フィジェラルド
「いや、いやいやいやいや....
いや、確かにアレアトってすんごい書物の量買ってくるし、そのお金はどこから出てきてるんだろ〜?って思ったことは10回以上あるけどさ?」
メイドさんが出してくれた紅茶を、手をプルプルさせながら口元に運ぶカタルシス。
いまだ目の前の現実が受け入れきれていない。
「その......アレアトの家はつまり、貴族ということですか.....?」
「ええ、その認識で間違いない。とても信じきれないことだと分かっているが.....」
そう話すのはフィジェラルド家長男のイルーガ。
ちなみにアレアトは他の兄妹達に連れ去られている。
5年ぶりの帰省ということもあり、弟の冒険を沢山聞きたいとのことで。
「いえ......前からアレアトはきっと、いい家で育ったんだろうなと.....思っていたので.....」
「「え、うそ....」」
カタルシスとアレーティアがシンクロする。
「えっと.....ご飯を食べる時とか、お偉い人に会う時とかの行儀が凄くいいから.....きっとそうなのかなって......」
「あ〜....言われてみればそうかも....?」
確かにお行儀の面では3人よりもはるかに良い。
そこからアレアトの素性を想定するとは.....。
「そういえば、ずっと気になっていたんだけれど」
アレーティアが話題を変える。
「アレアトは昔から本とか伝承を読んだり集めたりするのが好きだったの?」
意外な事を聞かれたからか、イルーガが鉄砲豆を食らったかのような顔になる。
「そうねぇ.....確かに昔からそうだったわね」
いつの間にか帰ってきていた長女のクレイアがイルーガより先に答える。
「けれど、昔は熱心ではなかったわ」
「昔は......?」
何か、火に薪を焚べるかのような出来事があったのだろうか?
「.....3人は、「黒雨の魔女」を知っているかしら?」
「確か、冒険者教会からも指名手配が出ている人よね...?」
『黒雨の魔女』
彼女が現れる時には必ず、黒い雨が降ることからその名がついた魔術師。
イフィリオスの中でも屈指の魔術師であり、アレーティアが言った通り、冒険者教会から指名手配されている。
「15年も前の事でした。1度、首都で黒雨が降った日がありました」
「......っ!?」
「悪い予感がしたのか、父様が家の中をくまなく探すよう連絡してきました」
「だから、家族総出で家の中を探したんだ。けれど、どこにも魔女はいなかった。
最後に残ったのが、その時はアレアトの部屋だったんだ」
「まさか....?」
「そう、魔女はアレアトの部屋にいたの。まだ幼かったアレアトに何を話したのかは分からない。けれど、魔女はアレアトに1つの物を渡したわ」
「マジックアイテム......」
「アレーティアは何か知ってるのか?」
言葉を零したアレーティアに問いかける。
「1度、あいつに聞いたの。それはどこで手に入れたの?って。そしたら、小さい頃に誰かから貰ったっていってたわ」
「きっと、その誰かが黒雨の魔女ということまでは覚えていなかったのでしょう」
と、そこへー
「何を話しているんだい?」
帰ってきたアレアトが聞いてきた。
「ふふっ。アレアトの小さい頃の話よ」
「ちょ....っ...恥ずかしいからやめてくれよ...姉さん」
顔をあからめるアレアトを、意地悪っぽく笑うクレイア。
「そういえば、ここへはいつまでいるの?」
「えっと...まだいるつもりだ。ここの方が依頼とかが集まりやすいからね」
「そう。それならお部屋を準備しないとね」
ニコニコの笑顔で部屋を出ていくクレイア。
「その.......自由に使って構わないから...。何かあったらオレや兄さん姉さん達に言ってね」
苦笑いしながら頭を搔く。
それではお言葉に甘えるとしよう。




