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『ラノベでスッキリわかる!異世界ギルドのお仕事の基本5つの法則 ~新人職員アリサのギルド奮闘記~』  作者: ぽてと


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24/25

【SMARTの法則&メタ認知】伝説の受付嬢への道 4/5

夕方五時三十分。

 王都防衛戦のタイムリミットまで、残り三十分。


ギルド本部に設置された巨大な通信クリスタルから、悲鳴にも似た報告が次々と飛び込んでいた。


『東門、第二陣形崩壊! ポーションが尽きました!』

『西門、オーガの突撃で城壁の一部が損壊! これ以上はもちません!』


そして、最も激戦区となっている北門から、レオの掠れた声が響いた。


『……アリサ、聞こえるか! ゴルドのミスリル盾がひん曲がった。ミーナの魔力も完全に空っぽだ。俺の剣も刃こぼれして、もうまともに斬れねぇ! ……悪い、北門はもう限界だ!!』


その報告に、本部に残っていた職員たちの顔が絶望に染まる。

 千人の冒険者たちは、限界をとうに超えていた。いくらPDCAで戦術を最適化しても、物理的な体力と物資の枯渇はどうにもならない。


「……ここまでか」

 バルトス支部長が、苦渋の表情で撤退命令を出そうと息を吸い込んだ。


「待ってください!!」


アリサが通信クリスタルの前に身を乗り出した。

 彼女の心は、かつてないほど澄み切っていた。メタ認知の魔法によって、恐慌状態のギルドの中でただ一人、盤面全体を俯瞰して見えていたのだ。


「皆さん、聞いてください! 私たちの目標を思い出して!!」(P:結論)


アリサの凛とした声が、通信クリスタルを通じて王都の全戦場に響き渡った。


「目標は『魔物の殲滅』ではありません! 『夕方六時まで、市街地へ魔物を入れないこと』です!」

「アリサ、分かってる! だがもう倒す力が……」

「倒さなくていいんです!!」(P:結論・強調)


アリサは叫んだ。

 SMARTの法則で定めた目標。その原点に立ち返るのだ。


「あと三十分、生き残れば私たちの『勝ち』なんです! 武器が壊れたなら捨ててください! 攻撃魔法も一切不要です! 残った力をすべて使って、土くれでも瓦礫でもいい、門の前に障害物を積み上げてください! ただひたすらに『時間』を稼ぐんです!!」


倒す必要はない。遅延させればいい。

 『六時まで』という明確な終わり(Time-bound)が見えかけた土壇場で、アリサの言葉は冒険者たちの心に強烈な「希望の火」を灯した。


『……ハッ、違いない。あと三十分、逃げ回りながら瓦礫を積むだけなら……やってやるよ!』

『聞いたかお前ら! 攻撃は忘れろ! ゴミでも何でも門に積んで、六時まで死に物狂いでかくれんぼだ!!』


通信の向こう側から、再び力強い雄叫びが上がった。


北門では、刃こぼれした剣を捨てたレオが、瓦礫の山を築いて魔物の足止めに奔走していた。

 ゴルドはひん曲がった盾を地面に突き刺して即席のバリケードにし、魔力ゼロのミーナはポーションの空き瓶を投げつけてオーガの注意を逸らす。


誰も魔物を倒していない。ただ、泥臭く時間を削り取っていく。

 明確な『目標ゴール』と『期限』があるからこそ、人は最後の最後まで心を折らずに戦い抜くことができるのだ。


そして。

 長く、あまりにも長かった太陽が、西の山脈へと沈んでいく。


ゴォォォォン……!

 ゴォォォォン……!


王都の中央時計塔が、夕方六時を告げる鐘の音を響かせた。

 同時に、南の空高くに、王都騎士団が放った『青い魔導花火』が打ち上がる。


「……青い、花火」

 カイルが窓の外を見上げて、震える声で呟いた。


「市民十万人、隣国への避難完了……作戦、終了です!!」


その直後、王都の奥から地鳴りのような馬蹄の音が響き渡った。

 市民の護衛を終えた王都騎士団の精鋭一万が、ついに冒険者たちとの交代カバーに駆けつけたのだ。


『騎士団到着! これより前線の引き継ぎを行う! 冒険者諸君、よく耐え抜いてくれた! 後は我々に任せろ!!』


通信クリスタルから騎士団長の声が響いた瞬間、ギルド本部を割れんばかりの歓声が包み込んだ。

 抱き合って泣く職員たち。膝から崩れ落ちるバルトス支部長。


「……勝った。私たちの、勝ちだ」


アリサはバインダーを胸に強く抱きしめ、その場にへたり込んだ。

 全身の力が抜け、涙がポロポロと溢れて止まらない。一人の犠牲者も出さず、王都の市民を全員守り抜いたのだ。


「よくやったわ、アリサ」


シレーヌがそっとしゃがみ込み、アリサの頭を優しく撫でた。


「あの極限状態で、一度決めた目標(SMART)を見失わず、己を俯瞰(メタ認知)し、全員を正しい道へと導いた。あなたの放った言葉の魔法が、王都十万の命を救ったのよ」

「シレーヌ先輩……っ、わ、私……頑張りました……っ!」

「ええ。最高の受付嬢よ」


シレーヌの滅多に見せない、心からの優しい微笑み。

 それを見たアリサは、まるで子供のように声を上げて泣きじゃくった。


数日後。

 スタンピードの脅威が去り、市民が戻ってきて平和を取り戻した王都ギルド。


その日の朝、いつも通り一番に出勤したアリサは、自分のデスクの上に置かれた「あるもの」を見て目を丸くした。

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