表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/96

ブロークンロールモデル

あの子、ずるいと思う。

いや、ずるいって言い方も違うか。

うまい、でもないし、努力してないわけでもない。


ただ、成立してる。


それがいちばん腹立つ。

私はちゃんとやってる。

朝起きて、ちゃんと間に合う電車に乗って、

人に迷惑かけないようにして、

言われたことは一回で理解して、

変なこと言わないように、ちゃんと考えてから喋る。


それでも、なんか、うまくいかない。

あの子は違う。


遅刻するし、話は飛ぶし、

何考えてるかわからない顔してるのに、

なぜか周りが勝手に意味を与える。

「そういう子なんだよね」って。

それ、こっちもやってみたことある。


ちょっとだけ崩してみる。

返事を遅らせたり、

言葉を濁したり、

グチャグチャな顔をしてみる。


でもダメだった。

ただの「感じ悪い人」になるだけ。


同じことやってるはずなのに。

たぶん、量が違うんだと思う。

壊れてる量。


でも、それだけじゃない。

あの子は、壊れてるのに、

ちゃんと立ってる。

落ちそうで、落ちない。

その位置に、ずっといる。


私は、魂が丈夫だから壊れきれない。

でも、ちゃんともしきれない。

中途半端な場所で、

いつもどっちかに寄ろうとして、失敗する。


あの子は、寄らない。

そのままいる。

それができるのが、たぶん才能。

この前、駅前で見かけた。

夜だった。

コンビニの光の中で、チキンかじってた。


あの子だけ、少し輪郭が曖昧だった。

光に溶けてるみたいで、

でも消えない。


ずっとそこにいる。

あのとき、やっとわかった。

あの子は、自分を消してない。

壊れも、ちゃんとしてない部分も、

全部そのまま置いてる。


削ってない。


整えてない。


私は、削る。

はみ出したところを切って、

余計なこと言わないようにして、

できるだけ角が立たないようにする。

その結果、何も残らない。

あの子は、残る。


壊れと、正気と、

その正気が壊れを少しだけ隠す感じ。

全部がちょうどいいところで止まってる。

私は、正気が多すぎる。


だから、全部消える。

あの子は、未確定代数なんだと思う。


ちょうどいいところ。

崩れないけど、

整いすぎない場所。

ずるい。

本当に。


でも、ああいうのを見せられると、

ちょっとだけ思う。

ちゃんとしなくても、

成立する世界があるんだって。

それが許されるなら、

私は今まで、誰との約束を守っていたんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ