アルバイトを完遂せよ-35
「完全に拘束するのは、それなりに手間なんだぞ」
レイブンは肩をすくめると、他のメンバーの武器を持ち、戻ってきた。
「おっさん、ねえちゃん、武器を装備しておけ」
「盗賊さん。あなたは、敵ですか? 味方ですか?」
バルナスが盗賊に尋ねた。彼は1人だけ、意識を失っていない。
「敵でも、味方でもねえよ」
盗賊が答えた。
「こいつらには、つい最近雇われたんだ。いっしょに戦ったのは、今日が始めてだ」
「いちおう、ギルドに裏を取らせてもらってもいいですか?」
バルナスが尋ねると、盗賊は答えた。
「構わねぇよ。白イタチの名前で問い合わせてくれ」
バルナスは冒険者の店の親父に声をかけた。
「お願い出来ますか?」
「心得た」
冒険者の店の親父は、演習場を出て行った。
「彼らを拘束するには、なにが必要ですか?」
バルナスの問いにレイブンが答えた。
「ロープと杭がいる。完全に固定しないと、怖くて尋問なんて出来ねぇからな」
「ロープでグルグル巻きでは、ダメなんですか?」
「跳ね回られたり、蹴りをくらったり、頭突きをくらったりするんだぞ。ダメに決まってるじゃねえか」
レイブンは呆れた様子で答えた。
「難しいものですね」
思案顔のバルナスを無視し、レイブンが端の方で何か探している。
「これが使える」
レイブンが持ってきたのは、武術の練習で使うカカシ用の心棒である。心棒に藁を巻いてカカシにし、それに鎧を着せ、攻撃の的にするのだ。
心棒を床に空けられたカカシ用の穴に差し込み、軽く蹴りを入れてみる。どうやら、簡単には抜けないようだ。
「あとは、ロープだ」
「親父さんが戻ってきたら、心棒とあわせて購入しましょう」
「購入? 尋問が終わったら、殺すんだろ? 借りるだけでいいんじゃねえの?」
レイブンの問いに、バルナスは冷たい微笑で答えた。レイブンはなんとなく背筋が寒くなったのを感じていた。
「だから、その笑い方をやめろって。悪い魔法使い、そのものだぞ」
「僕は、悪い魔法使いですよ?」
そう言うと、ルーンロープの呪文を掛けなおした。持続時間が切れ掛かっていたのだ。
冒険者の店の親父が戻ってきた。
「この盗賊の言ってたことは、本当だ。彼は完全に部外者だ」
「わかったら、ちゃっちゃと拘束を解けや。こいつらから残りの報酬受け取ったら、とっとと退散してやるよ」
「まだだ」
レイブンである。




