第二十九話 五ボルトを、この世界の数字にします
グレンが椅子へ座り直すのを見て、結衣も作業台へ身を寄せた
中央には針のついた測定器が置かれ、その隣にはレオルが持ってきた小さな発光器具が並んでいる
器具を一つ繋いだ時と二つ繋いだ時では針の止まる位置が違った。それだけなら何かの強さを測っているようには見えるものの、それが地球でいう電圧なのか、マナの量なのか、それとも結衣の知らない別の何かなのかまでは分からない
細い針をしばらく見つめてから、結衣は作業台の端に置かれていた紙を引き寄せた
「AI先生、これが何を測ってるのか分からないまま、五ボルトを探すのは駄目だよね」
『はい。測定対象を特定しないまま、指針位置を電圧へ対応させることは推奨できません』
「だったら、まずは同じ石で違う道具を動かしてみる?」
話しながら、先ほど使った発光器具の形を紙へ描いていく
上手な絵ではない。それでも実物と見比べれば何を描いたのかは分かる程度に形を整え、その横へ測定器の針が止まった位置を書き加えると、結衣は発光器具から紙、紙から測定器へと指を動かした
「これがこれで、この時はここ」
日本語そのものは伝わらなくても、グレンの視線は結衣の指先を追っていた
結衣が二つ目の状態を示そうともう一度発光器具を指したところで、グレンが紙へ手を伸ばす
そのまま結衣が描いたものの横へ、二つ繋いだ時の針の位置を書き加えた
「そう、それ」
思わず笑顔になった結衣に、グレンは一度だけ視線を向けると、そのまま立ち上がって棚へ向かった
「伝わったみたい」
『はい。少なくとも、器具と指針位置を対応させて記録する意図は共有できたと考えられます』
「こういう時はAI先生よりグレンの方が話早いかも」
『私は紙へ記入できません』
「そういう意味じゃないってば」
苦笑している間に、グレンは別の道具を持って戻ってきた
今度のものにもマナリスを収める窪みがあるものの、発光器具とは違って平たい金属板が伸びている
グレンがマナリスを入れて操作すると、その金属板の上へ手をかざした
「もしかして、熱くなるやつ?」
確かめようと手を伸ばした瞬間、グレンの手が横から出てきて結衣の指先を止めた
「え」
少し驚いて顔を上げると、グレンは何も言わず、直接触れない高さまで結衣の手を持ち上げるように示す
「あ、触ったら熱いんだ」
言われた通りに少し離して手をかざすと、掌へじんわりと熱が届いた
「ほんとだ、あったかい」
思わず頬を緩める結衣の前で、グレンは発熱器具を測定器へ繋いだ
針が動き、発光器具とは違う位置で止まる
結衣がその場所を紙へ書き写している間に、グレンは今度はマナで回転する道具を持ってきて、同じように測定器へ繋いだ
また違う場所まで針が動く
「全部同じにはならないね」
『はい。同一のマナリスを使用していても、接続する機構によって指針位置が変化しています』
結衣は三つの記録を見比べた
「じゃあ、この針って石の中にどれくらいマナが残ってるかを見てるだけじゃない?」
『その可能性は低いと考えられます』
「それなら、やっぱり電圧――」
期待のまま言い切りそうになって、結衣は自分で止めた
似ているから同じだと思い込むのは危ない。特に今回は、最後にスマートフォンへ繋ぐためのものを調べている
結衣は口を閉じたまま紙へ視線を戻し、さっき書いた針の位置をもう一度確認した
「……まだ決めない方がいいね」
『はい』
「ちゃんと確かめてからにする」
その言葉を聞いていたわけではないだろうが、グレンも次の確認へ移った
発熱器具へ同じマナリスを入れたまま、側面の部品を少し動かしてから測定器へ繋ぎ直す
針が先ほどより右へ動いた
結衣が顔を上げると、グレンはもう一度同じ部品を調整する
今度はさらに先まで動いた
「同じ道具なのに変わるんだ」
『はい。この測定器は、機構側の状態変化にも応答しています』
結衣は紙へ三本の線を書き足しながら、少しずつ離れていく針の位置を眺めた
「電圧計だったらすごく助かるんだけど」
『現段階では断定できません』
「分かってるよ。だから調べてるんでしょ」
そう答えたところで、向かいにいたグレンが作業台の端へ手を伸ばした
その先にあるものを見た瞬間、結衣の手が止まる
自分たちが作った発電装置だった
「それも試すの?」
グレンは発電装置を持ち上げ、測定器へ視線を向ける
やはり繋ぐつもりらしい
「でも、さっき火花出たよ」
結衣は二本の指を近づけ、その間で何かが弾けるように指先を動かしてみせた
グレンはその仕草を見ると、すぐに導線を繋ぐのではなく、装置へ入っていたマナリスを取り外した
棚から持ってきたのは、内部の青色が少ないものだった
さらに歯車も交換し、円盤がゆっくり回る組み合わせへ変えていく
そこまで見て、結衣も何をしようとしているのか理解した
「一番弱いところから試すんだ」
『そのように見えます』
「それなら……」
邪魔にならないよう少し離れると、グレンがマナリスを収めた
円盤がゆっくり動き始める
先ほどのような青白い火花は見えない
グレンは二本の導線を測定器へ近づけたものの、接続する直前で手を止め、結衣を見た
まるでこれでいいのかと聞かれているようで、結衣は困って眉を下げた
「そんな顔されても、私も分かんないよ」
グレンも眉を寄せる
「でも、壊さないようにね」
測定器を指し、両手で大切なものを扱うような仕草をすると、それだけは伝わったらしい
グレンは一度頷いてから、慎重に二本の導線を繋いだ
針が僅かに右へ動く
その瞬間、結衣は無意識に作業台へ顔を近づけていた
「動いた」
グレンも針を見たまま、歯車の位置を変えて回転を少し速くする
針がさらに右へ進んだ
もう一段階速くすると、それに合わせるようにまた動く
結衣の視線が円盤と針の間を往復する
一度なら偶然かもしれない
けれど、回転を変えるたびに針も同じ方向へ動いている
「AI先生、回すの速くしたら、針も大きく動いてるよね」
『はい。発電機の回転速度上昇に伴い、指針が一方向へ変化しています。この挙動は、電圧を測定しているという仮説と整合します』
「じゃあ……さっきより電圧計の可能性は高くなった?」
『はい』
「やった」
胸の前で小さく拳を握る
ようやく一つ前へ進めた気がして、そのままグレンを見ると、彼はもう結衣の方を見ていなかった
自分で回転を遅くし、針が戻るのを確認すると、今度はまた速くする
針が進む
それを何度か繰り返してから、紙へ新しい印を書き加えた
結衣に頼まれて確認しているというより、グレン自身が結果を気にし始めているように見えた
「ねえ、AI先生。グレンもこれ面白くなってきてない?」
『心理状態を断定できる情報はありません』
「でも、自分から何回も試してるよ」
『その行動は確認できます』
「だったらちょっとはそうかもって言ってよ」
『関心を持っている可能性はあります』
「ほら」
結衣が満足そうに笑うと、グレンが何をしているのかとでも言いたげにこちらを見た
「なんでもないよ」
笑ったまま首を横に振り、紙へ視線を戻す
すると、さっきまでの嬉しさが少しだけ落ち着いた
測定器が電圧を見ている可能性は高くなった
けれど、針の位置には結衣が読める数字がない
仮に現地の数字が書かれていたとしても、それが何ボルトに当たるのかは分からない
「ここがまだ繋がってないんだよね」
『何を指していますか』
結衣は紙の上に測定器を描き、その横へ数字の五を書いた
「この世界の針と、私の知ってる五ボルト」
『はい。対応関係を確立するには、既知の電圧源が必要です』
「強さが分かってる電気を一回これに入れれば、その時の針の場所が基準になる?」
『測定器が電圧に対して適切に応答しているという前提であれば、校正に利用できます』
「じゃあ……」
結衣の視線が胸元へ落ちた
そこには地球から持ってきたスマートフォンがある
規格も分かっている
内部には電池も入っている
けれど、それを測定器へ繋ぐ方法を考え始めるより早く、結衣は首を横へ振った
「これは使わない」
『妥当です』
「基準を作るために壊したら意味ないもん」
ケースの上から一度だけ撫で、胸ポケットへ戻す
他に地球から持ってきた電気製品がなかったかと考えてみても、身につけているのはパジャマと靴下とスニーカーくらいで、電池どころか金属製の小物さえほとんどない
「乾電池一個でも持ってればよかったのに」
『既知の公称電圧を持つ電池があれば、比較基準として利用できた可能性があります』
「そんな都合よく持ち歩かないよね……」
自分で言って肩を落としかけたところで、胸ポケットの中にあるスマートフォンがもう一度意識へ引っかかった
「そういえばさ、スマホの中の電池って何ボルトなの?」
『一般的なスマートフォン用リチウムイオン系バッテリーは、単セルで三・数ボルト台の公称電圧を持ち、充電状態によって端子電圧が変化します。ただし、この端末内部のセルを基準として利用するには、分解または専用の測定手段が必要です』
「分解はしない」
今度は考える間もなく答えた
スマートフォンが動いているからこそ、AI先生とここまで来られた
その端末を開けるという選択肢は、今の結衣にはない
「だったら、地球で強さが分かってる電気を、こっちの材料で作れない?」
『化学電池を再現する方法があります』
「あ、レモン電池みたいな?」
『原理としては同様です。異なる種類の金属と電解質を組み合わせることで電位差を生じさせます』
「それなら学校で見たことある」
少しだけ記憶が戻ってくる
果物に二種類の金属を刺し、線を繋ぐ実験だった
どうして電気が出るのかまで説明しろと言われれば困るが、少なくとも何をしていたのかは覚えている
「それなら一個作れば基準になる?」
『材料の純度、表面状態、電解質の濃度などによって実際の端子電圧は変化するため、一つだけで精密な基準とすることは推奨できません』
「また簡単にはいかないかぁ」
結衣は残念そうに息を吐いたものの、すぐに紙へ視線を戻した
正確な一個が作れないなら、同じものを増やして比べればいいのではないか
そう考えたところで、学校で習ったもう一つの記憶が繋がった
「じゃあさ、同じ電池を何個か作って繋いだら?」
『直列接続ですか』
「たぶんそれ。二個にしたら電圧が足されるやつ」
『はい。同条件の電池を複数作成し、一個、二個、三個と直列接続した際の指針変化を比較すれば、測定器の応答を検証する材料になります』
結衣は紙へ並べて三つの容器を描き、それぞれを線で繋いでみた
「一個の時にここ、二個ならこの辺って増えていけば、針が何を見てるかももっと分かるし、目盛りの意味も少しずつ作れる?」
『はい。ただし、それだけでスマートフォンへの接続が安全になるわけではありません』
「そこは分かってる。まだケーブルも切らないし、スマホにも繋がない」
『はい』
「まず測れるようにする」
結衣は描いた三つの容器のうち、一つを指先で軽く叩いた
「で、電池って何使うんだっけ」
『代表的な例として、銅と亜鉛などがあります』
「銅はこれっぽいよね」
発電装置にも使った赤みのある金属線へ手を伸ばす
問題はもう一方だった
「亜鉛……」
工房の棚を見回す
銀色や灰色の金属はいくつもある
けれど、どれを見ても結衣にはただの金属にしか見えない
「AI先生、亜鉛って見たら分かる?」
『外観のみで確実に同定することは困難です』
「だよねぇ……私も分かんない」
結衣が困ったように棚を見回していると、その視線を追っていたグレンが立ち上がった
棚の前で何種類かの金属を選び、まとめて作業台へ持ってくる
「え、選んでくれたの?」
並べられたのは、赤みのあるものだけではなかった
黄色味を帯びたものや、明るい銀色、白っぽいもの、暗い灰色まで、それぞれ見た目の違う金属片が並んでいる
結衣が一つずつ指しながらグレンを見ると、彼は違う種類だと示すように頷いた
「ありがとう。じゃあ、この中から調べれば――」
椅子へ座り直そうとした結衣の前で、グレンが首を横へ振った
「え、違うの?」
金属を間違えたのかと思ったが、グレンが指したのは棚ではなく工房の外だった
結衣もつられて入口の向こうを見る
差し込んでいる光が、工房へ来た時よりずっと低い
「あ……時間?」
スマートフォンを取り出して画面を確認すると、想像していたよりかなり時間が経っていた
「うそ、もうこんな時間?」
口にした途端、それまで作業へ集中して忘れていた空腹まで一緒に戻ってきて、結衣は思わずお腹へ手を当てた
「……言われたら急にお腹すいてきた」
『最後に食事を確認してから相応の時間が経過しています』
「それなら途中で教えてくれてもよかったのに」
『充電手段の確立を優先していると判断していました』
「私が途中で倒れたら、充電できても使う人いないでしょ」
『その指摘は妥当です』
「ほんと、そういうところだよね」
呆れたように言いながらも、結衣は笑っていた
スマートフォンを胸ポケットへ戻す頃には、グレンも工具を元の場所へ片づけ始めている
どうやら今日は本当にここまでらしい
結衣は名残惜しそうに作業台を見ていたが、グレンが自分たちのために作った発電装置を片づけようとしているのを見たところで、別のことに気づいた
表情が固まる
「……あ」
『どうしましたか』
「私、グレンに何も払ってない」
発電装置を作ってもらっただけではない
何時間も工房を使わせてもらい、材料も使い、壊したくないはずの測定器まで持ち出してもらった
それなのに、結衣は電気のことばかり考えて、対価を一度も確認していなかった
『グレンから支払いを求める行動は確認されていません』
「だからって、ただでやってもらっていいことにはならないでしょ」
結衣は慌てて硬貨を取り出した
掌にあるのは三枚
そのうち一枚は、バルクのところで自分が初めて働いて得たものだ
この町で技術者へ仕事を頼めばいくら必要なのか、結衣にはまだ分からない
それでも何も渡さず帰るのは違う気がして、一枚を摘まんでグレンへ差し出した
「今日の分」
グレンが硬貨を見る
結衣は作業台を指してから、もう一度硬貨を示した
「これ、グレンに」
今度は意味が伝わったらしい
けれどグレンは受け取らず、首を横へ振った
「……足りない?」
不安になって二枚目へ指を伸ばすと、グレンは少し強めに首を振り、差し出していた一枚まで結衣の掌へ押し戻した
「いらないの?」
グレンは答える代わりに、作業台の発電装置を指した
次に針のついた測定器へ指を移し、それから自分の胸を軽く叩く
結衣はその動きを追いながら、すぐには口を開かなかった
発電装置を指した意味
測定器を指した意味
そして最後に自分を示した意味
考えているうちに、少し前までグレンが自分から何度も回転速度を変え、針の動きを記録していた姿が重なった
「……グレンも、これの続きが気になるの?」
『その解釈と矛盾する行動は確認されていません』
結衣は発電装置を指してから、少し笑ってグレンを見る
「面白い?」
グレンはしばらく結衣を見返していた
やがて何かを誤魔化すように鼻を鳴らし、顔を横へ向ける
その反応に、結衣の目元が柔らかくなった
「やっぱり」
『断定はできません』
「もう、これはいいの」
結衣は笑いながら硬貨をしまいかけたものの、途中で一度手を止めた
「でも、ずっとただでお願いするつもりはないからね」
細かな意味まで伝わらないことは分かっている
だからそれはグレンへというより、自分自身へ言い聞かせるための言葉だった
言葉がもう少し分かるようになったら、材料代も作業代もきちんと確認する
そう決めて硬貨をしまうと、グレンが今日使っていた紙を持ち上げた
発光器具や発熱器具を繋いだ時の針の位置、発電装置の回転速度を変えた時の結果が、結衣とグレンの印で残されている
渡されるのかと思って手を伸ばしかけたが、グレンは紙を自分の棚へ丁寧にしまった
結衣の手が途中で止まる
「……そっちで持っておくんだ」
そのまま棚を見つめているうちに、少しだけ期待が膨らんだ
今日限りなら、結果を残しておく必要はないのではないか
けれど、それも自分に都合よく考えているだけかもしれない
結衣は迷った末に自分を指し、次に工房を指した
「私、またここに来てもいい?」
グレンが首を傾げる
「えっと……明日って、どうやって伝えるの」
小さく呟きながら、一度入口を出る仕草をし、少し間を置いてから戻ってくるように指を動かす
最後に自分と工房を交互に指した
「また、来る」
今度はグレンの表情が変わった
結衣の指先を見てから工房の中を指し、短く何かを言って頷く
意味が届くまで一瞬かかった
「……来ていいの?」
もう一度尋ねるように自分と工房を指す
グレンが再び頷いた
結衣の顔がぱっと明るくなる
「ほんと? ありがとう!」
思わず声が大きくなった
グレンが僅かに顔を背けると、それまで近くで二人を見ていたレオルが何かを言って笑った
グレンがすぐに低い声で言い返す
結衣は二人の顔を交互に見た
自分の知らない言葉がいくつも飛び交い、意味は拾えない
「……今、絶対私のこと何か言ったでしょ」
『未習得語が多く、十分な翻訳はできません』
「こういう時に限って分からないの、すごく気になるんだけど」
少し唇を尖らせると、レオルがまた笑った
「ほら、やっぱり何か言った」
今度はグレンまで僅かに口元を動かしたように見えて、結衣はますます怪しそうな目を向けたものの、聞き取れないものは仕方がない
「……いつか分かるようになってやる」
『音声記録は継続しています』
「その時になったら今日のも教えてね」
『十分な言語情報が蓄積されれば、再解析できる可能性があります』
「じゃあ覚えとく」
そう答えてスマートフォンを胸ポケットへ戻し、黒い編み込みのストラップを指先で収めた
その感触に触れると、自然と今日作った発電装置へ視線が戻る
まだ、このケーブルを切る段階ではない
けれど工房へ来た時には、マナからスマートフォンへ使える電気を作れるのかさえ分からなかった
今は、マナで生み出した回転から電気らしいものを取り出せるところまで進み、その強さを比べるために使えそうな測定器まで見つかっている
残っている問題は多い
それでも、次に何を調べればいいのか分からず立ち止まっていた時とは違う
結衣は作業台に並んだままの金属片を見てから、グレンへ向き直った
「明日は、これからだね」
金属片を指すと、グレンもそこへ目を向けた
意味を理解したのか、銀色の一つを指先で軽く動かしてから頷く
その反応が嬉しくて、結衣も頷き返した
「AI先生もお願いね」
『はい。候補となる金属の性質を確認し、化学電池に利用可能な組み合わせを検討します』
「うん、一個ずつやろう」
レオルが工房の外へ歩き出したので、結衣もその後を追った
入口を越えたところで、何となく気になって振り返る
グレンはもう片づけを終えたと思っていた
けれど彼は棚へしまったばかりの紙をもう一度取り出し、測定器の針を確かめながら何かを書き足していた
結衣は呼びかけず、その姿を少しだけ見つめた
自分が頼んだからというだけではなく、グレン自身もあの装置の続きを知りたがっているのかもしれない
そう思うと、胸の奥にあった不安が少しだけ軽くなり、口元が自然に緩んだ
『どうしましたか』
不意にAI先生から尋ねられ、結衣は前を歩くレオルへ追いつくために足を速めた
「なんでもない」
そう答えた声には、自分でも分かるくらい嬉しさが混じっていた
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!
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