憑依代行黄泉代 死者憑き高坂編 第十二幕
「習志野ぉぉお!!!!」
不動の叫びが会場に響く。
巨漢の拳が、習志野の顔面へ――。
「起きろ、荒法師!!!!」
「!?」
習志野が、
倒れていた荒法師鉄山の腕を持ち上げる。
そして――
掌を巨漢へ。
「……?」
巨漢が眉をひそめる。
習志野が叫ぶ。
「やれぇ!! 荒法師!!!!」
「どすけぇぇぇ!!」
カチャッ。
荒法師の掌が開く。
――シュオオオ!!!!
白い霧が噴き出した。
「!?」
巨漢の視界が一瞬、真っ白になる。
「今だ!!」
習志野が走る。
リングの角へ。
ロープを掴み――
跳ぶ。
「なっ――!?」
空中へ。
一回転。
二回転。
身体を横へ捻りながら――
「うおおおおお!!」
巨漢の首へ。
――飛び回し後ろ蹴り!!
「ぐおっ!!」
巨漢の身体が吹っ飛ぶ。
リングに叩きつけられる。
「やったのか?!」
場外から不動の声。
だが。
巨漢は――
立ち上がった。
「嘘だろ……」
習志野が息を呑む。
巨漢が荒法師を見る。
「同じ手を食らうか!!」
習志野が持ち上げた荒法師の左手を――
巨漢が右手で掴む。
「なっ……!」
荒法師の掌が塞がれる。
「これで、あの技は使えまい!」
「くっ……!」
巨漢の左拳が振り上がる。
習志野の顔面へ。
「死ねぇぇぇ!!」
拳が――
振り下ろされる。
その瞬間。
巨漢の視界が――
真っ赤に染まった。
「……!?」
「なんだ……!?」
巨漢が目を押さえる。
「目が……!」
習志野の口元から血が滴っている。
習志野は――
自分の血を口に含んでいた。
「……」
そして。
巨漢へ向かって――
もう一度、吹き出す。
「ブッ!!」
「うわぁぁぁ!!」
赤い霧が巨漢の顔面を覆う。
「血霧だ!!」
不動が叫ぶ。
「地獄の――」
「血霧……!」
巨漢が目を覆う。
「くっ……見えん!!」
習志野が構える。
拳を握る。
右腕を――
大きく引く。
「そして――」
習志野が呟く。
「これが……」
習志野の身体が沈む。
「……地獄の――」
踏み込む。
「ナックルアローだぁぁぁ!!」
――ドゴォォォン!!
拳が巨漢の顔面を撃ち抜く。
「ぐ――」
巨漢の巨体が浮いた。
その口から――
歯が宙を舞う。
「……!」
巨漢がゆっくりと後ろへ倒れていく。
――ドォン!!
リングが揺れた。
「……」
動かない。
習志野は荒い息を吐く。
「……終わったか」
巨漢に近づく。
だが、もう起き上がる気配はない。
習志野は背を向けた。
リングから降りようとする。
そして――
ふと振り返った。
倒れている巨漢を見る。
「……これが」
一瞬だけ笑う。
「地獄の習志野だ。覚えておけ・・・」
少し間を置く。
「……って言っても」
「もう聞こえねぇか」
習志野はリングの外を見る。
そこには――
倒れた韓国マフィア。
そして。
ボロボロになりながらも立っている旗井組の男たち。
「習志野さん……」
「……」
「やったんすね」
習志野は笑った。
「ああ」
その瞬間。
「……」
身体がぐらりと揺れる。
「習志野さん?」
膝が落ちる。
「……あ」
――バタッ。
「習志野さん!!」
「おい!!」
旗井組の男たちが駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「習志野!!」
リングの外から――
「習志野ぉぉおおお!!」
不動が叫ぶ。
会場中に、その声が響き渡った。
習志野は――
ゆっくり目を閉じた。
その顔は。
どこか満足そうだった。




