アルバイトを完遂せよ-22
バルナスが小さくつぶやいた。
「こんなところにも、黒き竜王の呪い、ですか……」
その表情には、諦めと悲しさが同居していた。
「さすがに恨みますよ、竜王陛下……」
「仲裁役を準備できないのなら、攻め手の武器は無しにしてくれ」
レイブンが口を挟んだ。
「うーむ」
冒険者の店の親父が唸った。
「これは講習だからなぁ。攻め手が武器無しってワケにも……」
「だったら、俺たちだけでも真剣を使わせろ。当然、武器の研ぎ直し費用はそっち持ちだ」
「それはそれで、受講者が納得しないぞ」
苦渋の表情の冒険者の店の親父。レイブンはこの依頼を断るつもりになっていた。危険度が高すぎる。
「この依頼、受けられないな」
レイブンがそう言った次の瞬間、意外な人物の意外な発言に、その場の空気が凍りついた。
「断るのはまだ早いですよ」
バルナスだ。
「おいおい、危険すぎるぞ」
呆れた様子のレイブン。他の2人も似たような表情だ。
「報酬の20%増額と、僕たちが死なないための保険をかけて頂けるのならば、この依頼、受けてもいいと思いますよ」
しばらく間があった。
「保険っていうのを、聞こうか」
冒険者の店の親父が尋ねた。
「中程度の魔晶石を3つ。こちらのマジックユーザー全員に持たせます」
魔晶石。古代魔法王国時代の貨幣。石の中に魔力が込められたもの。この石を使えば、魔法を掛ける術者の精神力に、石の中の魔力を追加できる。つまり、外部魔力タンクである。
蛇足ながら、魔晶石の魔力は使い捨てである。現代の技術では魔晶石に魔力を充填することは出来ないのだ。
「それは……」
冒険者の店の親父の眉間に深いしわが寄った。
「こちらのリスクを考えたら、安すぎるぐらいですよ」
なんでもない事のように言い放つバルナス。
「むむっ」
冒険者の店の親父は小さな唸り声を上げると、彼らの提示した条件を検討し始めた。
「その条件を全て飲もう」
冒険者の店の親父は彼らの条件を全て飲むことに同意した。
「最後にもう一つだけ」
バルナスだ。




