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アソゼネ ソルロンタン

伏見の初夏は、空気が重い。

子どもたちは汗をかいているのに、温かいものを食べる。


東九条でカクテキを見つけた。

角が立っている。

噛むと音がする。

白い鍋に、赤を足す理由になる。


店のシャッターは半分だけ開いている。

屈まないと入れない高さだ。


今日は先に子どもがいる。

三人。

椅子の座り方で、家庭環境がだいたいわかる。


「今日、白?」

「白だ」

「何味?」

「最初はない」


器を並べる。

飯、白いスープ、ネギ。


「塩、どれくらい?」

「好きにしろ」


一番小さいのが先に入れる。

多い。

止めない。


「しょっぱい」

「だな」


笑いが起きる。

失敗は、ここでは軽い。

スープを足してやる。


シャッターの外に影が立つ。

少し迷って、屈む。


入ってくる。


「いいですか」


子どもが見る。

すぐ戻る。


「ああ、座れ」


端に座る。

距離ができる。


器を出す。

白い。


女は塩に手を伸ばして、止める。

子どもを見る。


少しだけ入れる。


飲む。


「……あ、おいしい。」


それだけ言う。


子どもがカクテキを入れる。

赤が広がる。


女がそれを見る。

同じように一つ。


白が変わる。


スマホが奥で震える。

一度だけ、画面を見る。


――既読がつきません

――優しくすると距離を置かれますか

――次、どう動けばいいですか


閉じる。

伏せる。


最初は味をつけない。

全部入れると、他が死ぬ。


入口は軽くする。

誰でも入れるように。


塩は後からでいい。

効かせる場所は、決めすぎない。



子どもが飯を入れる。

スープに沈む。


女がそれを見る。

少し遅れて、同じように入れる。




「それもいい」

言うのは遅らせる。

先にやらせる。


「……これ、好きです」


小さいのが言う。


「なんでおいしいの?」


「決まってないからだ」


「え?」


「自分で決めた気になるだろ」


子どもは笑う。

わかっていない。

でも飲む。


反応を見る。

強く出すと、戻れなくなる。

弱いままでも、続くやつは続く。


入口、接触、反応、継続。

ここまでは軽くていい。

重くするのは、もう少し後だ。


女は黙っている。

同じところを見ている。


「おかわり」

子どもが言う。


「いいぞ」


器を出す。


女は言わない。

でも、少し前に出している。


同じ鍋から、同じように。


同じでも、同じ味にはならない。


どこで効いたかは、本人にしかわからない。

わからないままでも、続く。


誰も確かめない。

確かめなくても、困らない。


白い鍋は、底が見えない。



火は弱い。

消してはいない。

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