。
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《録音開始》
──本日はよろしくお願いいたします。
「何も面白い話はないですよ」
──この写真の人物をご存じでしょうか。
《三宅の写真を提示》
「……ああ」
──ご存じですか。
「見ました」
──いつ頃でしょうか。
「十日……いや、二週間くらい前かな」
──どちらで。
「山へ入っていくところを」
──話はされましたか。
「少しだけ」
──どのような内容でしょうか。
「古い家を探していると言っていました」
──古い家。
「天井裏へ入れる家はありませんか、って」
《数秒間の沈黙》
──何と答えられましたか。
「ない、と」
──実際には。
「……あります」
──それは現在も残っていますか。
「残っています」
──場所を教えていただくことは。
「嫌です」
──理由を伺っても。
「よそ者が関わるべきじゃない」
《長い沈黙》
──どういう意味でしょうか。
「この村には、この村のルールがある」
《録音終了》
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A氏は、それ以上の質問には応じなかった。
後日改めて取材を申し込んだが、辞退したいとの返答を受けた。
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編集部は、役場に残されていた住宅地図および航空写真を確認した。
昭和五十年代には、二十世帯以上が生活していた記録が残っている。
しかし、平成初期を最後に居住記録は確認できず、現在は無人となっている。
集落内には七棟の住宅が残存しているが、そのうち四棟は倒壊していた。
残る三棟について現地確認を行ったところ、一棟だけ不自然な点が見られた為、現地調査を行った。
該当の建物は、玄関は朽ち果てていたが、屋内には比較的新しい足跡が残っていたのである。
編集部員二名で建物内へ立ち入った。
一階には生活用品と思われる物は残されていなかった。
しかし、天井裏へ続く点検口だけが開いたままとなっていた。
点検口の真下には、アルミ製の脚立が立て掛けられていた。
脚立に積もった埃は薄く、最近動かされたようにも見えた。
編集部では安全面を考慮し、天井裏への立ち入りは行わなかった。
※後日専門家の立ち合いの元、内部調査を予定している。
その代わり、点検口へICレコーダーを差し入れ、およそ一分間録音を行った。
帰社後、録音データを確認したところ、開始から五十秒間は無音であった。
しかし、終了直前の約二秒間だけ、微かな音声が記録されていた。
ノイズ除去を行った結果、編集部では次のように聞こえた。
「……おいしいの」
音声解析業者へ鑑定を依頼したが、
「風切り音や環境音が偶然、人の声のように聞こえた可能性は否定できない。」
との回答であり、人の発話であるとの断定には至らなかった。
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現地調査を終え、撤収の準備をしていた際、編集部員の一人が脚立の足元で小型のSDカードを発見した。
土と落ち葉に埋もれていたため外観に損傷は見られなかったが、所有者は不明である。
現在、持ち帰ったSDカード内に残されたデータの解析を進めている。




