アルバイトを完遂せよ-33
「いかせるかっ!!」
勘を頼りに剣を振るう。手ごたえはあったが、動きを止めるには到らなかったようだ。
「やっべっ!!」
剣を投げ捨て、思いっきり斜め前方に跳ぶ。レイブンが飛びのいた空間を、電撃が切り裂いていった。
時間はほんの少しだけ遡る。
ガロンの角度からでは、閃光弾の光は直視しなくて済んだ。そのままメイスを相手の神官戦士の鎧に叩きつける。
“ゴンッ……”
ものすごい音がして、神官戦士の身体が吹っ飛んでいく。そのまま地面に叩きつけられ、気絶した。
「金属鎧には、打撃武器。常識じゃ」
ドヤ顔のガロンだが、純粋な打撃武器では、ここまでのダメージは与えられない。武器を持つ手に最大出力のフォースを準備し、インパクトの瞬間に叩き付けたのだ。
「フォース・ハンマー……と言ったところかの」
時間はほんの少しだけ遡る。
バルナスは戦士がポーチに手を突っ込んだ瞬間、硬く目をつぶり、顔の前で両腕をクロスさせた。閃光が治まり、目を開けると、そこにはこっちに向かって突っ込んでくる戦士の姿があった。
「いかせるかっ!!」
レイブンが戦士に攻撃しているが、仕留め切れなかったようだ。左腕にダメージを喰らったようだが、勢いは止まらない。今からでは、呪文を詠唱しても間に合わない。しかし、バルナスは冷静だった。左手を思いっきり突き出し、こう叫んだのだ。
「電撃っ!!」
左手につけた指輪から、電撃が迸る。電撃の呪文 (ライトニング)を封じたコモンルーンが、キーワードに反応して封じられていた呪文を発動させたのだ。電撃は戦士に直撃すると、そのまま貫通して行った。レイブンが慌てて斜め前方に跳んだすぐ脇を掠めていく。
コモンルーンとは、古代語魔法をアイテムに封じ込め、共通語のキーワードで発動するようにしたマジックアイテムであり、賢者の学院で販売されている。通常は魔術が使えない者が魔術を使うために購入するものなのだが、バルナスは詠唱が間に合わなかったときの保険として装備していたのだ。
ちなみに、ライトニングのコモンルーンは一般には流通していない。付与魔術の研究の一環として完成してしまったのだが、市場に流すのは危険という判断で死蔵されていたのだ。バルナスがそれを譲り受けた経緯については、ここでは割愛する。
ジュールが右手でバルナスの左腕をつかんだ。彼女はどうやら視界をやられているらしい。バルナスの身体を利用して、魔法の照準をつけている。
『C!!』
左手を思いっきり突き出し、単音節の神聖語を唱えた。フルパワーのフォースが戦士に直撃した。




