表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ラノベでスッキリわかる!異世界ギルドのお仕事の基本5つの法則 ~新人職員アリサのギルド奮闘記~』  作者: ぽてと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/25

【PDCAサイクル】失敗を成功に変える改善術 3/5

「A……アクション。つまり、『改善』だな」


レオが腕を組み、アリサの手帳を覗き込んだ。

「そうだ。反省して終わりじゃ意味がない。その反省を活かして、次はどう動くかを決めるんだな?」


「その通りです!」

 アリサは嬉しそうに頷いた。


「ただし、ここで一番やってはいけないことがあります。それは『次はもっと気をつけよう』とか『気合で頑張ろう』といった、根性論で解決しようとすることです」

「根性論じゃダメなのか?」

「はい。人間の意識なんて、戦いの最中にはすぐに飛んでしまいます。だから、確実に実行できる『具体的なルール』や『装備の変更』に落とし込むのが『A(改善)』の鉄則なんです」


アリサの言葉に、三人は顔を見合わせて唸った。


「具体的な改善、か……」

 ゴルドが自分の足元に視線を落とす。


「昨日、俺が竜の攻撃で弾き飛ばされたのは、盾の硬さが足りなかったせいだと思ってた。だから次はもっと硬くて重い『ミスリル鋼の盾』を買おうとしてたんだが……」

「待てよ、ゴルド」

 レオが顎を撫でながら口を挟んだ。

「お前が弾き飛ばされたのは、盾が壊れる『前』だ。どんなに硬い盾を持っても、お前自身の踏ん張りが利かなきゃ、結局また弾き飛ばされて陣形が崩れるぞ」


「……確かに。だとしたら、盾を硬くするより、足元を固める方が先か。工房の親父に頼んで、ブーツの底に地面に食い込む『スパイク』を打ってもらうのはどうだ? それなら金貨数枚で済むし、絶対に弾き飛ばされない」


ゴルドの提案に、アリサの目がパァッと輝いた。

「素晴らしいです! 『高価な盾を買う』という表面的な対策から、『ブーツにスパイクを打つ』という根本的な原因解決に変わりましたね!」


「なら、次は俺だ」

 レオがニヤリと笑った。

「俺の無駄な被弾を減らすためのルール。……『ゴルドが敵の攻撃を完全に受け流すまで、俺は絶対に攻撃に出ない』。前衛の指揮権ヘイトコントロールを、すべてゴルドに預ける。ゴルドが『今だ!』と叫んだ時だけ、俺は突っ込む。これなら俺が前に出過ぎて被弾することはない」


「……レオ、お前が俺の指示に従うのか?」

 ゴルドが信じられないという顔でレオを見た。かつての絶対的ワンマンリーダーだったレオからは、考えられない言葉だったからだ。


「ああ。俺より一番前で攻撃を受けているお前の方が、敵の隙を正確に読めるはずだからな。頼んだぜ、相棒」

「……任せろ!」

 ゴルドが力強く胸を叩いた。


「じゃあ、私の改善策ね」

 ミーナが杖をくるりと回して言った。

「魔力の無駄遣いをなくすための具体的なルール。……『大魔法は、一回の戦闘につき三回まで』。それ以外は、魔力消費の少ない牽制用の小魔法に徹するわ。これなら絶対に魔力切れを起こさないし、高価な魔力回復薬を買う必要もなくなる」


「完璧です……!」


アリサは感動で震える手を押さえながら、三人の『改善策』を羊皮紙に書き込んだ。


A(改善)①:ゴルドのブーツにスパイクを打ち、踏ん張りを強化する。


A(改善)②:攻撃の指示はゴルドが出し、レオはそれまで待機する。


A(改善)③:ミーナの大魔法は一日三回まで。小魔法で立ち回る。


書き上がった羊皮紙を見た三人の顔は、先ほどの「金貨五枚しかない」と絶望していた時とは見違えるほど、自信に満ちたものに変わっていた。


「すごいな。昨日の失敗が、ただの嫌な思い出じゃなくて、俺たちが強くなるための『武器』になった気がするぜ」

 レオの言葉に、アリサは深く頷いた。


「失敗は、放置すれば『見えない毒』になります。でも、PDCAのサイクルに乗せて正しく消化すれば、それはチームを強くする『最高の経験値』に変わるんです」


アリサは手帳の円(PDCA)を指でなぞり、一番最初の『P』の文字を指し示した。


「さあ、これで準備は整いました。もう一度、最初に戻りましょう。この三つの新しいルール(A)を踏まえて、来週の『フロスト・キマイラ』討伐の計画(P)を立て直すんです!」


「おう!!」

 三人の声が、ギルドの酒場に力強く響き渡った。


――そして、数日後。

 スパイク付きのブーツに履き替え、入念な計画(P)を立て直した『蒼天の流星』は、北の氷結地帯へと旅立っていった。


結果は、圧勝だった。


スパイクで大地に根を張ったゴルドは、キマイラの猛攻を一歩も退かずに受け止めた。

 彼の「今だ!」という指示に合わせて飛び出したレオは、無傷のままキマイラの死角を突き、鋭い斬撃を叩き込んだ。

 そして、小魔法で冷静に戦況をコントロールしていたミーナが、温存していた大魔法を完璧なタイミングで放ち、見事にフロスト・キマイラを討ち取ったのだ。


「消費したポーションは、なんとたったの三本! 盾の破損もなし! つまり今回の利益は……金貨百二十枚の黒字です!!」


帰還後、カウンターで精算書を見たアリサが歓声を上げると、レオたちは互いにハイタッチを交わして喜びを爆発させた。

 その光景を、少し離れた柱の陰から、シレーヌとバルトス支部長が静かに見つめていた。


「……驚いたな。あの力任せだったレオのパーティーが、あれほど統制の取れた戦い方をするようになるとは」

 支部長が腕を組みながら感心したように呟く。


「ええ。彼らは『PDCA』という車輪を手に入れました。これでもう、ただの猪武者ではありません。失敗するたびに強くなる、本物のAランクパーティーへと成長していくでしょう」

 シレーヌは、カウンターで冒険者たちと一緒に笑い合っているアリサを見つめた。


「そして、その車輪を回す役割を担ったあのヒヨッコも……どうやら次の段階フェーズに進む時が来たようね」


シレーヌの目が、これまでにないほど鋭い光を帯びていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ