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もしも俺が若い女性が1人で切り盛りしているカフェのカウンターにいつもいるおっさんになってしまったらそのときは躊躇わず殺してくれ  作者: 梅野飴


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フンコロガシは天の川を見るか

見るんだなこれが。

10年くらい前に、新聞で読んだんよ。

フンコロガシって天の川を眺めてんだって。

わけわかんねえこと言うな。フンコロガシ風情に星を見るような知能があるわけねえだろっていうみんなの差別的感情は痛いほどわかるけど、ガチなんだよこれが。なんか海外のなんかすごい研究機関が発表してたから。海外の研究機関って聞いただけでもう無条件で信じるしかないでしょ。

というわけで今日はフンコロガシと天の川の話

ほら、七夕も近いしね。


【そもそもフンコロガシってなんなん】

俺らよう知らんよねフンコロガシ。遠いようで普通に遠い虫フンコロガシ。カバディくらい遠い。

多分みんな現時点では「クソころがしてる虫」ってことしかわかんないよね。逆に言えばそこだけは絶対わかる。

小学一年生から一部上場企業の社長まで、フンコロガシに対して持ちうる情報ってこれだけよ。まあ名前がわりいよ名前が。ほかにアイデンティティないんかって名前つけられてさ。

で、簡単な生態なんやけどさ

あいつら南アフリカから中央アフリカが主な生息地なんやって。

そういえば砂漠のイメージあるよねフンコロガシって。他にも草原とかサバンナ?にいるらしい。

で、みんなが一番気になってる「そもそもあいつなんでクソころがしてんの?趣味?」って話だけど、なんか動物のフンを集めてそこに卵を産んで育てるらしいよアイツら。きもちわりい。あと、食うために集めたりもするらしい。きもちわりい。

つまりだ。あいつらは砂漠のど真ん中でひたすらフンを集めて転がして巣に持って帰ってそれに卵を産み付ける、もしくは食う。それだけ。それだけのために生きて、今日も他人のフンを集めて転がしてる。なんとまあ不毛な。なんのために生きてるんやろあいつら。

しかもさ、当然だけどオスで独身のフンコロガシはさ、家に帰っても誰もいねえのよ。

せっかく頑張って必死でフン集めて持って帰ってきてもさ、そこにあるのはフンだけなのよ。それ食うだけ。切ないね。いつかこの集めたフンに卵を産んでくれるメスが現れるそんな日を夢見ながらさ、クソ食って寝んのよ。泣けてくるね。


【フンコロガシは天の川を見る】

とまあ、こんな前世で大量殺人やらかした人間の転生先としか思えない存在のフンコロガシだけど、そんなフンコロガシがさ、じつは夜の砂漠で天の川を眺めてんだよってのが俺が10年前に読んだ記事なのよ。いや長かったね前振り。

そもそも天の川を眺めて何してんのって話だけどさ、指針にしてんだって。フンを転がすための。

あいつらさ、砂漠とか草原とかにいるわけじゃん。目印ないのよ。360度砂よ砂漠なんて。砂漠3丁目とか市民体育館とかパルコとかないのよ。iPhoneもないし。そんなんぜったい迷うやん。普通に考えたら。でもあいつらときたら綺麗に一直線に巣まで帰るのよ。砂の上に残る足跡がさ、真っすぐなのよ

で、フンコロガシを観察してた傾奇者達が「あいつら方向感覚ヤバすぎじゃね?」って話になって色々実験してみたらどうやら夜空に浮かぶ天の川を指針にして巣まで帰ってたのがわかったんだって。

すげえよね。フンコロガシのくせにさ。ロマンチックで。悔しいね。負けた気がするね。俺たちフンコロガシよりは上だと思ってたのにね。せめてフンコロガシよりは上でありたかったのにね。


【東京フンコロガシ】 

で、まあこの話のおおよそはこれで終わりなんだけどさ、俺妄想好きだからさ、あいつらを東京に置いたらどうなるんやろって思ったのよ。

だってさ、東京って星が見えないんでしょ?なんか知らんけどさ。

ってことは東京に放り出されたフンコロガシは己の人生の指針を失うわけだ。

天の川を失ったフンコロガシは東京砂漠を彷徨う。

切ないね。まるで俺達みたいじゃんか。あれ?なんか途端に親近感湧いてきたね。

まあ俺、東京住んだことないけどさ。

でも、東京に住んでなくても俺達って天の川見失ってんじゃん。

だってさ、ずっと俯いてスマホ見て歩いてんもんみんな。わざわざ空なんて見上げてないよ誰もさ。

そんなの歌詞の中だけだよ。

みんな星とか月とか星座とかなんかそういうの好きなくせに見てねえもん。

最近いつ見たよ星。見てないでしょ。

ストロベリームーン見た?しし座流星群みた?

俺は見たよ。SNSのバズってる投稿で。ね、ヤバいよね。もう俺らは星も月も俯いて眺めるんやね。

松尾芭蕉だって令和に生まれてたらスマホの画面に映る月を見て、いいね狙いのドーパミン俳句を詠んでたんかもしれんね。

そら見失うよ、人生の指針をさ。俺みたいに。

でもさ、だからなに?って話でもあるやん。

星見たからなんやねんって。何の得があんねん。知らんがなって。

で、俺なりに考えてみたんよ。このスマホ一つで月日や天気から海の向こうの戦争の様子まで一瞬でわかるこの時代に、あえて立ち止まって星を見上げるメリット。

……ないね。メリット。うん。ないよ。ない。どう考えてもない。

星見上げるメリット、ありません。

強いて言うなら首のコリがほぐれるくらいじゃない?スマホでガチガチに固まった首と肩がボキボキ鳴って気持ちいいかも。

まあでもさ、メリットを求めること自体間違ってるんかもしれんね。

空なんてもんは「月でけえ星ぱねえ」って思うためだけに見上げるべきなんかもしれん。そこになにか求めることが烏滸がましいってなもんよ。

そもそも星さんサイドもメリット求められても困るやろ。あいつらただ存在してるだけなのに。別にアイドルじゃないのに。スターじゃないのに。いやスターだけどさ。勝手に見られて勝手にメリットないとか言われてもさ。

まあ怖いけどね。わざわざ立ち止まって意味のないことするって。

一分一秒も無駄に出来ない現代においては特にね。

でも、スマホの海に潜り続けて指針を見失ってしまった人は、顔を上げて空を見て息をしてみるといいのかもしれないよ。

だって、俯いてスマホ眺める時間もたいがいはどうせ意味のない時間だから。

同じ無為な時間を過ごすならせめてカッコいいほうがいいじゃん。星見てる方が素敵じゃん。ロマンチックじゃん。つーかフンコロガシには負けたくないじゃん。せめてさ。かっこよさでは。相手フンコロガシだぞフンコロガシ。

あと一カ月もしないうちに七夕だね。ちょうどいい機会だからさ、情報の砂漠を彷徨う俺達東京フンコロガシはちょっと見上げてみるといいかもしれない。

そしたらもしかしたら、天の川の先に人生の指針が見えるかもしれないね。


嘘だよ。どうせ見えねえよ。見えるわけねえよそんなもん。なんか曇ってて星よく見えねえなで終わりよ。だってスマホで目悪くなってんやから。んでそのあと無意識にXをスワイプスワイプよ。人生って別に小説じゃねえから。そんな作者の都合に合わせて星は流れないし人間の感情は動かないから。


でもまあ、見えなくてもさ、最悪首のコリはほぐれるから。いいとおもうよ。


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小説短編集・コント集・詩集もあるから読んでね
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