トスカーナ幼稚園と次なる旅
ゴンドラを降りるとジェロームとロレーヌはトスカーナ空港に一番近い川辺にやってきました。ロレーヌは、ジェロームに言います。
「素敵な景色だったわね。あの運河から見ると言いゴンドラの船頭が歌う舟歌と言い旅の1ページに刻まれた気がするわ。それで、飛行船に乗る前に行きたい所があるって言ってたけど、どこへ行くの?」
「トスカーナ幼稚園さ、幼稚園に私の作品を提供しようと思っている。園長は私の作品のファンなんなのだよ。それに子供達は、とても人なつっこいぞ。ここから歩いてすぐだ。」
5分ほどトスカーナの街を歩くと幼稚園にジェロームとロレーヌはやって来ました。トスカーナ幼稚園は煉瓦造りを基調とする古い建物で形成されており歴史を感じる幼稚園なのです。トスカーナ幼稚園の前の門に辿り着くと門の前でロレーヌはジェロームに聞きます。
「ねえジャン、この幼稚園には以前も訪れた事があるの?」
「ああ、ここの幼稚園の子供達は可愛いぞ。下手すれば絵の具を被せられるかもしれない。君も気を付けた方が良い。子供達は少々乱暴だ。」
ジェロームはインターホンを鳴らします。幼稚園の中から1人のカバの男性が出て来ました。男性はトスカーナ幼稚園の園長のデリオ先生です。デリオ先生はジェロームの方に来ると挨拶をします。
「デリオ先生、こんにちは。」
「これはこれはジェロームさん。ようこそいらっしゃいました。さあどうぞ、子供達も待っていますよ。ジェロームさんに会いたいとね。こちらのお方は?」
「友人のロレーヌです。彼女も画家でしてね。」
「始めましてロレーヌ・サンドラと申します。」
「トスカーナ幼稚園園長のデリオと申します。是非うちの幼稚園を楽しんで行ってください。」
そういうとロレーヌとジェロームは園長に案内されて教室へ歩いて行きます。教室の中からは子供達のはしゃぐ声が聞こえます。そして、園長はドアを開けます。すると遊びまわっていた子供達が一斉にジェロームの方へやってきます。
レッサーパンダの女の子とキツネの女の子と子猫の女の子の3人が集まって来ました。
「ジェロームおじちゃんだ!ジェロームおじちゃん!久しぶり!おじちゃんもしかして彼女さん出来たの?」
「ルオン、大きくなったなあ、そうだよ。おじちゃんには新しいガールフレンドが出来たんだ。ルオン、身長も伸びたなあ。」
ジェロームに抱きつくレッサーパンダの女の子をジェロームは抱っこしました。快活な女の子の名はルオンと言います。子猫の女の子のフェルトはジェロームのカバンを漁ろうとしています。そして油絵の具を出すと遊具にイタズラで塗り始めました。
「こら、フェルト、イタズラはやめなさい!」
キツネの女の子がロレーヌに話しかけます。女の子は人懐っこい雰囲気で快活な声で話します。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、私の名前はサニーって言うんだよ。お姉ちゃんは何者?あれ、テレビで見た事ある?有名な画家さんだ。ジェロームおじちゃんのお友達?」
「こんにちは、私はロレーヌ、ジェロームおじさんのお友達よ。サニーちゃん、よく分かったわね。私はおじさんと同じ画家なの。」
「じゃあ絵が描けるんでしょう?すごーい、じゃあさ、私を描いて描いて!私、将来モデルさんになりたいの!」
「私もモデルで描いてもらいたい、描いて描いて!」
「ずりーぞ、お前ら、俺も描いてもらいたいよ。」
「分かったわ。じゃあ、皆んなここに並んでね。動いては駄目よ。プロの画家の腕を見せてあげるわ。」
「「「やったー!」」
園児達が快活な返事をして喜ぶ中、ロレーヌはバックの中からスケッチブックを出し始めました。スケッチブックを取り出すとサニーとリスの男の子のピルトを鉛筆で描き始めます。ロレーヌはもの凄い速さで描き始めます。そして書き終わったそのスケッチを見るとサニーは感動します。
「うわー、お姉さん、本当に上手、すごーい、ねえねえ、皆んな、やったー。」
子供達と遊んで盛り上がっている中、園長のデリオ先生がジェロームに話しかけます。
「ジェロームさん、それで新しく描いた絵画っていうのを是非拝見したいのです。どんなジャンルを描いたのですか?」
「描いたのはトスカーナホテルのホテルの部屋から描いたトスカーナ運河とトスカーナの街並みです。油絵なんですが、既に乾き切っています。この幼稚園では美術にも力を入れているとお聞きしたんです。だから是非お願いします。」
ジェロームが答えると、作品を入れているバッグからトスカー運河の景観って言うタイトルで描いた油絵を出しました。布に包まれていましたが、その布を取るとその中には作品が目を開けたのです。
「かしこまりました。おー、これが所謂トスカーナの街を描いたという風景画なのですね。素晴らしい、こんな一級品を献呈してくださるなんて、ありがとうございます。」
その様子をチラッと見ていたルオンが走ってジェロームが描いた作品をちらっと見つめます。そして思わず声を出します。
「うわぁ、ジェロームおじちゃんが描いた新作だあ、凄い美術館に飾られている作品みたい。おじちゃんの才能って本当に凄いなあ。ねえねえ、どうやったらおじちゃんみたいになれるの?」
「ルオン、それはな諦めない努力と夢を持つ事だよ。ルオンにも何か夢はないのかい?無ければ見つければ良い。将来の夢はなんだい?」
「私は、やっぱりお嫁さんになりたい!それからお母さんにも。」
「じゃあ、その夢を忘れずに俺みたいになりたいんだったら絵をしっかりと練習してそれをお母さんになったら子供に教えてあげるんだよ。大丈夫だ。ルオンなら出来るさ。おじちゃんが言うんだから、間違いないさ。」
園児達と遊んだ後、トスカーナ幼稚園の大広間にジェロームと園長のデリオがやって来ました。ジェロームは自身が描いた絵画「トスカーナ運河の景観』を出しました。その絵画を見たデリオはジェロームにお辞儀をします。
「ジェロームさん、あなたが描かれたのですね。非常にお上手な絵だ。是非、当園に飾らせて頂きたいのですが、宜しいですか?」
「ええ、喜んで」
こうして『トスカーナ運河と景観』はトスカーナ幼稚園に献呈されました。トスカーナ幼稚園に寄って色々と喋っていたらあっという間に時間が過ぎました。さあもうお別れのお時間です。ジェロームにルオンは挨拶をします。
「おじちゃん、またきてね。」
園児達も皆んな、手を振るのでした。そんな園児達をロレーヌとジェロームはゆっくりと見つめています。
「こうやって、色んな子供達に出会うからこそ旅っていうのは良いんだよ。ただ絵を描くだけじゃないのさ、ロレーヌ、君の絵もここにしっかりと飾ってもらうんだよ。」
「ジャン、子供って皆んな目が輝いていたわ。皆んなどんな子に育つのかしら。将来が楽しみだわ。」
そしてジェロームはエイルースを呼ぶボタンを押します。すると街の方から馬車がやってきます。その馬車を操縦しているのはガラスのうさぎのエイルースとガラスの犬であるデスネードです。馬車はジェロームの方にやってくるとエイルースは挨拶をします。
「ジェローム様、お待たせ致しました。それではどちらまで参りますか?」
「トスカーナ空港まで連れて行ってくれ!」
すると馬車の扉が開きます。そして馬車の中にジェロームとロレーヌが乗ると馬車の扉は閉まります。そしてエイルースが鞭を叩くと、いよいよ馬車はトスカーナ空港に向けて出発します。馬車は動き始めます。トスカーナ運河のそばの道路を抜けて、馬車は運河へと入る直前にエイルースの魔法によりホバークラフトへと変形していきます。ホバークラフトへと変形したホバークラフトはトスカーナ運河を進み、トスカーナ川の下流へと進んでいきます。
「ジャンはあれほど子供に人気なのね。私は子供が好きでいる大人が好きだから、とても素敵に見えたの。ヴィルと離婚したのはあの人子供が苦手なのよ。だから子供を愛する自信がないって、それで私はこの人と将来を添い遂げられるのかって不安になって。」
「それで不安になって破局したのか。その不安は誰でもあるさ。私は結婚歴がない。だからその気持ちを理解してやれないが、でも今が楽しければ良いのではないか。」
そして下流はやがて河口へと辿りつくと目の前に見えてきたのはトスカーナ空港です。トスカーナ空港前に近付くとエイルースが言います。ホバークラフトの扉が開くとジェロームとロレーヌはホバークラフトから静かに降ります。するとエイルースは消滅します。そしてホバークラフトも姿を消したのです。ジェロームとロレーヌはトスカーナ空港の入り口に入ります。チェックインカウンターへと向かいます。
「いらっしゃいませ、どちらまで行かれますか?」
「ペルセポネまで」
「かしこまりました。それでは14時45分発、レッドツェッペリン54号のチケットとなります。お荷物はお預け致しますか?」
「いえ、大丈夫です。」
チェックインを済ませると赤い飛行船レッドツェッペリンが見えて来ました。ゲートが開くとジェロームとロレーヌは飛行船に乗り込みます。席に座ると飛行船は静かに空を飛び立ちました。




