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未来が見えると勘違いされていますが、全部AI先生のおかげです 〜異世界で私だけが自考型AIを使えるので、今日も相談しながら生きていきます〜  作者: 紅茶伝
3章

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第二十八話 五ボルトの基準を作ります


 結衣が紙へ書きかけた数字の五を見て、グレンは当然のように首を傾げた


「……やっぱり分かんないよね」


 結衣は苦笑しながら、途中まで書いた数字を指先で隠した


 数字そのものを教えたいわけではない


 必要なのは五という数でも、五ボルトという言葉でもなく、スマートフォンへ入れても壊れない電気をグレンと共有することだった


「AI先生、まず何から説明したらいい?」


『グレンに電圧という概念が存在するか確認することを推奨します』


「そこから?」


『はい、異なる概念体系を前提として説明を進めると、誤解が生じる可能性があります』


「……確かに」


 結衣は紙を引き寄せた


 先ほど作った装置を指し、その先から伸びている二本の線へ視線を移す


 あの間に青白い光が走った


 電気らしいものができたことは嬉しい


 けれど、それがどれほど強いのか分からない


 結衣は二本の線を指し、次に両手を大きく広げた


「強い」


 今度は指先を少しだけ離す


「弱い」


 それを何度か繰り返す


 グレンが結衣の手を見る


 やがて作業台の装置へ視線を移した


「あ、何か分かった?」


 グレンは返事の代わりに、装置へ入っていたマナリスを抜いた


 別のマナリスを棚から持ってくる


 最初のものより、内部に見える青色が薄い


「マナが少ない?」


『外観上、内部の青色領域は先ほど使用した個体より少なく見えます』


 グレンがそれを装置へ入れる


 円盤が回り始めた


 先ほどより遅い


「あれ」


 結衣が身を乗り出す


 グレンは二本の線を近づける


 何も起きない


 さらに近づける


 ごく小さな音がして、一瞬だけ光が見えた


「弱くなった?」


『先ほどとは回転速度が異なるため、単純比較はできません。ただしグレンが出力の差を示そうとしている可能性があります』


「じゃあ、強い弱いみたいな考え方はあるんだ」


 結衣が嬉しそうにグレンを見ると、彼は今度は別の部品を持ってきた


 円盤と回転部分の間に取り付ける


 同じマナリスを使ったまま操作すると、今度は円盤の回転がさらに遅くなった


「これ……」


 結衣は目を細める


「回り方を変えられる?」


『歯車比あるいはそれに類する機構によって回転速度を変更している可能性があります』


「それなら調整できるじゃん」


 思わず声が明るくなる


 グレンは結衣の表情を見たあと、また別の歯車を示した


 どうやら、回転速度を変えること自体は珍しい技術ではないらしい


「AI先生、これで回転を調整して五ボルトにできない?」


『理論上、発電機の構造と回転速度が一定であれば、出力電圧を調整できる可能性があります』


「じゃあ――」


『ただし』


「……はい」


 先回りするように結衣の肩が落ちた


『五ボルトに到達したことを確認する基準がありません』


「そこだよね」


 結衣は作業台へ額をつけそうになり、寸前で止まった


「調整する方法はあるのに、どこまで調整したら五なのか分からない」


『はい』


「目盛りのない体重計で五十キロに合わせろって言われてるみたい」


『概ね近い問題です』


「困ったなぁ……」


 グレンがまた結衣を見る


 眉を下げて悩んでいる結衣をしばらく眺めたあと、何かを尋ねるように声をかけた


「うん?」


 結衣が顔を上げる


 グレンはスマートフォンを指した


「これ?」


 頷く


 続いて発電装置を指し、二本の線を示す


 最後にスマートフォンへ向けた


「繋ぐの?」


 結衣は意味を理解した瞬間、ぶんぶんと首を横へ振った


「駄目駄目、それは駄目!」


 スマートフォンを両手で抱える


 グレンが少し驚いて手を止めた


「これで試すのは絶対なし」


『同意します』


「一回失敗したら終わりだもん」


 結衣はスマートフォンを胸元へ戻した


 グレンには理由が完全には伝わらなくても、結衣が端末を危険にさらすことを強く嫌がっていることは十分伝わったらしい


 彼はそれ以上勧めず、腕を組んだ


「壊れてもいい何かがあればいいんだけど……」


 結衣は工房を見回した


「五ボルトで何か変化するもの」


『既知の電圧特性を持つ部品があれば基準として利用できる可能性があります』


「でも、この世界のものは何ボルトで動くか分からない」


『はい』


「地球から持ってきた電気製品はスマホだけ」


『現時点で確認されている範囲では、その通りです』


 結衣の手が止まった


「……スマホだけ?」


『はい』


 何気なく胸ポケットを見る


 スマートフォン


 ケース


 黒い編み込みのストラップケーブル


 自分がこの世界へ持ち込んだ電子機器と呼べるものは、それしかない


「充電ケーブルの中に、使えるものない?」


『ケーブルの仕様によります』


「これ百ワット対応だったよね」


『過去の接続履歴および製品情報の記録では、その仕様と一致します』


「だったら中にチップとか入ってない?」


 少し期待して尋ねる


『100ワット対応のUSB Type-Cケーブルでは、ケーブル能力を通知するための電子部品が搭載されている場合があります』


「それ使って五ボルト測れない?」


『電圧計として利用するための部品ではありません』


「そっか……」


 結衣はすぐに諦めた


 そもそもケーブルを開かなければ中身には触れられない


 今は切らないと決めたばかりだ


 無理に使う理由はない


 しばらく作業台を眺めていた結衣が、ふと顔を上げた


「AI先生」


『はい』


「五ボルトそのものを最初から作るんじゃなくてさ」


 言葉を探しながら、指を一本立てる


「もっと小さい、分かりやすい電気を一個作って、それを何個分って増やしていくのは?」


『既知の電位差を生じる基準セルを作成し、それを基準として比較するという意味ですか』


「……たぶんそれ」


 結衣自身、正確には分かっていない


「乾電池って、一本何ボルトか決まってるじゃん」


『一般的なアルカリ乾電池の公称電圧は1.5ボルトです』


「そう、それ」


 結衣の目が少し明るくなる


「乾電池みたいなの、この世界の材料で作れない?」


『原理的には可能です』


「ほんと?」


『異なる金属と電解質を利用することで、化学電池を構成できます』


「レモン電池みたいなやつ?」


『はい』


「あ、それなら知ってる」


 学校で見た記憶がある


 レモンへ二種類の金属を刺し、線を繋ぐ


 詳しい理屈は忘れていても、電気が生まれる実験だったことは覚えている


「それ作れば、一個何ボルトか分かる?」


『使用する金属の組み合わせと電解質の条件から、理論上の電位差を推定できます』


「推定?」


『実際の端子電圧は条件によって変動します』


「ぴったりじゃないんだ」


『はい』


 また簡単にはいかない


 けれど今度は結衣もすぐには落ち込まなかった


「でも、何もないよりは基準になる?」


『適切に条件を管理し、複数の方法で検証するのであれば、比較基準の一つとして利用できる可能性があります』


「じゃあやってみよう」


 結衣はすぐグレンへ向き直った


 問題はここからだった


「二種類の金属……」


 工房にはいくらでもある


 しかし、どれが何なのか結衣には分からない


 AI先生も映像だけでは確定できない


 結衣は先ほど銅らしいと考えた赤い金属線を指した


 続いて別の灰色の金属板を指す


「これと、これ」


 それから紙に容器を描き、中へ液体を入れる


 二種類の金属を差し込む


 グレンが覗き込む


「こうして……」


 二本の線を上へ伸ばす


 最後に、そこから何かが出るように指を動かした


「電気」


 グレンの眉間に皺が寄る


 当然だ


 マナリスも魔方陣も使わず、金属と液体だけで電気が出ると言われている


「信じてない顔してる」


『その解釈が正しいかは不明です』


「私でも知らなかったら信じないと思う」


 結衣は苦笑した


 それでもグレンは追い返さなかった


 紙を見て、赤い金属線を見る


 次に灰色の金属板を持ち上げた


 何かを言う


「材質かな」


『可能性があります』


「この二つでいい?」


『材質を特定できないため判断できません』


「じゃあ何がいいの?」


『比較的単純な化学電池としては、銅と亜鉛の組み合わせなどが考えられます』


「亜鉛……」


 名前は知っている


 見た目は分からない


「グレンに説明できない」


『金属そのものを特定する別の工程が必要です』


「また増えた」


 結衣は思わず笑ってしまった


 グレンが怪訝そうに見る


「ごめん、なんかもう、一個進むたびに次が出てくるから」


 困っているのに、少しおかしかった


 スマートフォンを充電したいだけだった


 日本にいたならコンセントへ充電器を挿して終わることを、この世界では電気を作るところから始めなければならない


 それでも、何も分からなかった時よりは確実に前へ進んでいる


「AI先生、他にもっと簡単な基準ない?」


『検討します』


 結衣は返事を待ちながら、何となく作業台の端へ視線を向けた


 そこには先ほどグレンが外したマナリスが置かれている


 青色の量が異なる二つ


 結衣はそれを見て、ふと手を止めた


「……これって」


『はい』


「マナリスの方は、どれくらい入ってるかグレンには分かるのかな」


 結衣は二つを指した


 一方は青色が多く、もう一方は少ない


 グレンはそれを見て頷く


 結衣が両方を並べ、量を尋ねるように指を動かすと、グレンは少し考えてから指を使った


 多い方へ五本


 少ない方へ二本


「数字?」


 結衣の目が動く


 グレンは別のマナリスを持ってくる


 それにも指で数を示す


「AI先生、これ記録して」


『記録します』


 青色の占める割合


 グレンが示した指の数


 複数のマナリスで同じことを繰り返す


 完全には一致しない


 それでも、グレンたちにはマナの量や状態を比較する何らかの尺度が存在しているらしい


「これ使えない?」


『マナ量と発電装置の出力電圧が単純な比例関係にあるとは限りません』


「そっか」


『ただし、同一の装置、同一の構成で条件を変化させるための指標としては利用できる可能性があります』


「つまり?」


『再現性のある実験条件を作れる可能性があります』


「……それ大事?」


『非常に重要です』


 結衣はすぐグレンへ向き直った


「じゃあ、それからやろう」


 まず同じ装置を使う


 同じマナリスの状態を使う


 同じ回転条件を作る


 そのうえで電気がどう変化するかを比べる


 五ボルトを直接見ることはできなくても、同じ条件なら同じような出力になるかもしれない


 結衣が身振りを交えながら伝えると、グレンも少しずつ意図を理解したらしい


 さっき使った歯車を並べ始めた


 大きさの違うものがいくつもある


「回転を段階で変えるんだ」


『その可能性があります』


 グレンが一番遅い組み合わせを選ぶ


 マナリスも先ほどより青色の少ないものへ交換する


「弱いところから?」


 結衣が尋ねるように指を動かす


 グレンが頷いた


「……ちゃんと分かってる」


 結衣の口元が緩む


 未知の電気をいきなり強くするのではなく、弱いところから試す


 その考え方だけは、言葉が十分通じなくても共有できた


 装置が再び回り始める


 今度は先ほどよりずっと遅い


 二本の線を近づけても火花は出ない


「何も見えない」


『発電していないとは限りません』


「分かってる」


 結衣は線を見つめた


 ここから先は、目だけでは進めない


 だから測る方法が必要になる


 結衣が紙へ目を戻そうとした時、グレンが突然立ち上がった


「え?」


 棚ではなく、工房の奥へ向かう


 木箱をいくつか動かし、そのさらに奥から細長い箱を引っ張り出した


「何それ」


 埃を払って蓋を開ける


 中には細かな工具と、薄い金属片を組み合わせた奇妙な器具が入っていた


 中央には細い針のようなものがある


 結衣はそれを見た瞬間、首を傾げた


「……メーター?」


『形状のみでは用途を特定できません』


 グレンは器具を慎重に取り出した


 二本の金属端子らしき部分がある


 その片方へ、マナリスを使った別の小さな道具を接触させた


 細い針が僅かに動く


「動いた!」


 結衣が思わず近づく


 グレンは次に別のマナリスへ交換する


 針の動く幅が変わった


「これ、何かの強さを測ってる?」


『その可能性があります』


 結衣の心臓が少し速くなる


「電気?」


『断定できません』


「でも針が動く」


 グレンは器具を指し、次にマナリスを指す


 何かを説明している


 AI先生が音声を記録する


『既知語との一致率が低いため、現時点では翻訳できません』


「お願い、頑張って」


『解析を継続します』


 結衣は器具へ顔を近づけた


 グレンが慌てて手で制する


「あ、ごめん」


 素直に下がる


 どうやら壊れやすいものらしい


 グレン自身も扱いが慎重だった


「AI先生、これが電圧計だったりしない?」


『その可能性を否定はできませんが、現時点で確認されたのは、入力条件の変化に応じて指針位置が変化するという事実のみです』


「でも」


 結衣は嬉しさを隠しきれず、グレンを見る


「比較はできるかもしれない」


『はい』


 数字が読めなくてもいい


 地球のボルトという単位で作られた道具でなくてもいい


 同じものを入れた時に同じ場所へ針が動くのなら、少なくとも強いか弱いかを目で比べられる


「グレン」


 結衣は発電装置を指す


 次に器具を指す


「これ、測れる?」


 グレンはすぐには動かなかった


 二つを見比べる


 何かを考え、首を傾げる


 結衣が期待して見つめていることに気づくと、少し嫌そうな顔になった


「その顔、危ないの?」


『判断できません』


 グレンは発電装置から伸びた二本の線を見た


 先ほど火花が出たことを思い出したらしい


 器具を胸元へ引く


「あ」


 結衣にも意味が分かった


「壊れるかもしれない?」


 グレンは答えない


 けれど器具を直接繋ごうとはしなかった


「そりゃそうだよね」


 結衣は少し残念そうにしながらも頷いた


「大事なもの壊したくないの、私と同じだ」


 スマートフォンへ手を添える


 グレンも器具を箱へ戻しかける


「待って」


 結衣が声を上げた


 グレンの手が止まる


「直接繋がなくていい」


 もちろん言葉では伝わらない


 結衣は紙へ向かった


「AI先生、あれが何を測ってるか調べる方法ある?」


『既知の入力を複数与え、指針の変化との相関を確認する方法が考えられます』


「つまり、いきなり私たちの発電機を繋ぐんじゃなくて」


『まずグレンが通常どのように使用している器具なのかを確認するべきです』


「それだ」


 結衣はグレンを指し、器具を指す


 そして使って見せてほしいというつもりで両手を広げた


 グレンが何度か聞き返す


 結衣も何度か身振りを変える


 やがて伝わったらしい


 グレンは器具をもう一度取り出した


 棚から、今度は小さな道具を三つ持ってくる


 どれもマナリスを入れて使うものだった


 一つ目を繋ぐ


 針が少し動く


 二つ目では、それより大きく動く


 三つ目ではさらに大きく振れた


 結衣は息を潜めるように見ていた


「AI先生」


『はい』


「これ、使える気がする」


『少なくとも、何らかの入力差を定量的あるいは段階的に比較する器具である可能性は高まりました』


「五ボルトって書いてなくても?」


『単位が異なっていても、対応関係を確立できれば換算できる可能性があります』


 結衣の目が大きくなる


「換算……」


 そこでようやく気づいた


 この世界にボルトという単位がなくても構わない


 グレンたちが別の尺度を持っているなら、そこへ地球の尺度を対応させればいい


 問題は、その一点をどう結びつけるかだった


「でも結局、五ボルトに当たる場所が分からない」


『はい』


「そこだけ足りない」


 あと少しなのに、その少しが遠い


 結衣は悔しそうに唇を結んだ


 グレンがそんな結衣を見てから、器具の針を指した


 次に工房の外を指す


「外?」


 もう一度指す


 何かの名前らしい言葉を言った


 レオルが反応した


 二人が短く話す


 やがてレオルが入口へ向かう


「え、どこ行くの?」


 結衣が慌てて追おうとすると、グレンが手で止めた


「待つ?」


 頷いたように見えた


「何しに行ったんだろ」


『会話中に、既知の地名や人名との明確な一致は確認できませんでした』


「じゃあ待つしかないか」


 結衣は作業台の横へ戻った


 グレンはその間に器具を片づけるでもなく、先ほどの三つの道具をもう一度繋ぎ、針の位置を紙へ写し始めた


「記録してる」


『はい』


「グレンも調べる気になってる?」


『行動からは、比較作業を継続していることが確認できます』


 それだけで結衣は少し嬉しくなった


 最初は断られた


 泣きそうになって困らせてしまった


 それでも今は、グレン自身が何かを確かめようとしている


 結衣は邪魔をしないよう椅子へ腰掛けた


 スマートフォンを取り出す


 画面を点ける


 時刻を確認したあと、視線が右上へ向かった


 バッテリー表示は三十七%になっていた


「……一%減った」


『はい』


「実験中、映像記録と音声解析を継続しています』


「分かってる」


 さっきなら不安になっていたかもしれない


 今も怖くないわけではない


 けれど、電気そのものは作れた


 測るために使えそうな器具まで見つかった


 ただ消費しているだけではない


「三十七%あるうちに、ここまで来れたんだもんね」


 画面を消す


「無駄にはしない」


 黒い編み込みのストラップが手の甲へ触れる


 まだ切らない


 これを使うのは、本当に安全な電気を作れるようになってからだ


 しばらくして、外から足音が聞こえた


 レオルが戻ってくる


 その手には、小さな木箱が抱えられていた


「何それ?」


 結衣が立ち上がる


 レオルは箱をグレンへ渡した


 グレンが蓋を開く


 中から出てきたのは、結衣には用途の分からない小さな器具だった


 けれどグレンはそれを見た瞬間、先ほどの針がついた測定器を引き寄せた


 二つを並べる


 接続する


 針が動いた


 一定の位置で止まる


 グレンはその位置を指で示し、結衣を見る


「……これが何?」


 グレンは木箱の器具を指す


 何かを言う


 同じ言葉をもう一度繰り返す


 AI先生が音声を解析している


『過去の記録との照合を行っています』


「分かりそう?」


『少し待ってください』


 結衣は息を潜めた


 グレンは待ちきれないのか、木箱の器具を操作する


 先端部分が淡く光った


「あ」


 結衣が目を見開く


 見覚えがある


「これ……店にあった光る道具と似てる」


『外観および発光現象に類似性があります』


 グレンはその道具と針の位置を交互に指す


 さらに指を一本立てる


「一?」


 次に同じ型らしい器具をもう一つ取り出した


 二つを何らかの形で組み合わせ、測定器へ接続する


 針が先ほどより大きく動く


 グレンが指を二本立てる


「……二」


 結衣の表情が変わった


「AI先生」


『はい』


「この人たち、もう測ってる」


『その可能性が高いと考えられます』


「マナの道具を作るために、出力を測る必要があったんだ」


 結衣は思わず笑った


 当然だった


 光を作る


 熱を作る


 物を回す


 そんな道具を作っている人たちが、強いか弱いかを全部勘だけで決めているとは限らない


 地球とは違う技術の道を進んでいても、必要になる考え方まで全て違うわけではない


「私たち、ゼロから電圧計作らなくていいかもしれない」


『ただし、この器具が電圧を測定していることはまだ確定していません』


「うん」


 結衣は今度は焦らなかった


「だから調べる」


 グレンを見る


 木箱の器具を見る


 針の位置を見る


 そして胸元のスマートフォンへ触れる


「この世界の一と、地球の五ボルトがどう繋がるか」


 結衣の目に、さっきまでとは違う光が宿る


「そこを見つければいいんだよね」


『はい、ただし対応関係を確立するためには、少なくとも一つ信頼できる基準が必要です』


「じゃあ次は、その基準探し」


 結衣が笑う


 グレンは何を言っているのか分からないまま、また新しいことを始めそうな結衣を見て、早くも少し疲れたような顔をした


 それに気づいた結衣は一瞬きょとんとしてから、申し訳なさそうに眉を下げた


「……もうちょっとだけ、付き合って?」


 意味は伝わらない


 それでもグレンは、結衣の顔と作業台を交互に見たあと、大きく息を吐いた


 そして椅子を引き寄せ、もう一度測定器の前へ座った


 その様子を見た結衣の頬が、嬉しそうに緩んだ

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!

もしよかったら感想などいただけると、とっても嬉しいです…!

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