アルバイトを完遂せよ-37
「バル。手首の拘束を解いてくれ」
バルナスが呪文を調整し、戦士の手首の拘束を解いた。レイブンは戦士の両手で心棒を抱かせるようにし、手首を縛り上げた。そのまま、胴体と腕を心棒に縛り付けていく。
「次は、足だ。膝を曲げて、少し外側に開いて……」
M字開脚の姿勢にし、膝の下とふともも、足首とふとももを縛り付けていく。両足の処置が終わったところで、ふとももと胴体を縛り付けた。
「仕上げは、額と首だ」
顔を上げさせ、額を心棒に縛り付けた。さいごに、ゆるく首を縛りつけ、拘束が完了する。
「良い仕事じゃの」
「騒がれても面倒だ。猿ぐつわをしておくか」
戦士から剥がしたマントの端を切り取り、口の中に押し込んだ。ロープで縛り、簡易の猿ぐつわが完成した。
「さて、もう一仕事か」
次は神官戦士である。レイブンとガロンは、全く同じ手順で拘束を完了させた。
「こいつのマント、至高神・ヴェリスラーの聖印が刺繍されてるぜ」
「ヴェリスラー信者であることを、心から誇りに思っているのであろうよ」
続いたガロンの言葉は、なかなかに辛辣だった。
「正義のためであれば、手段を選ばないところなど、狂信的なヴェリスラー信者のようじゃしの」
レイブンは無言でマントの端を切り取り、口の中に押し込んだ。
「終わったぞ」
レイブンの声に盗賊が答えた。
「それなら、オレの拘束を解けや。あと、視力の回復もたのまぁ。残りの報酬、受け取らないと帰れねぇからな」
「回復を」
バルナスの指示で、若い女性のほうの神官が盗賊に回復魔法をかけた。盗賊の正面には立たないように必要以上に身体さばきに気を使っているようだ。
「終わりました」
レイブンはジュールと場所を代わった。バルナスにうなずいて見せる。バルナスはルーンロープの呪文を解除した。盗賊はゆっくりと立ち上がり、両手を上に上げた。
「なかなかに刺激的な一日だな」
「ここでのことは、他言無用に願います」
頭を下げてみせるバルナス。盗賊は肩をすくめた。
「あんたの職業について、吹聴しなければいいんだろぅ?」
「まあ、そうですね」
微笑みあう2人。周囲の気温が確実に3℃は下がった。レイブンにはそう感じられた。
「わかったぜぇ」
盗賊は神官戦士のポーチとリュックを漁った。
「あんれぇ? 現金がねぇぞー」
契約時には確かにあったハズの、現金や宝石が入っていない。念のため戦士の荷物も漁ったが、同じ結果だった。
「これは困ったかなぁ」
彼らの武器と荷物を抱えこみながら、盗賊は頬を指先でかいていた。




