ホテルコンチネンタル
エイルースが鞭を叩くと馬は唸り声を上げていきます。ガラスのうさぎであるエイルースの全身が赤く光出すとエイルースの身体にエネルギーが宿ります。そして馬はゆっくりと歩き出し馬車は動き始めます。馬車は赤く光り出す中、エイルースにジェロームは聴きます。
「お前の身体は不思議だな。赤く光るというのは身体の中にあるエネルギーを算出しているのか?兄さんの技術力は大したもんだ。」
「僕の力は魔法です。赤い光を強くこめるとそれが動体芸術に伝わっていくのです。特にこのトスカーナは、歴史的な建物からそういうエネルギーを出す事が出来ます。魔法というより波動に近いものですね。」
「まあ!エイルースちゃんはエスパーなのね。私にもそんな超能力が欲しいわ。他にも色々教えて欲しいわ。街の事だったり歴史であったり。」
「トスカーナは昔からクラシックの建築を遺跡として街へ残しています。その遺跡には、建築家や彫刻家の思いが詰まっていますから。それに街に張り巡らされた運河は古くから商業や流通を支えていたのですよ。これから泊まるトスカーナホテルは運河を通ります。さあこれから運河を渡りますからね。見ててください。」
「まさか一体どうなると言うのだ?」
ジェロームは疑問に思いエイルースに尋ねます。するとエイルースは持っている杖を降りました。すると馬車の車輪がみるみる変化していくのです。車輪には不思議な力が宿ります。そして辺りに神秘的な虹がかかっています。
馬車はトスカーナの運河に入っていこうとしているではありませんか。ジェロームは困惑します。
「待てエイルース、これは馬車だぞ。船ではないんだよ。」
「ジェローム様、魔法の力でこの馬車に奇跡が起きますよ。
すると馬車は水の中を渡り始めます。馬車の車輪は水上を走るモーターへと変化していたのです。そして馬車はホバークラフトへと変形します。ホバークラフトは水をかき分けていくのです。その様子に興奮したジェロームは、エイルースに聴きます。
「お前の魔法の力は本当に素晴らしいな。エイルース、まさか馬の姿まで消してしまったのか?」
馬の気配がない事に気が付いたジェロームはエイルースに言うとエイルースは明るく答えます。
「この馬は僕が作った妖精なのです。妖精は今はこの乗り物を対岸まで運ぶ重要な役割を担って下さっています。それほど強い魔力を持っている妖精です。それだけでなく水上では驚きの力を発揮してくれますよ。」
エイルースの力でトスカーナ運河の中から噴水が打ち上がっていくのです。噴水の力だけで辺り一面に虹が掛かっています。そして水は虹を照らしていきます。そんな中、トスカーナ運河の方からどうやらボートの音が聞こえます。もの凄い音を響かせながらこちらへと近づいて来るそのボートに乗っているのはジェロームと喧嘩をしたあのヴィルではありませんか。ヴィルはサングラスをかけて休暇を楽しんでいる途中でした。ヴィルはふと横の窓を覗くとそこにはジェロームとーナの姿があったのです。ヴィルはジェロームの方を見ると声をかけます。
「おや、ロレーヌ、奇遇だね。トスカーナで再開するとは。こないだの飛行船の中では、あれほど強い拳で殴って来たから大したもんだと思ったよ。それに久しぶりだロレーヌ。」
「ヴィル、あなた何しに来たの?どうしてここに、まさか付けてきたんじゃないでしょうね?」
「そんなわけあるかい。トスカーナ運河はボート乗りに乗っては堪らない場所だ。ロレーヌも知っているだろ。俺のもう一つの趣味はボートに乗る事だってな。今はそこのマナティさんと一緒に旅に出ているのか?まあ良いさ、それにそこのマナティさんとはまだ決着がついていない。」
「これはこれは、俺の作品をゴミだと貶したクソ野郎のお出ましかい、残念だが、今ロレーナは俺のものだ。そんなにボートで自分の座をアピールしたいのなら、こいつに勝てるかな、さあエイルース、スピードを上げるんだ。」
「かしこまりました。ご主人様。」
するとエイルースの魔法でホバークラフトは一気にスピードを上げます。そして負けないようにヴィルはボートのスピードを上げました。ジェロームとヴィルの乗るボートはお互いに凄い水飛沫をあげていきます。エイルースの力でホバークラフトは更に加速力を上げていくのでした。ホバークラフトは横に曲がると狭い運河へと入ります。するとその衝撃でロレーヌに水飛沫がかかるのでした。ロレーヌにかかった水飛沫を浴びるとロレーヌはびっくりと声をあげます。
「もう、濡れちゃったじゃない!ジェローム、ヴィルはね、調子に乗るとすぐにそうやってカッコつけようとするの。全く、お調子ものなんだから。でもジャンがあんな子供みたいに笑っているのはなんか良いわね。」
ホバークラフトの横をヴィルが操縦するボートが横ぎります。ボートがホバークラフトを追い越します。ヴィルはそんな中でジェロームの方を見ると舌を出しました。
「このセイウチ野郎、ここまーでおいでーだ。俺に負けたらロレーヌを引き渡せ。」
「ふん、笑わせてくれるじゃねえか、アシカ野郎、良いか、そう簡単に渡す訳には行かねえんだよ!俺はセイウチじゃねえ、マナティだ!見てみろ、これが超絶怒涛のエンジンの威力って奴さ。エイルース、奴のボートを転覆させろ!」
そうエイルースに言うとエイルースの魔法によりホバークラフトは一気に水を纏っていきます。そして水の膜を纏っていくではありませんか。そしてロレーヌを包んでいくと、ロレーヌを空中へと浮かべたのです。膜を纏ったホバークラフトはそのまま一気に加速していくと曲がります。そして曲がったホバークラフトは、そのままヴィルの乗っているボートへ突進しました。
「行けぇぇぇ!!」
「このセイウチ野郎!覚えてろ!」
そのままヴィルのボートは転覆してしまいました。ヴィルは運河の中に吹き飛ばされてしまいました。そのままヴィルは泡を吹かせながら水面に顔を出します。ホバークラフトは運河を上がるとそのまま馬車へと変形します。ジェロームはヴィルの方を笑いながら見つめました。ヴィルは水を口から噴き出すと悔しがります。静かにロレーヌは地面へと降ります。運河から出て梯子を登り地上に辿り着きジェロームの前にヴィルは現れると握手をします。ジェロームも握手をするとヴィルに言います。
「良い腕じゃねえか。俺はあんたの作品を貶してしまったことは謝る。だが、あんたのそのセンスには負けてしまったよ。ジェローム、これからも宜しくな。」
「こちらこそだ。ヴィルと言ったっけ。俺からロレーヌを奪い取って見るが良いさ。それにまだお前さんの絵画も見ていない。是非見せて欲しいものだ。またな、また会おう。」
ヴィルは濡れた衣類を着たままその場から立ち去りました。そしてヴィルの様子をジェロームは見つめていました。ジェロームはため息をつきました。
「ロレーヌ、あのレオナルド・ヴィルという君の元旦那はあれほどまでにふざけた男なのか、全く、子供の心を持つ男のようだよ。奴はまだ君に惚れているのかもな。」
「ええ、馬鹿な人よ。いつだって気分屋なのよあの人は、だけど、あの人は自分をこう呼ぶわ。俺は鮫だってね。全くカッコつけているにも程があるんだから。それよりジャン、折角の荷物が濡れてしまったわね。エイルース、あなたの力で元に戻してくれるかしら。」
「かしこまりました。」
エイルースが魔法をかけるとジェロームとロレーヌの衣類は見る見る乾き綺麗になっていくのです。そして真っ直ぐ向こうを見るとトスカーナホテルの建物が見えて来ました。その建物を見るとロレーヌは言います。
「あれが今夜宿泊する予定のホテル?運河のすぐそばにあるなんておしゃれなホテルね。」
「ああホテルコンチネンタルだよ。」
トスカーナのホテルへと到着しました。ホテルの名前はホテルコンチネンタル。目の前には運河が流れておりその運河には船頭が漕ぐゴンドラが行き交っています。エイルースは席から降りると馬車の扉を開けます。扉が開くとジェロームが先に降りて、ロレーヌの手を引きます。ホテルを見たロレーヌは感動したのです。
「ここがあのホテルコンチネンタルなのね。こんな運河の目の前にあってなんて素敵なホテルなのかしら。ここで休暇を過ごすのはありね。」
ジェロームとロレーヌは馬車から降りるとホテルの中に入っていきます。ホテルの扉が開くと中には豪勢な雰囲気で大理石で作られた階段があります。ロビーに行くとジェロームは財布からクレジットカードを出しました。クレジットカードはゴールドカードです。すると受付にはキリンのホテルマンがにこりと笑いながら挨拶をします。
「いらっしゃいませ、ホテルコンチネンタルへようこそ、当ホテルはトスカーナ運河の川沿いに立つリバーサイドホテルとなっています。お部屋は309号室になっています。お風呂はトスカーナ運河を見渡すリバービューとなっていますので是非ご利用くださいませ。あちらにチェックイン機がございますのでチェックインをお願い致します。」
「はい、ありがとうございます。」
ジェロームはチェックイン機に向かうとロレーヌと共にチェックインを行います。機械からルームキーが出てくるのはまさに近代的な時代を感じます。ジェロームはルームキーを受け取るとロレーヌに渡します。
「はい、ロレーヌ、鍵だよ。」
「ありがとう。」
ロレーヌもルームキーを受け取ると309号室へと向かう為にエレベーターに向かうのでした。ジェロームがエレベーターホールへ向かうと窓からはトスカーナ運河が見えます。そして運河の水面目掛けて一隻の飛行艇がプロペラを回転させながら着水していくのでした。エレベーターがやってくるとジェロームとロレーヌはエレベーターへと乗ります。エレベーターの中でロレーヌはジェロームの方に寄ります。そして静かに唇を近付けてキスをします。ロレーヌとジェロームは濃厚にキスをしました。
「こういう場所は誰も見ていなくて良い。その分、良いキスが出来る。」
「あらあなたも随分と濃厚なキスが好きなのね。」
エレベーターの扉が開くとロレーヌとジェロームは3回に到着した事に気がついたのです。2人は誰かに見られていないかを気になり静かにエレベーターから出ました。そして、309号室へと向かいます。309号室の扉にジェロームはルームキーをかざし部屋へと入るのでした。




