依頼掲示板
トロイアには、依頼掲示板というものがある。
そこには迷子探しや討伐依頼、運送保護などのような一般的な依頼が貼られている。
ここに訪れた依頼人が、住所と依頼を書いた紙を貼っていくスタイルである。
そして、見かけた冒険者などが引き受けていく。
「今日の依頼は......家出した鳩の捜索......」
なんと絶望的な依頼だ。
犬や猫ならまだマシだった。よりにもよって自由に空を飛んでいく鳥とは.....。
(.....アレーティアの所にもっていくか)
彼女なら何とかできるだろうか。
「特徴を言いなさい、魔術で探してみるわ」
「えっと...白い羽根に赤い首輪、手で胴体を包めるくらいの大きさって書いてある」
「なるほどね、そこまで絞れるなら何とかなるんじゃないかしら」
さすが我らが魔術師のアレーティアである。
これなら、この依頼は完遂出来そうだ。
「見えたわ、郊外に生えている大木に居る。拘束魔術をかけておくから、行ってきて」
「りょうかい〜。ありがとね」
とりあえず剣と小さめの鳥籠を持って向かう。
大木ってことは、すぐに見つかるか?
そう考えながら走る。拘束魔術がかけられているとはいえ、その間に魔物に喰われたりとかしたら元も子もない。
「うーん。この大木か?」
周りの木々より巨大な木を見上げる。
葉に隠れているかもしれない。しっかりと探すと―
「お、あれかな?」
置物のように動かない鳩がいる。
真っ白な羽根に赤い首輪、間違いない。
身長に木に登り、優しく捕まえ鳥籠に入れる。
アレーティアもそれを魔術で見ていたのか、籠に入れた瞬間に、鳩にかけられていた拘束魔術が解かれた。
「さ、飼い主の元へかえろっか」
夕焼けに染まりつつある空を眺めながら、トロイアへ帰る。依頼主の家は城門に近いから、すぐに届けられるだろう。
「本当に、ありがとうございます。もう会えないことを覚悟していたほどに絶望的だったので.....」
「見つかってよかったです。次からは気をつけてください」
「ええ、本当にありがとう」
依頼主から報酬を受け取り、(アレアトの)家へ帰る。
今日の晩御飯はどんなものなんだろう...?
そんな事を考えながら。
「ただいま〜」
俺が帰った頃には、3人もリビングへ集まっていた。
どうやら他の依頼も完遂できたようだ。
「おかえり、お疲れ様」
「大変だったよ〜。アレーティア、ありがとな」
「あれくらい、私にはお安い御用よ」
ドヤ、と誇らしげな顔のアレーティア。
それを微笑ましく、遠くからクレイアが見つめていた。姉みたいだな....。
「そういえば、アレアトが不思議な依頼を見つけたって言ってたわよ」
「不思議な依頼?」
どんな依頼なんだ...?
ある日に雨を降らせてほしいとか、月が欲しいとか、そんな無茶ぶりなのだろうか...?
「少し気になってね。これなんだ」
そういい差し出したのは、年季の入った古い紙。
そこに、依頼内容と住所が書かれている。
『古竜の心臓が欲しい』
.....はい?
「なによ....この依頼.......」
「古竜の...心臓...?」
「ほらね、不思議な依頼だろう?」
そんな自慢するように言うことではないような気がするが...それにしても無茶ぶりが過ぎるのではないだろうか。
「古竜って.....とうの昔に滅んでいるわよ.....それなのに、その心臓がほしいって.....依頼主の顔が見てみたいものね」
ちょっと不機嫌モードのアレーティア。
ネモも少し引いている。
「ちなみに、住所は?」
「鍜治の里に近い村だね...」
「どうするの....?この依頼......」
「とりあえず、話を聞いてみたいな。だって、こんな面白い依頼にはもう巡り会えないかもしれないからね」
「そんな....軽く......」
「まぁ、いいじゃない。話を聞くくらいはね。明日にでも向かいましょ」
「そうなるかぁ〜」
しばらくして、どこからか美味しそうな香りが漂ってきた。とりあえず、晩御飯を食べてからもう少し考えてみることにしよう。
ちなみに古竜は、魔王が返り討ちにしたものが最後の種でした。




