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『ラノベでスッキリわかる!異世界ギルドのお仕事の基本5つの法則 ~新人職員アリサのギルド奮闘記~』  作者: ぽてと


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15/25

【心理的安全性】全滅しないチーム作り 5/5

夜の王都ギルドは、歓喜の渦に包まれていた。

 西の山脈から帰還した『蒼天の流星』の三人を、大勢の冒険者や職員たちが拍手とエールで出迎えている。


三人は泥と魔物の血に塗れ、ボロボロだった。ゴルドの自慢の鉄の盾は完全に真ん中から砕け散り、ミーナのローブは焦げ、レオの鎧にも無数の傷が刻まれている。

 しかし、その顔に悲壮感は欠片もなかった。


「アリサ!!」


カウンターの奥にいたアリサを見つけると、ゴルドが満面の笑みで駆け寄ってきた。


「お前のおかげだ! 盾が砕けるって分かった瞬間、俺は迷わずレオに『盾が壊れる!』って叫べた! 前の俺たちだったら、怒られるのが怖くてギリギリまで隠して、確実に踏み潰されてたよ!」

「私の風の魔法も、レオが背中を完全に預けてくれたから最高出力で撃てたわ。……本当に、ありがとね、アリサ」


ミーナも少し照れくさそうに笑いながら、アリサの手をきゅっと握った。

 最後に、リーダーのレオが進み出て、真二つに割れたゴルドの盾をドンッとカウンターに置いた。


「この砕けた盾は、俺たちの新しい勲章だ。隠し事をせず、互いの弱さを補い合ったからこそ、俺たちは生きて帰ってこられた。……受付嬢。いや、アリサ。お前の教えが、俺たちのパーティーを救ってくれたんだ」


レオが深々と頭を下げると、周囲の冒険者たちから「おおっ」とどよめきが起きた。あのプライドの高いレオが、魔力を持たない新人受付嬢に頭を下げたのだ。


「そんな、頭を上げてください! 私は何もしてません。皆さんが勇気を出して、お互いを信じたからです!」


アリサは慌てて手を振りながらも、胸の奥が熱くなるのを感じていた。

 これだ。この瞬間のために、私はギルドで働きたかったんだ。誰かの命を守り、笑顔で帰ってきてもらうために。


「見事だったわ、アリサ」


歓声が落ち着き、冒険者たちが酒場スペースへと流れていった後。シレーヌがいつものように、音もなくアリサの背後に立っていた。

 彼女の手には、アリサのお仕事魔導書メモが握られている。


「個人のタスク管理から、チームの命を守る『心理的安全性』へ。あなたは魔法使いよりも早く、ギルドの空気を変えつつあるわ」

「シレーヌ先輩……! はい、私、すごく嬉しいです。みんなが笑って帰ってきてくれて」


アリサは受け取った手帳を開き、羽ペンを走らせた。

 熱気が冷めないうちに、今日起こった奇跡の理由を刻み込むために。


【私のためのお仕事魔導書メモ


第3の魔法:心理的安全性(全滅を防ぐ心の盾)


意味:ミスや悪い報告をしても、絶対に怒られない・攻撃されないという「チームの安心感」のこと。


鉄則1:ミスが起きた時は「誰が悪いか(個人)」ではなく、「何が悪かったか(仕組みや装備)」を責める!


鉄則2:悪い報告を受けた時の第一声は、絶対に怒らず「報告してくれてありがとう」から始めること。


※注意:仲良しこよしでミスを許し合う甘い関係ではない。命を守るために「最短で真実を言い合える」関係を作ること!


「書けました! これで、もうどんなパーティーが来ても、ギスギスした雰囲気なんて怖くありません!」


アリサが手帳を誇らしげに掲げると、シレーヌはフッと息を吐いた。


「有頂天になるのはまだ早いわよ、アリサ。彼らは『失敗を恐れずに挑戦できる状態』になっただけ。本当の戦いは、ここからよ」

「えっ? ここから、ですか?」

「ええ。大地の竜には勝てたけれど、ゴルドの盾は壊れ、ミーナの魔力は底を尽きかけた。このままでは、次はより強い魔物に負ける。彼らは今回の『ギリギリの勝利』を分析し、次の戦いに向けて成長しなくてはならないわ」


シレーヌは、砕けた盾の破片を指差した。


「失敗や経験をただの思い出で終わらせず、次なる力へと変換する。……第4の魔法『成長の車輪』を回す準備はできているかしら?」

「成長の……車輪」


アリサはゴクリと唾を飲み込んだ。

 全滅の危機を乗り越えたギルドには、すでに次の課題が待ち受けている。けれど、もう迷いはない。新しい魔法を覚えるたびに、自分が確かに強くなっているのを感じるからだ。


「はい! 次の魔法も、絶対にマスターしてみせます!」


新人受付嬢の眼差しは、初めてギルドの扉を叩いた日よりも、ずっと逞しく輝いていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第3の魔法「心理的安全性」、いかがでしたでしょうか。


仕事でミスをしてしまった時、リーダーや上司に怒られるのが怖くて、つい報告を遅らせたり、隠したくなったりする……そんな経験、誰にでもあると思います。

しかし、ミスを責めない「心の盾」がある環境さえ作れれば、トラブルは小さなうちに共有され、チーム全体で乗り越えることができます。この物語が、皆さんの職場の空気を少しでも良くするヒントになれば嬉しいです。


次回はいよいよ第4シリーズ!

失敗やギリギリの成功をただの経験で終わらせないための魔法、「PDCAサイクル(改善術)」に突入します。アリサのさらなる成長を、どうぞお楽しみに!

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