【SMARTの法則&メタ認知】伝説の受付嬢への道 5/5
その日の朝、いつも通り一番に出勤したアリサは、自分のデスクの上に置かれた「あるもの」を見て目を丸くした。
それは、真新しい上質な革張りのバインダーと、美しい銀色の羽ペン。
そして、バインダーの表紙には金色の箔押しでこう刻まれていた。
『王都ギルド筆頭受付嬢 アリサ』
「ひっ、筆頭受付嬢……!?」
「おはよう、アリサ。今日からそれがあなたの新しい相棒よ」
振り返ると、シレーヌが腕を組んで微笑んでいた。
「バルトス支部長からの特命よ。あなたには今日から、ギルド全体の業務改善と、新人受付嬢の指導を任せるそうよ。もう、ただのヒヨッコじゃないわね」
「私が、先輩たちを差し置いて筆頭、ですか!? そ、そんなの無理ですよ!」
「無理じゃないわ。あなたには、私から教わったすべての魔法があるでしょう?」
シレーヌの言葉に、アリサはハッとして自分の胸に手を当てた。
そうだ。パニックになって泣いていた数週間前の自分とは違う。私には、どんな困難な仕事でも切り抜けられる「型」がある。
カランコロン、とギルドの扉が開いた。
入ってきたのは、全身ピカピカの新しい装備に身を包んだ『蒼天の流星』の三人だった。
「おっ、一番乗りだな! アリサ、おはよう!」
レオが機嫌よくカウンターに近づき、一枚の羊皮紙を差し出した。
「北の森のゴブリン討伐、完了報告書だ。結論から言うと(P)、被害ゼロで大成功だ。理由は(R)、お前の教え通り事前にポーションの数をルール化して……」
なんと、あの乱暴だったレオが、完璧な『PREP法』で報告をしてきたのだ。
ゴルドとミーナも、後ろで「どうだ、俺たち成長しただろ?」と胸を張っている。
「完璧です、レオさん! チェックインのハンコ、押しておきますね!」
アリサが銀色の羽ペンを手に取り、美しいサインと承認印を羊皮紙に刻む。その流れるような手際と自信に満ちた笑顔は、かつて彼女が憧れた『伝説の受付嬢』そのものだった。
「ふふっ。すっかり板についてきたじゃない」
シレーヌが隣で小さく笑う。
「でも、冒険者たちもどんどん成長しているわ。あなたも立ち止まっている暇はないわよ、筆頭受付嬢」
「はいっ! もちろんです!」
アリサは新しい革張りのバインダーを開き、真っ白な1ページ目に羽ペンを走らせた。
【私のためのお仕事魔導書】
第5の魔法:SMARTの法則&メタ認知(伝説への切符)
目標設定はSMARTに!
気合や根性ではなく、「具体的な数字と期限」がある目標だけが、人を正しく動かす。大きすぎる目標は小分けにして「達成可能」なサイズにすること!
究極の魔法「メタ認知」
パニックになりそうな時、怒りで我を忘れそうな時は、目を閉じて「天井から自分を見下ろす(実況する)」こと。自分を客観視できれば、心は絶対に折れない!
インクが乾くのを見つめながら、アリサはギルドの喧騒へと顔を上げた。
今日もまた、「至急」のトラブルが舞い込み、理不尽なクレームが飛んでくるかもしれない。
けれど、もう怖くはなかった。
「おはようございます! 王都ギルド『暁の翼』へようこそ!」
魔力を持たない少女が、「言葉」と「思考」の魔法で異世界を駆け上がる。
アリサの本当の冒険は、ここから始まるのだ。
(『ラノベでスッキリわかる!異世界ギルドのお仕事の基本5つの法則~新人職員アリサのギルド奮闘記~』全25話 完結)
最後までアリサたちの奮闘を見届けてくださり、本当にありがとうございました!
全5シリーズ、25話にわたる異世界お仕事サバイバル、いかがだったでしょうか。
私自身、日々の仕事の中で「もう無理だ」「なんでこんなに理不尽なんだろう」と頭を抱え、疲れ果ててしまうことがたくさんあります。きっと、毎朝電車に揺られている皆さんも、同じような重圧や悩みを抱えながら戦っているのだと思います。
でも、今回アリサが学んだように、大きくて絶望的に見える悩みも「適切な対処(スキルや思考の枠組み)」を当てはめてみるだけで、案外スッキリと小さく分解できたり、大した問題ではなくなったりするものです。
私たちにはモンスターを吹き飛ばす炎の魔法はありませんが、「PREP法」や「PDCA」といった、現実世界を生き抜くための立派な魔法を持っています。
この物語が、読んでくださった誰か一人の心にでも届き、明日からの仕事や生活をほんの少しでもラクにする「心の盾」になれたなら、作者としてこれ以上の幸せはありません。
どうかご自身の身体と心を一番大切に、明日からの現実という名のクエストも、無理せず自分のペースでクリアしていってくださいね。陰ながら、皆さんのご武運を全力で応援しております!
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!




