憑依代行黄泉代 死者憑き高坂編 第五幕
荒法師鉄山の掌は――鋼鉄だった。
「どすけぇ!! どすけぇ!!」
――ブォンッ!!
「!?」
鋼鉄の張り手が、高坂の顔面を掠める。
高坂は咄嗟に身体を反らした。
――ブォンッ!
風圧が頬を撫でる。
「……!」
次。
右。
左。
また右。
「どすけぇ!!」
鉄山の張り手が次々と襲いかかる。
高坂は紙一重で避け続ける。
「……こんなの」
一歩後ろへ下がる。
「当たったら、ひとたまりもねぇ……!」
高坂は一旦、距離を取った。
「どうした?」
「……」
「お得意の張り手はどうした?」
高坂はニヤリと笑う。
「……」
鉄山が右手を上げる。
そして。
高坂へ手のひらを向けた。
「……?」
高坂の眉が動く。
「なんだ、その構え……」
次の瞬間。
――シュオオオっ!!
「!?」
鉄山の掌から――
**紫色の霧が噴き出した。**
「うわっ!」
高坂の視界が一瞬で黒く染まる。
「くっ……!」
何も見えない。
前も。
横も。
鉄山の姿すら――
「……どこだ!」
その瞬間。
「――どすけぇ!!」
声だけが聞こえた。
「……!」
――バァンッ!!
「ぐはっ!!」
鋼鉄の掌が――
高坂の顔面を真正面から捉えた。
身体が大きく吹き飛ぶ。
「どすけぇ!!!!」
観客が一斉に立ち上がる。
リングの上を転がる高坂。
「……っ!」
鼻から血が流れる。
高坂はゆっくりと身体を起こした。
「……」
鉄山が腕を組む。
「どうだ」
ニヤリ。
「これが――」
鋼鉄の掌を見せつける。
「荒法師の張り手よぉ!!」
「…………」
高坂は血を拭った。
そして。
口元を吊り上げる。
「……なるほどな」
「?」
「霧吹きで目を潰してから張り手か」
高坂が立ち上がる。
「随分と――」
拳を握る。
「卑怯な相撲レスラーだな」
「……」
鉄山の顔が引きつった。
「……てめぇ」
拳を握る。
「今、相撲レスラーって言ったか?」
「言った」
「俺は――」
鉄山が腰を落とす。
地面に拳をつける。
「プロレスラーだぁぁぁぁ!!」
会場が爆発する。
「どすけぇぇぇぇぇ!!」
再び鉄山が突進した。




