強欲の魔女
村の外をぐるりと回る感じで、外側の森を見ていく。
螺旋を描くような感じで。
そうすれば、いずれ見つかるだろう。
「あっ......みんな...止まって......」
探し始めてから1時間くらい経った時、ネモが何かを見つけた。
「あそこ......家みたいなのが.......」
指を指す方を目を凝らして見ると、たしかに家らしきものが見える。
「行ってみるかい?」
「行くしかないでしょ」
家らしきものへ近づくにつれ、それが家だと確信する。森の木々と似た色の木で作られた、古い家だ。
ツタが家に侵食している。
「誰が.....扉たたく.......?」
「じゃあ俺が」
開かれてすぐさよならーなんてことはないだろう。
木の扉を叩く。すると、中からゆったりとした足音が聞こえてくる。
「はぁい?」
黒く艶かしい長い髪に、怪しげなヴァイオレットの瞳。魔女に見えなくもない女性が、扉を開けた。
「うーんと...冒険者の人かしら?」
「あぁ、依頼掲示板に依頼を貼ったのは、あなたか?」
「えぇ、間違いありませんわ。中へどうぞぉ」
招かれるがまま、家の中へ踏み入れる。
暖炉にまだ火はくべられておらず、太陽の光が家の中に明かりと暖かさをもたらしていた。
「それで、依頼に書いてあった「古竜の心臓が欲しい」とは、どういうことだ?」
「そのままの意味です」
迷いなく、はっきりと。彼女はそういった。
「でも古竜は.....魔王に倒された1匹が最後のはず......」
「そうですねぇ...それは正しいですわ」
「なら.....そもそもどうやって......」
いつの間にか紅茶が注がれていたティーカップを差し出し、自分用のを口にしながら、彼女は言う。
「知っていますか?その、魔王によって討たれた古竜が蘇っていることは」
「そんなこと........ッ!!」
「嘘では無いのですよ。元老は、蘇らせた古竜を再び魔王へ差し向けようとしました。
ですが、蘇った古竜は半暴走状態でした。元老は、古竜を人目のつかない地へ封印するしかなかったのです」
とても、信じられない話だ。
どうやって古竜を蘇らせたのか。
古竜だから、死者の蘇生よりも単純だったのか。
「あなたは.....なぜその古竜の心臓を欲しているんだ.....?」
「そこに深い意味はありません。ただ、欲しいからですよ。ですが、挑んだ冒険者や旅人達は誰一人としてかないませんでした」
「......ッ!...強欲だと、言われなかったんですか」
「もちろん、言われましたわ。強欲な魔女だ、と」
部屋に、沈黙が広がる。
だが、魔女はその沈黙を楽しそうに味わっていた。
「...どうして...冒険者達は断らなかったんですか.......?」
ネモが尋ねる。
「私が、彼らに言ったからです。願いを叶えてくれたら、勇者の力を与えると」
「デタラメを.....」
魔女は、どこまで行っても魔女なのか。
思考が人と同じではない。そう思わざるを得ない。
「じゃあ....冒険者たちは、力が欲しくて.....?」
「ええ。勇者の力を手に入れれば、魔王を倒せる。と考えたのでしょうね
人は、欲望の前では理性を失いますもの。他者から見て嘘のような言葉も、欲するものには心をわしずかみにして離さない爪のようなものですよ」
うっすらと笑みを浮かべ、俺たちを見つめる。
「私の提示した「報酬」に、誰一人として抗うことはできなかったのです」
「......帰ろう、みんな。俺たちは、まだ間に合うだろ...?」
「そうだね」
反抗心か、それとも自尊心か。
席を立ち上がり、家を後にする。
その選択さえ、魔女は微笑んで見届けた。
「ええ、それが正しい判断です」




