⭐︎編集部調査記録③
前回の記事では、三宅が失踪当日に立ち寄ったガソリンスタンドでの聞き取り調査について掲載した。
その後の足取りを調査した結果、三宅が宿泊した可能性の高い民宿を特定した。
宿の主人より掲載の了承を得られたため、以下に聞き取り内容を掲載する。
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《録音開始》
──本日はよろしくお願いいたします。
「はい」
──この写真の人物に見覚えはありますか。
《三宅の顔写真を提示》
「ああ、この人なら覚えています」
──いつ頃のことか分かりますか。
「今から二週間くらい前です。夕方だったかな」
──宿泊されていますか。
「ええ。一泊の予定で」
──何か変わった様子はありましたか。
「最初は普通でしたよ。夕飯を食べながら、この辺のお寺のこととか、古い空き家のことなんか聞いていました」
──空き家、ですか。
「ええ。人が住んでいる家じゃなくて、昔から誰も使っていない家はありませんか、って。」
──その後は。
「夜九時頃だったと思います。部屋へ戻られました」
──翌朝は。
《数秒の沈黙》
「朝にはいませんでした」
──早朝に出発されたということでしょうか。
「それが……」
──はい。
「布団が、使われていなかったんです」
──使われていない。
「ええ。畳んだ時のままでした」
──ですが、宿泊は。
「しています。夕飯も召し上がっていますし、お風呂も使われています」
──夜中に外出された可能性は。
「玄関は施錠しています。外へ出るなら私たちが気付きます」
──窓は。
「一階ではありませんし、人が出入りできる大きさでもありません」
──夜中、物音などは。
《長い沈黙》
「……ありました」
──どのような音でしょうか。
「二階を歩く音です」
──宿泊客は三宅さんだけだったのですか。
「はい」
──それでは誰が。
「分かりません。けど、どこか急いでおられるような感じではありました」
《録音終了》
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主人の証言を受け、編集部は三宅が宿泊したとされる部屋を確認させていただいた。
六畳ほどの和室で、天井には古い木目が残っている。
室内に不審な点は見られなかった。
一方、部屋の押し入れの天袋だけは、内側から釘で固定されていた。
主人へ理由を尋ねると、
「先代の頃からそうなっています」
との回答であった。
釘を打ち付けた時期や理由については分からないという。
編集部は取り外しをお願いしたが、
「そこは触らないしきたりなんです」
と断られたため、それ以上の確認は行わなかった。
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宿帳には、三宅本人の筆跡と思われる署名と、編集部へ提出されていた取材予定と一致する日付が記載されていた。
また、宿泊料金は現金で支払われていたことも確認できた。
一方で、部屋を清掃した従業員から、気になる証言が得られた。
「机の上にメモ用紙が一枚落ちていました」
しかし、そのメモは文字がほとんど消えていたという。
残っていたのは、鉛筆で強く書かれたと思われる二行だけだった。
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音は家の外からじゃない。
もっと近くにいる。
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原本は処分されており、現在は残っていない。
従業員が内容を覚えていたため、証言として記録するに留めた。
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編集部は、この民宿から三宅が向かったとされる山道についても現地確認を行った。
その道の先には、現在は使われていない集落があることが分かった。
三宅が最後に向かった場所は、その集落だった可能性が高い。




