コンプリートノンモデル
あの人、また昇進したらしい。
ちゃんとは見てないけど、
名前、上にあった。
あの人は、削る人だと思ってた。
あんまり喋らないで、
変なこと言わないで、
ちゃんと収まる人。
そういう人って、
上には行かないと思ってた。
途中でいなくなるか、
そのまま誰にも触られないまま、
どこかに置かれる感じ。
でも、残ってた。
削ってたのに、残ってた。
ちょっと、意味わかんない。
七条堀川で止まる。
信号の音、ちゃんと同じ間隔で鳴ってる。
ガラス越しに、興正寺の桜。
花はほとんどなくて、
葉だけ。
誰も見てないのに、
まだそこにある。
あの人、ああいうほうかも。
咲いたほうじゃなくて、
残るほう。
私は、たぶん違う。
途中でやめるし、
最後までやらないし、
ちゃんとしたことも言ってない。
でも、なんか成立する。
される。
されてしまう、のほうが近い。
拾われて、
整えられて、
いい感じにされる。
あれ、どこまで私なのか、よくわかんない。
最初だけかもしれないし、
全部かもしれないし、
どっちでもないかもしれない。
まあ、どっちでもいいけど。
評価は来る。
でも、持って帰る場所がない。
あの桜、ここからでも見えるのに、
私とは関係ない。
ファミリーマートでチキン買う。
別にお腹すいてない。
ただ、ちょっと悪そうなやつ、
食べたかった。
ちゃんと噛んで、
ちゃんと飲み込むやつ。
紙袋、ちょっとあったかい。
油のにおい、ちゃんとしてる。
チキン齧る。
なんか、ちょっと安心する。
脂ついた指、なめる。
ネイルのエナメルみたいな匂いする。
スパイスっぽい。
匂い、ちゃんとする。
明日、胃もたれする。
たぶん。




