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『ラノベでスッキリわかる!異世界ギルドのお仕事の基本5つの法則 ~新人職員アリサのギルド奮闘記~』  作者: ぽてと


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【PDCAサイクル】失敗を成功に変える改善術 2/5

「おっ、アリサ! ちょうどいいところに来た。悪いが追加のエールを三つ頼む!」


上機嫌で手を挙げるレオに対し、アリサはエールではなく、一枚の羊皮紙をテーブルの上にバンッと叩きつけるように置いた。


「エールの前に、こちらをご確認ください。昨日の『大地の竜』討伐にかかった、必要経費の精算書です」

「おお、ギルドからの報酬の支払いだな! 竜の素材も高く売れただろうし、これでしばらくは豪遊……って、なんだこの金額は!?」


羊皮紙を覗き込んだレオの顔から、スゥッと血の気が引いた。

 隣から覗き込んだゴルドとミーナも、目を丸くして固まっている。


「大地の竜の討伐報酬が、金貨百枚。……それに対して、粉々になったゴルドさんの盾の買い替え費用が金貨四十枚。戦闘中に消費した中級・上級ポーション十五本が金貨五十枚。ミーナさんの魔力回復薬が金貨五枚……」


アリサは無慈悲に、淡々と数字を読み上げていく。


「差し引きして、手元に残る利益は、三人合わせてたったの『金貨五枚』です。……これでは、新しい武器を買うどころか、来週の宿代すらギリギリですよね?」

「うそだろ……! あんなに死ぬ思いをして戦ったのに、俺たちの儲け、ゴブリン退治数回分と同じじゃないか……!」


頭を抱えるゴルド。レオも信じられないといった顔で精算書を何度も見直している。

 アリサはバインダーを胸に抱き直し、静かに告げた。


「これが、皆さんの昨日の『勝利の現実』です。確かに生き残ったのは素晴らしい成果です。でも、今の戦い方のまま、大地の竜より素早くて強力な『フロスト・キマイラ』に挑んだらどうなりますか?」

「そ、それは……」

「ポーションは昨日の倍以上必要になるでしょうし、盾だけでなく防具もすべて壊されるかもしれません。……つまり、キマイラに殺される前に、間違いなく『資金ショートで破産(全滅)』します」


アリサの言葉は容赦なかった。しかし、だからこそ三人の浮かれた熱気を完全に冷ます効果があった。


「破産……。確かに、このままじゃジリ貧だ」


レオがギリッと奥歯を噛み締める。以前の彼なら「ギルドの査定が安すぎるんだ!」と八つ当たりをしていただろう。だが、今の彼は違った。


「アリサ。俺たちにどうしろって言うんだ? 強い魔物を倒すには、ポーションも盾も消耗するのは当然だろ」

「だからこそ、『C(Check・評価)』が必要なんです」


アリサは手帳を開き、シレーヌから教わったPDCAの図を三人の前に見せた。


「皆さんは今、『戦う(Do)』が終わったばかりです。ここでそのまま『次の計画(Plan)』に進むのではなく、一旦立ち止まって『昨日の戦いの何が悪かったのか』を振り返る。それが『C』のチェックです」

「悪かったところ……」

「はい。例えば、どうしてポーションが十五本も必要だったんですか?」


アリサの問いに、ゴルドが申し訳なさそうに手を挙げた。


「……俺が、竜の尻尾のなぎ払いを盾で受けきれずに、何度も弾き飛ばされたからだ。そのたびにレオがカバーに入ってくれて、余計なダメージを食らった」

「俺のせいでもある。大振りな攻撃を避けきれずに被弾して、ミーナに回復魔法を無理やり使わせちまった」


レオが素直に自分の非を認める。ミーナもそれに続いた。

「私も、焦って魔力消費の激しい大魔法ばかり連発しちゃったから、途中で魔力切れを起こしたのよね……」


アリサは心の中で小さくガッツポーズをした。

 心理的安全性が機能している! 以前なら互いに責任を押し付け合っていた三人が、今は冷静に「自分たちの失敗の事実」をテーブルの上に並べているのだ。


「素晴らしいです、皆さん! そうやって自分たちの失敗を隠さずに書き出すこと。これが『C(評価・反省)』の最大の目的です。ミスを責めるのではなく、事実を集めるんです」


アリサは三人の言葉を次々と羊皮紙にメモしていく。


失敗の事実①:ゴルドが強撃を受け止めきれず、陣形が崩れた。


失敗の事実②:レオが被弾しすぎた。


失敗の事実③:ミーナが焦って魔力を無駄遣いした。


「原因がはっきりと見えてきましたね。皆さんのポーション代が膨れ上がった最大の理由は、『前衛の陣形が崩れて、無駄な被弾が増えたこと』です」

「……ぐっ。返す言葉もねぇ」


ゴルドが肩を落とす。しかし、アリサはペンをクルリと回して笑顔を見せた。


「落ち込む必要はありませんよ。原因が分かれば、あとはそれを直すだけです。PDCAの最後の魔法、『A(Action・改善)』の出番です!」


アリサの指先が、手帳に書かれた円の最後のピース、『A』の文字を力強く叩いた。

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