↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ラノベでスッキリわかる!異世界ギルドのお仕事の基本5つの法則 ~新人職員アリサのギルド奮闘記~』  作者: ぽてと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/25

【SMARTの法則&メタ認知】伝説の受付嬢への道 2/5

「私たちの本当の目標は、『一万匹の殲滅』ではありません!」


アリサは凛とした声で、円卓のリーダーたちを見回した。


「新しい目標はこうです。

 【明日の夜明け(午前六時)から夕方六時までの『十二時間』】(T:期限)、

 【王都の北・東・西の三つの門を死守し、市街地への魔物侵入数を『ゼロ』に抑え】(S:具体性/M:測定可能)、

 【市民十万人の避難を無事に完了させること】(R:関連性)!

 これなら、千人の戦力を三等分して交代制で門の防衛に当たれば、十分に耐え凌げます!(A:達成可能)」


アリサが提示した完璧な【SMARTの法則】に基づいた目標。

 それを聞いた瞬間、会議室を満たしていた「絶望の空気」が、嘘のように霧散していった。


「十二時間……たった十二時間、扉の前に立って魔物の足止めをすればいいだけなのか!」

「それなら出来る! 倒す必要がないなら、魔力消費の少ない土魔法の壁と、重盾持ちの防御陣形でひたすら時間を稼げばいいんだ!」


冒険者たちの顔に、明確な「勝機」が宿った。

 『一万匹を倒せ』と言われれば心が折れるが、『十二時間、ここから一歩も通すな』という具体的な数字と期限を与えられれば、彼らはそのための最適な戦術を自分たちで考え始めるのだ。


「すげぇ……。アリサ、お前ってやつは、本当に最高の受付嬢だな」


レオが震える声で呟き、バルトス支部長が豪快に笑い声を上げた。


「ガハハハハ!! 違いねぇ! 相手が何万いようが、俺たちは十二時間耐え抜いて、市民を逃がせば『完全勝利』だ! 各リーダー、今のSMARTな目標をパーティーに持ち帰り、徹底的に守りの陣形を組め! 決して打って出るなよ、防御と遅滞戦術にすべてを注げ!」

「「「おおおおおおっ!!」」」


ギルドが一つになった瞬間だった。

 明確な目標(ゴール)を与えられた冒険者たちは、もう迷わない。それぞれが矢やポーションの配分、交代のスケジュールを猛烈な勢いで詰め始めた。


「完璧よ、アリサ」


円卓から下がったアリサの背中を、シレーヌが優しく撫でた。


「これで第5の魔法、目標設定(SMARTの法則)もクリアね。あなたの放った言葉が、千人の戦士に『戦う意味と基準』を与えたわ」

「はいっ……! 私、やっと受付嬢らしい仕事ができました!」


アリサはバインダーを抱きしめ、安堵の涙を浮かべた。

 ただ怒鳴られるだけだったあの頃とは違う。今は、確かな知識と魔法を使って、冒険者たちの命運を導くことができる。


「さあ、ここからは私たち裏方の戦いよ」


シレーヌが表情を引き締め、王都の地図を指差した。


「前線が十二時間耐え抜くための『補給線』を私たちが死守するの。怪我人の収容、ポーションの運搬、交代要員の管理。……アリサ、あなたには南門の補給テントの指揮を任せるわ」

「私が、指揮を……!?」

「ええ。前線の状況は刻一刻と変わるわ。パニックになりそうな時こそ、あなたが教えた『四つの箱』で優先順位をつけ、『PREP法』で簡潔に報告しなさい。できるわね?」


「……はい! 任せてください!」


そして、運命の夜明け。


地鳴りのような轟音とともに、王都の北方に広がる平原を、黒い波のような魔物の大群(スタンピード)が埋め尽くした。

 空を覆うほどのワイバーンの群れ。大地を揺らすオーガやキマイラの咆哮。


「来たぞぉぉぉっ!!」


防壁の上に立つレオが、剣を天に掲げて叫んだ。


「いいかお前ら、絶対に打って出るな! アリサの作ってくれた目標を思い出せ! 俺たちの勝利条件は魔物の殲滅じゃねぇ、十二時間後の夕日を見ることだ!!」


最前線に立つ重戦士ゴルドが、スパイク付きのブーツを大地に深く食い込ませ、巨大なミスリル鋼の盾を構える。その後方では、ミーナたち魔術師部隊が、攻撃ではなく「防御の魔法壁」を何重にも展開していた。


『心理的安全性』で結ばれた彼らの間に、かつてのような恐怖や疑心暗鬼はない。

 ただ、互いの背中を信じ、明確なゴールのために全力を尽くす『最強の盾』となって、一万の群れを迎え撃つ。


ガガガァァンッッ!!!


王都防衛戦の、熾烈な十二時間が幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。